わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
26. 橘部長がご挨拶する_2
岡山駅直結のホテルにチェックインして、私はベッドに倒れこんだ。昼に京都駅で待ち合わせて、構内で昼食をとり、二人で新幹線に乗って岡山まで帰った。グリーン車も初体験だったけど、ホテルの最上階エグゼクティブスイートに泊まるなんて事も、生まれて初めてだ。ベッドが気持ちいい~!
「ふぁーー!自分ちなのに緊張したー!」
疲れていたから、ふかふかのベッドの上にいると眠ってしまいそう。そう思っていると、橘部長がジャケットとベストを脱ぎ、ネクタイを寛げてベッドの私を抱き締めた。
「わわ! 何ですか、急に」
「抱いていいか」
「え、だめです! お風呂入りましょうよ。夕飯もまだなのに」
「桜を抱きたい」
首にキスしながら耳元で言うから、背筋がゾクゾクした。そのまま流されそうだったけど、橘部長の体を腕で押し返して言った。
「いやです。お風呂入りましょう」
「一緒に?」
「いいいい一緒に?! その発想はなかったです。……え、夫婦って一緒に入るものなんですか?」
橘部長は返事もせず、私を抱えた。
「や、やだ! おろしてください! 一緒にとか恥ずかしいです! それに、絶対えっちなことするでしょ?!」
橘部長はやっぱり何も言わなかったが、楽しそうな気がする。浴室まで連れていかれて、綺麗な洗面台の前におろされた。鏡の中で改めて自分を見ると、頬もふっくらしたなと思う。
いま着ているのは、これまたなっちゃんに教えてもらった古着屋さんで買った、いわゆるキレイめワンピース。
「親に結婚の挨拶へ行く時はワンピース!」とのネット記事を鵜呑みにして買った物。実際、清楚に見えるから不思議だ。
後ろから橘部長に抱きしめられて、それを鏡で見ているのが何だか恥ずかしい。橘部長は私の髪にキスしながら、ゆっくり服を脱がせてくる。下着だけになって恥ずかしくて、鏡から体ごと背けて、後ろに立っていた橘部長に抱きついた。
「もー恥ずかしいからやめてください」
そう言ったけど、やめてくれなかった。上を向かされてキスされながら、背中のホックを外された。そういえば、下着は新調してなかったな、恥ずかしい!今度は可愛い下着を買いに行こうと考えて、今まで自分がどれだけ無頓着だったか思い知らされた。
「桜さん、恋は突然やってくる。そやさかい、準備してへんとあかんよ」とは、なっちゃんの有難いお言葉。
本当に突然だった。でも結婚まで突然だと思わないじゃん?!
橘部長が唇を離して、私を見下ろしている。至近距離で見るのは初めてじゃないのに、美人過ぎていまだにドキドキする。一生ドキドキするのかな。慣れる日は来ないんじゃないかな。
「宮燈さんも脱いでよ。私ばっかり恥ずかしい」
見られてるのが恥ずかしいから、えいえいとボタンをはずしてシャツを脱がせた。アンダーシャツをめくっても、身長差があって届かないから、精一杯背伸びをした。
「……お風呂、入りましょう?」
結局、私から誘うみたいになってしまったのが悔しかった。
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