わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)
17. 橘部長に甘えることにした_2
橘部長が大楠の下のベンチに座っていた。全力で走ってる私を見つけて、橘部長が立ち上がる。
ああ、綺麗だな。こんな綺麗な人、今まで見たことない。無表情だけど、以前のように冷たくて生気がないとは思わなかった。だって私は、橘部長の身体が温かいの知ってるもの。
目の前について、深呼吸してから私は橘部長を見上げて聞いた。
「どうして……ここにいるんですか?」
「君に会いに来た」
私は心の中で「ラ・ヴィアン・ローズ!」と叫んでいた。
なんだかもう、この世の全ては薔薇色なんじゃないかって気がしてきた。会いたいと思っていた人が、私に会いに来てくれた。声を聞けただけでうれしかったのに、目の前に本人がいる。
「会いたかったです。うれしい!」
楠は大きく枝を広げているから、今いる場所は木陰になっていて涼しい。私が笑って見上げると、無表情で私を見下ろしている橘部長が、私の頬に触れた。
「この前より、顔色が良い」
「ありがとうございます。お陰様で朝ごはんも学食で食べてるので元気ですよ!」
頬に触れていた手で、顎を持ち上げられた。
あ、顎クイ? 顎クイされてない??? 
他人から見たら、距離感がおかしいだろう。東京駅でもそうだったけど、この人全然自重しないな!
ここはキャンパスだから、誰が見てるかわからない。一歩下がって橘部長の手から逃げ出した。行き場を失ったのか、橘部長はその指で私のおでこを弾いた。小学生か!
「痛ったあ! ……あ!最終面接の前も、さては髪に触ろうとしましたね? 撫でたらセクハラだからぽんぽん叩きましたね? 叩いてもハラスメントだと思いますけど!!」
そう抗議したが無視された。無表情だが、私には少し照れてるようにも見えるから図星だったんだろう。
「お仕事はどうされたんですか?」
「昨日から出張で大阪に。さっき終わったから新幹線で来た」
「出張だったんですね。明日と明後日は?」
「休みだ」
そう言って、橘部長は無表情で黙って私を見ている。土日休みってことはお泊まりデートが出来るってことですか???
そう思ったら、急に恥ずかしくなった。
「じゃあ、一緒に……」
「一緒にいてもいいか?」
もちろんです!と返事をしようとした時、手に持っていたスマホが振動した。手元に視線を落とすと、画面には「塩見」の文字。
あああああ! 塩見さんがフィーバーしやがった!! 邪魔しないでよーー!!!
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