わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
幕間 桜さんの彼氏_2
桜さんは本当に綺麗になった。心配になるくらい細すぎた体も標準体型になって、お肌も髪も艶々。連勤しすぎて疲れてギスギスしてる時もあったけど、今は余裕があるのか空気が柔らかい。私とは大学も違って、頭の出来も違うはずだけど、恋愛に関しては同じなんだなあと、前より親近感が湧いて、桜さんがバイトを辞めてしまうのは私も寂しかった。
休憩が終わるのか、塩見さんがようやく椅子を戻して立ち上がって言った。
「桜ちゃんの処女は俺が貰うはずやったのに」
「げ、きっしょ!」
思わず本音が口から出てしまったから、桜さんが爆笑していた。塩見さんは不機嫌そうに桜さんに質問していた。
「桜ちゃんの王子様はどんな奴なん?俺よりイケとる奴おらへんやろ」
「塩見さんより真面目でかっこいいです」
「ハッキリ言いよったなぁ。妬けてまうわぁ……」
塩見さんは泣きそうな顔をしている。冗談ぽく言ってますけど、思い切り失恋しましたね。可哀想に。
その日のバイトが終わって、昼シフトの数人で雑談しながら、この後飲みに行かないかと話していた。桜さんは用事があるからと断っていた。
「あらデートやな」と塩見さんが呟いて、私に向かって言った。
「尾行しようで」
裏口から出て、解散して、飲みに行くメンバーは四条河原町の方へと歩いていった。桜さんは早足で三条大橋を渡って、道路の端に停車していた黒塗りの高級車へ近づいていく。
「追突したらあかんやつや……」と塩見さんが呟いていたが、私も同じ事を思っていた。
私達は大きな木の陰に身を潜めて見ていた。運転手さんが後部座席のドアを開ける。お辞儀して笑顔で乗り込む桜さん。待ちきれないかのように腕を伸ばして、桜さんの身体を抱き寄せている男の人。顔は見えなかったけど、身なりから結構年上っぽかった。
右折して、川端通りを北へと去って行った車を見送って、私と塩見さんはしばらく呆然と立っていた。
「あれは、あかんやつや。敵わんわ。見た?桜ちゃんのうれしそな顔……」
「塩見さんって、ほんまに桜さんの事が好きやったんやね」
目の当たりにしてショックを受けている塩見さんには、さすがに同情した。
「あーあ、早く付き合うてくれって言うとけば俺のものやったんに」
「いや、時期の問題ちゃいますよ。まず、朝から晩までパチンコ行くのやめて真面目に働きましょうよ」
「うん、そら無理」
ドクズだな。つける薬が見当たらない。
「飲み会に合流しましょか」
「せやな……」
私は、桜さんが塩見さんの事、「ちょっといいな」って想ってたことを知っている。友達以上恋人未満ってやつだ。塩見さんは、外見はチャラいし休憩中はダラダラしてるけど、厨房では真面目だし、仕事もテキパキしている。違う未来があったかもね、とは思うけれど、それはもう私の心の中に封印しておくことにした。
「恋愛」の人気作品
書籍化作品
-
『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!-
17
-
冷たい部長の甘い素顔【コミカライズ連載中】-
971
-
モブ令嬢の旦那様は主人公のライバルにもなれない当て馬だった件-
311
-
没落貴族の俺がハズレ(?)スキル『超器用貧乏』で大賢者と呼ばれるまで-
267
-
【コミカライズ】あなたの寵妃でかまわない ~騎士令嬢は吸血公爵に溺愛される~-
33
-
年下御曹司は白衣の花嫁と極夜の息子を今度こそ! 手放さない-
150
-
【コミカライズ】寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~-
516
-
【書籍化】勤め先は社内恋愛がご法度ですが、再会した彼(上司)とまったり古民家ぐらしを始めます。-
317
-
異世界転移者のマイペース攻略記-
361

コメント
コメントを書く