家庭訪問は恋のはじまり【完】

くっきぃ♪コミカライズ配信中

第77話 明日は

「じゃあ、明日は、夕凪ん家に行こう」

「え?」

私は驚いて隣の瀬崎さんを見上げた。

「お正月に約束しただろ?
 夕凪にいい返事が貰えたら、改めて挨拶に来ますって。
 夕凪のご両親にも気持ちよく認めてほしいけど、さすがにそれは無理かな」

瀬崎さんは苦笑いをこぼす。

「ええ?  なんで?
 美晴ちゃんは、僕と従兄弟になりたいって言ってたよ?」

嘉人くんが不思議そうに聞く。

「うん、美晴ちゃんは、きっと喜んでくれるだろうな。
 でも、夕凪先生のお父さんやお母さんはなぁ。パパ、バツイチだし、嘉人は夕凪先生の教え子だし」

「バツイチって何?
 僕が夕凪先生の教え子だとダメなの?」

嘉人くんは、必死で瀬崎さんに食い下がる。

「バツイチって言うのは、離婚した事があるって意味だよ。
 パパは、去年の夏まで、ママと結婚してただろ?」

「結婚してたら、ダメなの?」

嘉人くんは、素直な分、容赦なく質問責めにする。

だから、私は親子の会話だけど、口を挟んだ。

「ダメじゃないよ。
 でもね、先生のお父さんとお母さんは、ちょっと心配するの。
 嘉人くんのパパは、どうして嘉人くんのママと仲良くできなかったのかなって。
 先生と結婚しても、仲良くできなくて、別れちゃったらどうしようって。
 だから、大丈夫だよってお話してくるんだよ」

「分かった。
 じゃあ、僕も夕凪先生と仲良しだよって言ってくるよ」

「ふふっ
 ありがとう。
 嘉人さんがそう言ってくれたら、安心だね」

「じゃあ、なんで教え子はダメなの?」

あ、忘れてなかったかぁ。

「それはね、先生なのに、嘉人さんのパパと仲良しだと、テストとか成績とかズルしてないかなって思う人がいるんだ。
 もちろん、先生はズルなんてしてないんだけど、みんなは嘉人さんの成績も知らないから、分かんないでしょ?
 だから、もしかしたら、先生も嘉人さんのパパもみんなから嫌な事を言われるんじゃないかなって心配するんだ」

「そんなの、僕がやっつけてやるよ。
 夕凪先生の悪口を言う奴は、僕がとっちめてやるから、心配しなくていいよ」

ふふっ
なんだか、小さな瀬崎さんがいるみたい。

「そうだよね。
 じゃあ、きっと大丈夫だね。
 嘉人さん、ありがとう」

私は、瀬崎さんの横にいる嘉人くんの頭を撫でた。

「じゃあ、嘉人、お昼から、おじいちゃん家に行こう」

瀬崎さんが言う。

「おじいちゃんとおばあちゃんに、夕凪を紹介しないといけないだろ?」

「え!?」

いきなり!?

私は、うろたえる。

だって、まさか、今日、ご両親に挨拶するとは思ってない。

「だって、俺は早く夕凪と結婚したいんだ。
 挨拶なんてめんどくさい事は、今日明日中に済ませておきたいだろ?」

まるでそれが当然だと言わんばかりに言われて、私は「はぁ…」と頷くしかなかった。



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