家庭訪問は恋のはじまり【完】
第84話 大変
それから、新学期の準備を進め、入学式を迎えた。
1年前の大変だった入学式を思い返しながら、新入生を眺める。
私は2年3組を担任する。
ADHD2名、アスペルガー1名、LD1名の合計4人の発達障害児を含む29名のクラス。
ADHD2名とアスペって、ものすごくトラブルが多そうな予感しかしないんだけど……
どう考えても、これ、学年主任クラスでしょ!?
なんで、私?
疑問に思いながらも、1学期は始まり、バタバタと目の前の問題に対処してるだけで、毎日が過ぎていく。
1年前の嘉人くんのように毎日トラブルを起こす翔くんは、ADHDの1人。
普段はそれ程他の子と変わりないのに、突然切れて暴れる和也くんは、アスペ。
4月下旬、この2人が鬼ごっこが原因で大げんかを始めた。
私1人では抑えきれなくて、職員室から駆けつけた3年生の学年主任にも手伝ってもらい、なんとかケガなく収める事が出来た。
すると、放課後、お礼をしに3年生の学年主任さんの所へ行った時に、こっそり教えてくれた。
2年の学年主任の松井先生は、33歳の、主任としては比較的若い女の先生で、とてもいい人だけど、人が良すぎて、やんちゃ坊主の対応があまり得意ではないらしい。
まぁ、音楽の先生だし、おっとり育ってきた雰囲気が全身から出てるよね。
そのため、全校で見ても比較的おとなしい2年生に回された上、発達障害児の対応が得意な中堅の若い教諭が来るという傍迷惑な前評判で私が異動してきたために、本来、学年主任に回すはずのクラスをこれ幸いと校長が私に回したらしい。
そんないい加減な情報提供したのは、きっと前の学校の校長先生に決まってる。
もう、余計な事を言わないでよ〜
だけど、どんなに大変でも、学校の事を瀬崎さんに愚痴る訳にはいかないし、採用試験の準備もあるし、結婚式の準備もあるし、もうパニックだよ。
私は、週末、瀬崎さんの家に行く。
一緒に招待状を作り、席次を決め、引き出物を決め、準備を進めていく。
だけど、当然のごとく、この家にも最強の発達障害児がいて…
楽しそうに混ざって、覗き込んで、邪魔をし続けるから、全然進まない。
進まないから、当然、勉強する時間もない。
採用試験は、現職の特例で、面接だけとはいえ、面接の傾向と対策は押さえておきたい。
そんな事を思いながら、嘉人くんの相手をしていると、瀬崎さんが嘉人くんに声を掛けた。
「嘉人、最近、おばあちゃんと出かけてないだろ。
昼から、映画にでも行ってきたらどうだ?」
「ええ!?  パパたちは?」
嘉人くんの顔に不満の色が滲む。
「パパたちは、やらなきゃいけない事があるから、留守番してるよ。
おばあちゃんと、映画見て、美味しいものを 食べておいで」
嘉人くんは、「美味しいもの」に、反応する。
「お寿司でもいいの?」
「いいよ。
じゃあ、おばあちゃんに電話しよう」
瀬崎さんはそう言うと、電話を掛け始める。
しばらくして、お義母さんとお義父さんが車で迎えにきて、嘉人くんを連れて出掛けた。
途端に家中が静けさに包まれる。
「夕凪、大丈夫か?」
瀬崎さんが私の横に座り、腰を抱き寄せる。
「えっ?  何が?」
「なんか、煮詰まってただろ」
えっ?
 隠してるつもりだったのに、瀬崎さんは気づいてたの?
