わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

ゆきづき花

73. 橘部長が告白する_1


 フロントでチェックインしていると、宮燈さんの社用の携帯に杉岡さんから着信があったので、宮燈さんに言われて私が電話に出た。

『君が出た……ということは元の鞘に収まったんだな?』
「ご心配をおかけしました」

 私が笑っていると、電話の向こうからまた五秒くらいの大きなため息が聞こえた。電話をかわった後、しばらく宮燈さんは杉岡さんと月曜日の打ち合わせをしているみたいだったから、私はロビーのソファに座ってそれを眺めていた。今、お仕事モードになってるから三割増しでカッコイイなあと思いながら。

「杉岡さん、ありがとうございます。それは是非、お願いします」

 表情が緩んで、宮燈さんが丁寧語で話している。プライベートモードになってる?と思って「どうしたんですか?」と聞いたけど、宮燈さんは目を伏せるだけで答えてくれなかった。


 タクシーで移動して、私がワンピースを買った商業施設で靴を選ぶ。宮燈さんにどれがいいかアドバイスを貰おうとしたけれど、全部「可愛い」というから全く参考にならなかった。少し迷ってショートブーツにした。これで足首寒くない!

 宮燈さんにお願いして、そこからの移動は路面電車を使った。知らないはずなのに、何故か電動機《モーター》の音が懐かしく感じて好き。混んでいたから窓際の手すりに掴まると、宮燈さんが私を守るように立ってくれてえ、なにこれ美味しい……と思った私は、新地中華街停留場に着くまでの間ずっと、動悸息切れに悩まされた。


 ランタンフェスティバルのメイン会場である湊公園には、大小様々な中国提灯ランタンが飾られていて私が持っていた「儚い光のランタン」というイメージを派手に壊してくれた。とても賑やかで華やか。屋台もたくさんあって、つい肉まんを買ってしまった。

「こ、これ百円でいいんですか? めちゃくちゃ美味しい~!」

 私がはしゃいでいたら、宮燈さんが少しだけ笑っている。え、好き。
 横断帯を渡った先の中華街にもランタンがたくさん飾られていてとても綺麗だった。
 なんとなく視線を感じるなあと思ったら、通り過ぎる人達が宮燈さんを見ている。そういえば私の夫は美貌の持ち主だった。双葉の支社は長崎にはないけれど、お祭りだから誰に会うか分からない。早めにお店に入った方がいいかなと思って宮燈さんの腕を引いた。

「お店はどこがいいんでしょうか。たくさんあるから迷いますね」
「杉岡さんがもう予約してくれている」
「え?! そうなんですか? 仕事早っ! 秘書の鑑みたいな人ですねえ」

 長崎出身の同僚から、京華園の韮菜拌麺ニラパンメンは絶対食べろとすすめられて、杉岡さんは実際に家族旅行で食べたらしい。使ってるのは花韮はなにらだから、香りは強くはないと言われて、よくわからなかったけれど「食べたいです!」と笑ったら、やっぱり宮燈さんが少し笑う。
 え? 何? どうしたの? 私はうれしいけど、大盤振る舞い過ぎない? やっぱり夢オチとかいやだよ?


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