万色を支配する白魔王 ~ステータス極振りどころか全捨てし、スキルに全振りした少女のピーキー無双~

志水零士

10 第二のフィールド

「これは……森なの?」

 第一フィールドの端につくと、そこには木が沢山樹立していた。

「ええ、第二のフィールドの名前は『沈黙の森林』。木々の影からの奇襲を好むモンスターが複数生息し、最初の草原でしっかり経験を積んでおかないと、まともに戦えないフィールドではあるけど……言い換えれば、プレイスキルがあればどうとでもなるフィールドね」

 なるほど。つまり、特に問題はないと。

「それじゃあ、さっさと行くの。……パーティは、続行の方がいいの? 私としては、続行でもいいんだけど。ケイネと話してるの、結構楽しいし……それと」
「それと?」
「ケイネがいて助かることはあっても、いて困ることは無さそうだと思ったから。私が自由に動いても、的確にサポートをしてくれそうなの」
「それは、光栄な評価ね」

 実際、ケイネにはそれくらいの能力があると思う。これは色からの情報ではなく、彼女の行動を見ての感想だ。

「そうね……いえ、パーティーは一旦ここで解散でいいわ。ノイを見てたら、ちょっとやる気が出て来ちゃって……しばらくはソロでやってみる。一応私βテスターだから、ここら辺の敵ならなんとかなるだろうし」
「そう。それじゃあ、ここでお別れなの」

 いてくれるならありがたいが、ケイネの意思を否定してまで一緒に来て欲しいとは思わない。それにここで分かれれば、次に会う時を楽しみに待てる。

「あ、パーティーを解散する前にお互いにフレンド登録をしときましょ」
「……それ、どういうものなの?」
「互いにメッセージを送れるようになる機能ね。またパーティーを組む時なんか、連絡手段があった方がいいでしょ?」
「確かにそうなの」

 戦闘中にきたらチャットが来たら迷惑ということでその機能は切っていた私だが、そこまで頻繁にくるわけでもないだろうし、それくらいはいいだろう。

「そうだ。ログアウトだけど、森の中に一つ村があるからそこでするといいわ。マップで確認できるはずよ」
「わざわざ感謝なの」
「水臭いわよ? それじゃ、またね」
「ん。また今度なの」

 そうしてケイネと別れて数分。木々の合間を縫って歩いていると――来た。

 ――『パリィ』――

 後ろから襲ってきた何かに向かって、最速の回し蹴りを叩きこんだ。
 ……の、だが。

「一発で倒れやがったの。これじゃ、どんなモンスターだったのかすら分からないの」

 ――チャイルドアサシンウルフ一体の討伐を確認。ドロップ品を獲得――
 ――マーク『アサシンウルフの子の仇』を獲得――

「……そういえば、そんな機能もあったの。どうやら子供の狼だったみたいだけど……ひじょーに、不吉なことを言っていた気がするの」

 何せ、仇である。どう考えたって、言い意味にはならない。

「いや、考えようによってはいいことなの?」

 おそらく、アサシンウルフというのはかなり強い相手なのだろう。何せ、アナウンスが鳴るくらいの相手だ。
 そんな相手の仇。おそらくこれは、そいつと戦うためのフラグだろう。
 強いモンスターと戦える。これは、かなりいいことなのではないだろうか。少なくとも、普通にモンスターを倒しながら歩き回るよりは楽しそうな気がする。

「えっと、確かマークって言ってたの。つまり、アサシンウルフが私を狙ってやってくるってことなの?」

 となると、じっとしていた方がいいのだろうか。……いや、それは暇すぎる。
 しかし、強い相手と戦うのが他の相手と戦っている途中で、中途半端に負けたりするのも嫌だ。

 昨日ホブゴブリンが出てくる前、ゴブリンは全然出てこなかった。あれがミニボス出現前に他のモンスターのホップ率低下させることで、ミニボスとの戦いに集中できるようにするための仕組みだったことは、昨日調べて分かっている。
 そして、アサシンウルフがホブゴブリンと同じようにミニボス扱いで、他のモンスターがホップしなくなる可能性はあるだろう。しかし、どうにも他の可能性が頭に浮かんで離れない。
 それは、アサシンウルフがもともとどこかに配置されているモンスターであり、私にマークがついたことで殺しに来る可能性だ。そしてこの場合、ホップ率が下がるとは限らない。

 少し暇な時間を過ごすのと、強い相手との納得できる戦い。……まぁ、考える必要も無い。

「仕方ないから、ここで待つとするの」

 暇な時間を潰す方法なんていくらでもある。そのうちの一つとして……私は色を、変えた。



一応言っておきますが、チャイルドアサシンウルフはレアモンスターです。出会ってすぐに出会うようなモンスターじゃありません。
そして、LUK値1なのにノイがそういう魔物に遭遇するのは、遭遇確率とLUK値に関係が無いからです。あと、初手から真っ直ぐつき進んでみたり、小さな体躯を生かして、木々の間の小さな隙間をごり押しで進んだりしてるからです。……そういうことにしといてください。

フォローといいねをよろしくお願いします。いいねは、面白いと思った話だけでいいので。

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