万色を支配する白魔王 ~ステータス極振りどころか全捨てし、スキルに全振りした少女のピーキー無双~

志水零士

4 最初のフィールド

「なんの変哲もない草原……定番と言えば、定番なの」

 となれば、出てくるのはスライムかゴブリンだろうか? 不定形の化け物の相手は面倒なので、どちらかいえばゴブリンの方がいい。
 見た目はゴブリンの方が醜いだろうが、正直そんなことはどうでもいい。むしろ、この世界の色彩がどれだけ作りこまれているのかを知るにはゴブリンの方が良いのは明らかなので、むしろありがたいくらいだ。

「まぁ、何にせよ移動はした方が良さそうなの。こんなに沢山いたら、いつエンカウント出来るか分かったもんじゃないし」

 町とフィールドの間に建っている門の周辺は、他のプレイヤーでいっぱいだった。サービス開始直後なので人数が多いのは分かるが、もっとばらける気は無いのだろうか。

「……それぞれが距離をとることなんて、期待するだけ無駄、か。……ま、愚かな人たちは勝手に損してればいいの」

 とはいえ、何の情報も無い状態で移動するのは良くない。何か情報はないかと、このフィールドにくるのにも使ったマップを見てみる。

「へぇ、ここって『始まりの平原』って名前なの。面白味はないけど、悪くはないの」

 見た限り、この草原に特異性は無い。変に捻った名前をつけても、名前負けするだけだろう。

「マップを信じるなら、特に道はない、と。なら、まっすぐ進むだけなの」

 そして私は、モンスターを求めて歩き始めた。マップで偶に方向を確認しながら、私は進む。
 ……歩き続けて、約十分。未だにエンカウントはゼロ回だった。

「……さすがにおかしいの。いくらなんでも、ここまでモンスターが出てこないわけがない……もしかして、LUKのせいなの?」

 十分にありえる。何せ私のLUKは1しかないのだから。

「ん?」

 突然、目の前に光の欠片とでも言うべきなにかが複数現れた。なんなのだろうか、これは?
 ボーっとしていると、その光の欠片は何かの形を作り始めた。……あ、なるほど。

「つまりこれは、モンスターが登場する際のエフェクトってことなの。……それにしては、大きくないの?」

 エフェクトを見る限り、高さは二メートル近くある。単にモンスターという括りでも見るならそこまででもないが、最初に会うモンスターの大きさではない気がする。
 数秒後、エフェクト通りの体長のモンスターが現れた。そいつの情報がこちらである。



 ホブゴブリン Lv:10



 あくまでゴブリンなので序盤のモンスターではあるのだろうが、最初に戦うモンスターではない。絶対ない。

「……でもまぁ、死んでもあの噴水のところで蘇生するらしいし、折角だからやってやるの」

 Lv差9で、私は初戦闘。だけどあのスキルがあって、一方的に負けるとは思えない。

「ウヴォオオ!!」

 化け物らしい咆哮を上げるホブゴブリンだったが、特に怖くはない。冷静に、スキルを使用する。

「『色撃』」

 ――『色撃』。『純白の神衣』を武器化――

 発動はうまくいった。しかし。

「どうやら、十秒ごとのカウントをしてくれたりする機能はないみたいなの。……まぁ、それなら継続的に、このドレスの色を思い浮かべればいいだけの話なの」

 少し大変だが、出来ないことではない。何せ――

「――今まで当たり前のようにやってきた、周囲の色彩から光の完全把握。そこからドレスの色を計算する程度のことなら、容易いことなの」
「ウヴォガァア‼」

 私の言葉を理解したわけでもないだろうが、その言葉の直後に、ホブゴブリンは手に持った棍棒を私に向かって振り下ろして来た。右腕を上げ、棍棒に袖の部分が当たるように気をつけて振る。

 ――『パリィ』を会得。自動発動状態に設定――
 ――『パリィ』――

 そして私の攻撃は、ホブゴブリンに棍棒を手放させた。要はホブゴブリンは、私との衝突によって発生した衝撃を抑えきれなかったのである。




一応戦闘シーンに入りましたね。パリィの詳細は、また今度。

フォローといいねをよろしくお願いします。いいねは、面白いと思った話だけでいいので。
        

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品