「うん、大丈夫」
私はそう答えて、笑顔を作る。
「夕凪、無理するな。
仕事の愚痴も、吐き出せるものは吐き出せばいいから。
異動したばかりだし、大変な事も多いだろ」
そうは言っても、学校の内情は話せない。
「うん、すっごく大変。
なんで私が!?って思う事もたくさんあって……
でも、大丈夫。好きでやってる仕事だし、これを乗り越えられたら、きっと自信も付くし、東京でも頑張れる気がするから」
1年前の大変だった入学式を思い返しながら、新入生を眺める。
私は2年3組を担任する。
ADHD2名、アスペルガー1名、LD1名の合計4人の発達障害児を含む29名のクラス。
ADHD2名とアスペって、ものすごくトラブルが多そうな予感しかしないんだけど……
どう考えても、これ、学年主任クラスでしょ!?
なんで、私?
疑問に思いながらも、1学期は始まり、バタバタと目の前の問題に対処してるだけで、毎日が過ぎていく。
1年前の嘉人くんのように毎日トラブルを起こす翔くんは、ADHDの1人。
普段はそれ程他の子と変わりないのに、突然切れて暴れる和也くんは、アスペ。
4月下旬、この2人が鬼ごっこが原因で大げんかを始めた。
私1人では抑えきれなくて、職員室から駆けつけた3年生の学年主任にも手伝ってもらい、なんとかケガなく収める事が出来た。
すると、放課後、お礼をしに3年生の学年主任さんの所へ行った時に、こっそり教えてくれた。
2年の学年主任の松井先生は、33歳の、主任としては比較的若い女の先生で、とてもいい人だけど、人が良すぎて、やんちゃ坊主の対応があまり得意ではないらしい。
まぁ、音楽の先生だし、おっとり育ってきた雰囲気が全身から出てるよね。
そのため、全校で見ても比較的おとなしい2年生に回された上、発達障害児の対応が得意な中堅の若い教諭が来るという傍迷惑な前評判で私が異動してきたために、本来、学年主任に回すはずのクラスをこれ幸いと校長が私に回したらしい。
そんないい加減な情報提供したのは、きっと前の学校の校長先生に決まってる。
もう、余計な事を言わないでよ〜
だけど、どんなに大変でも、学校の事を瀬崎さんに愚痴る訳にはいかないし、採用試験の準備もあるし、結婚式の準備もあるし、もうパニックだよ。
私は、週末、瀬崎さんの家に行く。
一緒に招待状を作り、席次を決め、引き出物を決め、準備を進めていく。
だけど、当然のごとく、この家にも最強の発達障害児がいて…
楽しそうに混ざって、覗き込んで、邪魔をし続けるから、全然進まない。
進まないから、当然、勉強する時間もない。
採用試験は、現職の特例で、面接だけとはいえ、面接の傾向と対策は押さえておきたい。
そんな事を思いながら、嘉人くんの相手をしていると、瀬崎さんが嘉人くんに声を掛けた。
「嘉人、最近、おばあちゃんと出かけてないだろ。
昼から、映画にでも行ってきたらどうだ?」
「ええ!?  パパたちは?」
嘉人くんの顔に不満の色が滲む。
「パパたちは、やらなきゃいけない事があるから、留守番してるよ。
おばあちゃんと、映画見て、美味しいものを 食べておいで」
嘉人くんは、「美味しいもの」に、反応する。
「お寿司でもいいの?」
「いいよ。
じゃあ、おばあちゃんに電話しよう」
瀬崎さんはそう言うと、電話を掛け始める。
しばらくして、お義母さんとお義父さんが車で迎えにきて、嘉人くんを連れて出掛けた。
途端に家中が静けさに包まれる。
「夕凪、大丈夫か?」
瀬崎さんが私の横に座り、腰を抱き寄せる。
「えっ?  何が?」
「なんか、煮詰まってただろ」
えっ?
 隠してるつもりだったのに、瀬崎さんは気づいてたの?
「うん、大丈夫」
私はそう答えて、笑顔を作る。
「夕凪、無理するな。
仕事の愚痴も、吐き出せるものは吐き出せばいいから。
異動したばかりだし、大変な事も多いだろ」
そうは言っても、学校の内情は話せない。
「うん、すっごく大変。
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