わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

ゆきづき花

74. 橘部長が告白する_2


 私の心配をよそに、宮燈さんは事前に調べていたのか、迷うことなく紹介されたお店を目指して歩いていた。夕食時だったので行列が出来ていたけれど、予約していたからすぐに案内してもらえた。個室は上階にあるから、エレベーターで移動する。狭いエレベーターだったので、距離が近くてまたドキドキした。初めて会った時を思い出して、私はやっぱりこの人が好きなんだなーと思っていた。


 個室にはお馴染みの回転テーブルがあり、窓際には壺や置物が並べてあって、見ているだけでも楽しい。
 コースの最後は通常は炒飯チャーハンだけど、お願いしたら韮菜拌麺ニラパンメンに変更できるそうなので「もし可能であれば」と聞いてみたら、快く引き受けてくださった。多分、杉岡さんからも事前に連絡してあったんだと思う。楽しみでニコニコしていると、宮燈さんが少し笑う。綺麗だ。

 本格的な中華料理なんか食べたことがない私は、前菜から「美味しい!」を連発していた。小食だから、コース料理を食べきれるかなと心配だったけど、給仕されるとあっという間に食べていたから向かいに座っている宮燈さんが面白そうに笑う。え、好き……。

「角煮をはさむ、このお饅頭も美味しいです」

 どうやったら、こんなに美味しく出来るんだろう。プロって凄いなあ~そういえば宮燈さんもお料理が上手だから、同居したら教えてもらおうかな~と思っていた。
 韮菜拌麺はチャンポン麺を炒めてあるからこってりしてるように見えるけれど、味付けは濃い過ぎず、花韮の香りが丁度いい。叉焼チャーシューが美味しくて、コースの最後だったのに完食してしまった。杏仁豆腐は平らげたけど、特大サイズのゴマ団子はさすがに食べきれなかったので、持ち帰り用に包んでもらった。
 調子に乗って、ビールの次に紹興酒も飲んでいたから、食後の茉莉花茶を頂くころには、頭がふわふわしていた。

「幸せです……。でも無職になると困りますから、明日には東京に帰りましょうね。私も京都に帰ります。卒論提出後のゼミをサボったから教授にめちゃくちゃ怒られるでしょうけど!」
「そうか、私のせいで授業を……悪かった」
「もういいんです。怒られたらそれですみます」

 アハハと笑うと、宮燈さんが微笑み返してくれる。え、好き。
 幸せ過ぎて怖くなってきた……。私は明日しぬかもしれない。

「お食事のあとはどうしますか?媽祖廟も行ってみたいけど、ちょっと距離がありそうです」
「ああ、杉岡さんから、中華街だけじゃなくて中島川沿いにもランタンがあるから、そちらに行けと言われた」
「眼鏡橋のある中島川ですか?」
「仕事すっぽかしてまで追いかけた女と見て来い、と。よくわからないが杉岡さんの言う事には従おうと思う」
「賛成です。私も杉岡さんを信頼してます」

 お土産買って帰りましょうね、と言ったら「匠寛堂のカステラをリクエストされている」とのことだった。抜け目ない。



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