万色を支配する白魔王 ~ステータス極振りどころか全捨てし、スキルに全振りした少女のピーキー無双~

志水零士

8 パーティー

「さてと。このゲームを初めてから二日目。もっとレベルを上げたいけど、あそこでやるのはもう飽きたの。色、いや……行動パターン、ってやつなの? あいつら、完全に同一の条件だった時に取る行動が、完全に同じなの」

 戦いから何か学んでくれるのなら話もまた別なのだが、そんな様子も感じられないのだ。

「ってことで、次のフィールドに行ってみるとするの。えっと……始まりの平原の先? 嫌がらせなの?」

 どうやら、ゴブリンとはまだ戦わなくてはいけないらしい。……面倒だ。

「ねぇ。あなた、ノイちゃんよね」

 後ろから話しかけられたので、振り返る。そこにいたのは、水色の髪で長身の女性だった。

「……ゲームのアバターだから容姿はともかく、その色も初めて見るの。あなた、誰?」
「えっと……色っていうのがちょっとよく分からないけど、私の名前はケイネよ」
「……聞き覚えのない名前なの」
「そりゃあ、私があなたのことを一方的に知ってるだけで、初対面だからね。ノイちゃんの昨日の配信を見てたってだけだから」
「ああ、なるほど。それは失礼したの。……もしかして、意外と見てくれてる人多かったりするの?」

 もしそうだったとして、何かが変わるわけでも私が何かを変えるわけでもない。ないのだが、少し気になった。

「えーと、そうね。あの動画を見れるのが基本的にBAオンラインのプレイヤーだけで、昨日がサービス開始日だったことを考えれば、確かに多かったわね」
「……BAオンラインのプレイヤーだけしか見れない? それはちょっとおかしいの」
「あ、もしかしてさやちゃんのことかしら?」

 ……何故、こいつはそんなことを知っているのか。それは分からないが……色的に、そこまで心配する必要はないか。

「何でさやのことを知ってるの?」
「……もしかして、知らない? さやチャンネルって、ゲームが超うまい実況者ってことで有名なのよ? 私があなたの動画を見たのも、彼女がおすすめしてたからだし」

 それは初耳……いや、聞いたけど忘れただけか? 何にせよ、私の記憶にはない。

「知らなかったの。……それで結局、さらはなんで私の配信を見れているの?」
「残念だけど、そこまでは分からないわ」

 ……まぁいい。後で本人に聞いてみればいいだけだ。

「それであなたは、何の用で私に話しかけてきたの?」
「ああ、そうだ。さっき、コブリンを倒すのが面倒って呟いてたでしょ。それなら、一緒に行かない? 護衛さえしてくれれば、倒すのは私がやるから」

 なるほど。それはかなりありがたい申し出だ。

「それじゃあ、さっさと行くの」
「……本当にゴブリンを倒せるのかとか、疑わないわけ?」
「普通の人がどういう行動を取るのかは知らないけど、少なくとも私はケイネを信じたの」
「それでも、パーティくらいは……」
「パーティを組むと、経験値が平等に配分されるんでしょ? 私はあなたを守るだけだし、私が経験値を受け取る理由はない。だから、パーティを組む必要はないと思うの」
「昨日の配信から察してはいたけど、ノイちゃんって変ね」
「そう?」

 私は特に、変なことを言ってはいないと思うのだが。仕事に見合った報酬しか受け取らないのは、当たり前のことだろう。

「ええ。……私はステータスを、INT以外は伸ばしていない。極振りってやつね。だから、コブリンの攻撃を一撃でも受ければ私は死亡する。……ここまで言っても、ノイちゃんは経験値を受け取る権利がないって言う?」

 ふむ。そこまで言われて、固辞するのも良くないか。

「了解なの。それじゃ、パーティを組むの」

 私がそう言うと、ケイネは柔らかい笑みを浮かべた。……この表情を見られただけでも、パーティを組んだ価値はあったかもしれない。

「因みにだけど、ケイネはINT以外はステータスを伸ばしてないって言ってたけど、どういう魔法を使えるの?」
「えっと、色々あるけど、一番使い勝手がいいのは炎球を打ち出して、着弾時に爆発させる魔法ね」
「……へぇ」

 その説明を聞いて、思わず私は笑ってしまった。それは面白そうだと、そう思って。






度々でてくる『色』という言葉についての説明は、次の話でする予定です。少々お待ちください。

フォローといいねをよろしくお願いします。いいねは、面白いと思った話だけでいいので。
        

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