【月が綺麗ですね。】私は先生に、青春全てを捧げて恋をする。

KOHARU

月が綺麗ですね。(25)

「あっ、ま、栗原さん!?」
 「お友達とランチ中申し訳ないんだけど、ちょっとだけここ座らせてもらってます良い?友達待ってるんだけど満席でさ。」
『どうぞどうぞ!』
「ちょっと柚木!」
柚木は満遍の笑みで私の顔を見てる。
何このイケメンって言いたいんだろう。
でもこの人だよ、さっき私が説明したチャラい人だよ。
 「初めまして。華ちゃんと同じ文学部で同じサークルの一つ上の栗原潤です。こちらは華ちゃんのお友達?」
私の隣に座った栗原さんが、横から私の顔を覗いて聞いてくる。
こういう距離感が近いのも、あんまり好きじゃない。
『はい!高校からの親友で、市原柚子です!』
私が少し黙っていると、柚木が代わりに笑顔でそう答えた。柚木のニコニコ笑顔。
彼氏に一途ってさっきまで言ってたくせに。
 「へぇ〜。素敵な友達だね。2人ともスーツってことは、ちょうど就活か!しんどいでしょ」
『そうなんですよ!もう毎日くたくたで』
 「俺もその時期しんどかった記憶あるわ。そういえば、華ちゃんは教師志望だったよね?」
「え、あ、はいそうです」
 「そうだよね!俺も教師だからさ、いつでも相談乗るよ」
そう言ながら栗原さんは、テーブルに置いてあったナプキンに自分の電話番号を書いて私に渡した。
 「何か聞きたいこととかあったら電話してくれて良いからね。じゃあ、また落ち着いたらサークルでね」
そう言って栗原さんは男友達と合流して、お店を出て行った。やっぱり栗原さんは、女の扱い慣れてますって感じ。
何で栗原さんが私の教師志望のことを知っているのか少し不思議に思いながらも、私は電話番号の書いてある紙をテーブルに置いてため息をついた。
『ちょっと華なにあの人!めっちゃイケメンじゃん!』
「あれがさっき言った、チャラい先輩だよ!こんなところで会うなんてもう。」
『何言ってんの!あれはチャラいっていうか、華のことが単純に好きなんでしょ!女なら誰でも良いって人なら私にも電話番号渡すだろうし!
なのに華にだけじゃん!いいじゃんあの人。」
確かに、私よりも全然綺麗で気さくな柚木が目の前にいたのに。だけど、だけど
「やだよ。私は先生って決めてるんだもん。」 
『それは分かった分かったけどさ。
先生とデートする日が来たらさ、右も左も分からない状態よりもちょっとくらい経験積んでた方が良くない?デートくらいなら良いじゃん。
相談したいですって言って、会ってみなよ!』
確かに私は今までキスは愚か、デートもしたことがない。
2年後、大人になって先生との再会って計画練ってたけど、高校卒業した2年前から確かに何も変わってない気がする。
「デート、した方がいいかな」
『もちろん大人の階段登る必要はないけどさ、ちょっと話したら印象も変わるかもだし、気持ちもさ何かあるかもじゃん?』 
確かに、大人に近づくために少しくらいデートは必要な気がする。
でと、これは栗原さんを利用するみたいになってしまう気もするからあまり気は進まない。
『そんな深く考えないでさ。好きになるかもしれないじゃん。ランチ一緒にくらい安全だし。1回、連絡してみたら?』
テーブルに置いてあるナプキンを柚木が手に取り、私にもう一度渡す。
まあ確かに、ランチなら。
「そう、しようかな。」
でも、電話なんて緊張してできない。だから、SMSを送ることにした。
柚木にアドバイスをもらいながら、10分くらいあぁでもないこうでもないって言って。
“待ち合わせ場所には時間ピッタリに行くこと!”
柚木に言われたアドバイス通り、時間ピッタリまで待ち合わせ場所には付かないように、途中で時間を調節しながら駅の中を歩く。
携帯の画面を光らせ、時間を確認したらまだ後5分早かった。
もう待ち合わせ場所は見えるけど、少しここで待とう。 
少し離れたところから、栗原さんから指定された場所をじっと眺めてる。
そこには、半袖のシャツに黒いパンツを身につけた、すらっと身長の高い男性が1人。きっと、栗原さんだ。
柚木の言っていた通り、確かに遠くから見てもイケメンなのがわかった。

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