わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
68. 橘部長と分かち合いたいのです_2
寒いけれど、私は宮燈さんの隣に立っていた。通りすがりにハートの石を見つけて喜んでる家族を見て「ああ、あんなにたくさんの人たちが、パートナーと仲良くしていきたいって願ってるんだなあ」とぼんやり思っていた。
「ねえ、宮燈さん。どうして宮燈さんの実のお父様とお母様は別れてしまったんですか? 知ってますか?」
私がそう言ったら、宮燈さんの手が私の髪に触れた。
「母は、父親と別れたあとで私を産んだ。婚外子として」
「婚外子……? お母様は未婚だったのですか?!」
宮燈さんが頷いて私が真っ先に思ったのは、相手の男はグーでぶん殴るべきだ、という事だった。
「父親は手切れ金だけ渡して、私を認知しなかったそうだ。その手切れ金も祖父母が使い込んだらしいが、そんな事、父親にはどうでもよかったのだろう。三十年以上お互い、なんの干渉もしてこなかった。それなのに、自分に死期が近づいたら……連絡してきた。そのせいで面倒な事になった」
その「グーで殴るべき男」は、死ぬ前に自分の子どもに会いたくなったのかな。分からない。二人で黙っていると、宮燈さんの私用の携帯にメッセージが届いた。それを見て、宮燈さんがため息をついた。
「場所を変えよう。契約上、私は話せないが、説明出来る人間が長崎に着いた」
タクシーで稲佐山の中腹にあるホテルへ向かい、フロントで宮燈さんが何か話をしている。マネージャーの名札を付けた人が出てきて、案内されたのはスイートルームだった。
うーん、ゴージャスな広いスイートルームに物凄いイケメンがいる。
宮燈さんも美人だけど、負けないくらいの美形。
あ、でも、世界で一番かっこいいのは間違いなく私の夫だけどね!
見られることに慣れている芸能人ってオーラ凄いっていうけど、ほんとに凄いねえ。語彙力が無くなるわ。
「はじめまして。異母弟の山崎森羅です。異母兄は、僕の母と秘密保持契約を結んでますから、僕が代わりに説明します」
イケメンの自己紹介に、私はしばらく声も出せずに突っ立っていて、(……お母さん! お母さんが宮燈さんを見て、森羅くんに似てるって言ってたの、当たってたよ! 兄弟だったよ! この事をお母さんに言ったら心臓とまっちゃうかもねー!!)とミーハーな事を考えていた。
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