わかりました、結婚しましょう!(原題:橘部長を観察したい!)

ゆきづき花

10. 橘部長と約束する_2


 シーツには鮮血と愛液の混ざった薄い赤の染みがあったから、私がお風呂場で手洗いした。洗濯機を使わせてもらってる間にシャワーを浴びる。 
 服を着て、髪を乾かして、リビングに戻ると、橘部長が朝食を準備してくれていた。
 
 美人妻!美人妻がいる!!
 卵焼き、焼き魚、お味噌汁……とてもいい匂いがしていた。

「わー! ありがとうございます! いつも朝ごはん食べないからうれしいです!」
「朝食はきちんと摂った方がいい」

「あー……食べない生活に慣れてしまって」
「その原因は経済的なものか?」

「隠しても仕方ないんで言いますが、そうです。基本的にバイト先のまかないか、学食でのランチしか食べないですね!」
「大学には学食を安く利用出来る制度が無かったか?」

「ミールシステムですね~! ありますけど……」

 各大学で名称は違うが、学生の食生活のサポートのために、プリペイドで安く学食を利用できるシステムがある。大学生協で手続きすれば、学生証や学食定期券ミールカードでご飯が食べられる。ただ、一番金額の少ないライトプランの約10万円さえ払えないのが我が家の実情。

「まとまったお金が準備できないんです。かつかつの自転車操業なので。ゼミの先輩とか先生が差し入れしてくれるから、常にお腹ぺこぺこってわけじゃないですから大丈夫ですよ!」

 あははと笑ったが、橘部長は無表情だった。



 白いご飯をおかわりさせてもらって、お腹も充たされて幸せ過ぎた。ため息をつきながら私は言った。

「はあ……お味噌汁も卵焼きも、お出汁が上品で美味しかったです……。最高……。橘部長、お料理上手ですねえ……」
「生まれ育ったのが料亭だったから、仕込まれた」
「へえええ!? そうなんですか! いいなあ! 料亭のまかないとか美味しいんでしょうね~!」

 お寿司屋さんのまかないも、かなり美味しいけど!
 私がまた笑ってるのを見ている橘部長は、無表情だったけど、何かを思考してるような顔だなと感じた。


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