【月が綺麗ですね。】私は先生に、青春全てを捧げて恋をする。

KOHARU

月が綺麗ですね。(16)


「私...先生の声が好きです。
先生の、優しいところが好きです。
先生の、笑顔が好きです。
先生の、全部が_____「
「ダメだ。」
先生が、私の言葉を遮るように言った。
「ダメだ。もう暗いから帰らないと」
そして先生はポッケに手を入れて、1人で扉に向かって歩き始めた。
何でですか、まだ私ちゃんと言えてないのに。
「待って下さい!」
私の声が聞こえているはずなのに、先生は止まってくれない。
これ以上はもう来るな。また、そんな見えない線が見えた気がした。
でもここまで来たんだ。もう引き返せない。
私は、早足で進んでいく先生を必死に追いかけ、先生の左手を両手で抑えた。
「待って下さい、まだ話したいことがあります」
 「もう終わりだよ」
「え?」
 「俺が悪かった。目が、覚めた。特別とかそんな単語使ったからだ。」
前に先生に告白した女の子のことが思い出される。
なぜ先生は、謝るんですか。
「何で、謝るんですか」 
 「もう、放課後に勉強を教えるのは終わりだ。
本当はそれも、生徒の不平等扱いになる。
俺の判断ミスだ。もう後は、自分の通ってる塾で習いなさい」
先生は、全く私の顔を見てはくれなかった。ただずっと、俯いたままだった。 
「何でですか、私が告白しようとしたからですか。
ならごめんなさいもう言いません。だから、だから「
 「それに菊池がまだ子供だから、大人がよく見えるんだよ。物珍しく、見えるだけだ、錯覚だよ。」
「違う、そんな事ないです。私は入学した時からずっと先生のことが「
 「それに優しくしたのは、お前が生徒だからだ。生徒だから、優しくした。それだけだ。それ以上でも、それ以下でもない。」
先生は冷たく、淡々と私に話した。
声を荒げることもなく、目を潤ませることもなく、ただ、ただ、私に事実を述べた。
「何で、そんなこと言うんですか。私は、先生との時間が大好きでした。すごく、楽しかった。この時間を、もっと長く続けたいと思っただけです」
私の目から溢れ出る、何滴もの滴が地面を濡らした。
でも先生は、そんな私を見てはくれない。
先生の腕を掴む手に力を入れてみても、先生は何もしない。
 「俺はそうは思わない。受験、頑張りなさい」
先生は私の手を振り解いき、また出口へと足を進めた。
何で先生は、そんなに冷たいことを言うんですか。
急にどうして。
さっきまで、あんなに特別扱いしてくれたじゃないですか。
「最後まで聞いてください!ダメならダメでいいです。だからせめて、想いを伝えさせて下さい。それから、はっきりと私を振って下さい」
これじゃ、諦めるにも諦められません。こんな風に濁すのは、先生の悪い癖です。すると私の言葉を聞き、先生がやっと足を止めてくれた。
 「ダメだ。言葉は口に出すと、真実になる。菊池が今思っているのは、ただの幻想だ。忘れなさい」
忘れられるわけがない。こんなに好きなのに。
そんな簡単に、忘れられるわけがない。
 「それに」
先生が、私の方に体を向けた。やっと、先生と目が合う。
 「俺は、俺のことを先生と呼ぶ人とは、恋愛できない」
そして先生は、私の目の前から姿を消した。 
全部終わった。
先生は、濁したりなんてしてなかった。全部全部、私が自分で壊した。
何で告白なんてしようとしちゃったんだろう。
何で、今の関係を大切にしようとしなかったんだろう。
なんで勝手に、先に進めると思ってしまったんだろう。
先に進むよりも、今の幸せを噛みしめておいた方が何倍も幸せだったはずなのに。
自分で自分を憎んだ。悔やんでも悔やみきれなかった。


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