【月が綺麗ですね。】私は先生に、青春全てを捧げて恋をする。

KOHARU

月が綺麗ですね。(59)最終回


私のはじめてのキスを、先生に捧げる。
そして、私の唇に何かが触れた。
でも、これは私の思っていたキスじゃない。
私ははっと目を開けた。
わたしの唇に当てられていたのは、やっぱり先生の唇じゃない。
「ちゃんと言わなかったからお預け」
そう言いながら当てられているのは、先生の左手の人差し指だった。
恥ずかしい、1人でキスをされると思いあがって目を瞑って待っていた。
「...ずるい」
「ずるくない。華の方がずるいね」
「せんせ...け、けいの方がずるいです」
少し期待する。
言わなかったから先生はキスしてくれなかった。
なら言えば良いはずだから。
「おっ、でも残念〜もうしませーん」
そう言って先生はアクセルを踏み、車を発進させた」
「何でですか!ずるいです!」
「次は敬語やめようか」
「そんな次々に無理です!ずるい!嘘つきです!」
「嘘つき呼ばわりは侵害だなぁ」
「だって本当にそうじゃ無いですか!」
「ハイハイわかったよ。それにね、俺だって多少は気の回る男だよ?」
「何がですかどういうことですか」
「別に今言うことじゃないけどさ。まぁ、敬語やめれたら教えてあげるよ」
「分かった。もう敬語なんて使わない教えて!」
「何でこっちはそんなスッと変えられんだよ訳わかんねぇな」
「いいから、約束だよ」
「流石にあっさりすぎるからちゃんと名前で呼べたらっていうのも追加」
分かったよ先生。
言ってやるよ。
見てて下さいよ?
「圭」
今度ははっきりと、つっかえずに言えた。
すると先生は、フッと声に出して笑ったかと思うと、ハンドルを握り直しチラッと私のことを見た。
「大切な人とのファーストキスは、大切にしたいの」
その言葉に、私の胸がドキドキする。
静かな車内、絶対聞えてるって思うくらいバクバクしてる。
やっぱり先生は、何も考えたいなさそうな顔してすごく沢山のことを考えている。
私は、そんな先生だから好きになったんだ。
私は我慢できず、隣で運転する圭に抱きついた。
「危ない危ないバカかお前は!」
「あっ、ごめんなさいつい」
「良いから離しなさい!死ぬよ!?」
「死んでも良いって思えます私」
「舞い上がって2人で死んだらどうしようもないだろバカ」
そして先生に無理やり剥がされ、元の姿勢に戻る。
そんな風に先生は冷たいことをするけど、また耳は真っ赤。
本当に、私以上にわかりやすいかもしれない。
「何ニヤニヤしてんだよ」
「何でもないよーだ」
そして私達は車を走らせアトリエを後にする。
私は鞄を膝の上に置き、中に隠した藤岡先生にもらった絵を一瞬だけ目で確認した。
その絵には、満遍の笑みで頬を寄せ合う私と先生の姿が描かれている。
私は絵の中の先生の顔を指でゆっくりとなぞってみた。
私も早く大人になって、先生を幸せにします。
絶対、幸せになります。
だって私は、先生に青春全てを捧げて恋をしたんだから。






 〜完〜



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