星の燈

ノベルバユーザー478731

ホストの品格「夜の住人雷夂」

ある有名繁華街に雷夂は赴いた。
夜の城が立ち並んでいるホスト街だ。


雷夂は、立て続けにホストの面接を受けて
いるが惨敗していた。

「ここも駄目か……」
雷夂は、集客が良さそうなホストクラブを
調べあげて受けるも上手くいかない。

確かに、最初は店長や面接官の受けは良い。
だが、数分……いや……たった数字の言葉を
発した途端に、顔をしかめた。

そして……
「君なら…他にも良い店はあるよ
店は沢山あるんだから、無理に内に決めなくて
も構わない」とお祈り言葉を言われてしまう。

大学や一般企業なら引く手あまたである
彼は相当苦戦していた。

雷夂は、偏差値70名門進学校「海腥(かいせい)」高校を無事に卒業し、名門医大に給付型第一奨学金で入学した。

高校生で前代未聞の医師免許取得も果たしている。

むしろ、欲しがらない企業はいない。

雷夂にとっても初めての経験で頭を悩ませた。

雷夂は、短時間で効率的に大金を稼ぐ為に
ホストクラブで働く事を決意していた。

失敗すれば借金地獄。
成功すれば、サラリーマンの生涯年収を獲得を
することも夢ではない。

大切な人を守るのは後にも先にも金だ。

雷夂は、普通の人間なら成し遂げる事は
絶対あり得ない無謀な賭けに見事勝利し、
父親から決めたレールから離脱し、
縁も切った。

幼少からコツコツ貯めた貯金。
父親から巻き上げた慰謝料。
母親の遺族年金。

とりあえず、勉学に専念したとしても
数年は余裕ある暮らしは出来る。

バイトだって、大学側が推奨している
学内バイトだってある。

だが、本当にそれなりだ。
奨学金返済は無縁。

お金には全く困ってない。
むしろ、バイトなんてする必要のない彼だが
彼は、どうしてもホストで成り上がり大金が
欲しかった。

雷夂は途方に暮れていた。
別に、明日からの生活に困っている訳でもない。
でも、とにかく雷夂は必死だった。

そんな奇妙な雷夂の光景を見かねてというか……
かなり興味を持った1人のスカウトマンらしき
男が話しかけてきた。
年齢は見た感じ、20代後半から30代前半
といったところ。

身長は雷鳥夂より高めで、オールバックと
白スーツがよく似合い、愛嬌があり
顔も整っている。

「どうした。少年。
最近ここいらでよく見るよね。
顔面偏差値滅茶苦茶高いから、結構有名に
なってるよ。
あんまり必要以上に出歩いていると、
悪い御姉様やマダムに誘拐されてちゃうよ」

雷夂の表情は凍りついていた。
2人の温度差はかなり激しいだろう。

「まあまあ。そんなに冷たい表情をしないでよ。
俺は君を助けてあげたいだけなんだよ」

「助ける?
俺は別に貴方に助けを求めた
覚えは毛頭ないよ」

「いいねえ~
その誰も近寄らせない冷たい表情……


男は、ゾクゾクとした顔をした。

雷夂は、素早く足を蹴りあげた。
が……男の反応はかなり早かった。

「なっ……」

雷夂は、男の人間離れした動きに面食らった。

「そんなにカリカリしないでよ。
この近くに上手いラーメン屋あるから
行こうや♪
勿論、俺の奢りよ」

「あんた……本当に只のスカウトマンか……」

男は、ニット笑う。

「俺は敢椥(かんなぎ)
ラーメンをこよなく愛する眠らない街の
ポンコツスカウトマンさ。
今月、中々ノルマ達成出来なくて困ってたんだ」

「それは、まあ大変ですね
俺は「雷夂」金がとにかく稼げるだけ
稼ぎたい。
それが叶うんだろ……」

「勿論♪
特に君はかなり良い素質があるよ
トンコツラーメン食べながら話そうよ」

「……無限キャベツだけで結構です」

「ぷっ……君は面白いね……」

敢椥は、大笑いをした。

雷夂は、一応、一歩進んだようだ……

だが、同時にこの街には魔物が住んでいると
実感させられる。

夜の街の悲惨な敗者の姿だ。

女に刺されたのか、店にハメラレ
借金まみれにされたのか分からないが……
路地裏にズタボロになったホストの残骸が
あった……


橄椥は、雷夂を連れて繁華街から離れた。

「俺は飯を食うなら静かな場所か
アットホームな定食屋って決めているんだ」

橄椥は、地下階段を降りていく。
さっきまでの夥しくもギラギラした
雰囲気から一変した。

まるで故郷の田舎にでも帰ってきたかの
懐かしさがあった。

いや、正確にはよく大人が話している故郷の
懐かしかを具現化したものだ。
この地下へ続く階段を降りた先には……

誰もいない静かな和室の部屋があった。

「あの……ラーメン屋さんじゃ……」

雷夂は、意味が分からないといった顔で
橄椥に尋ねた。

橄椥は、キョトンとした顔をした。

「えっ?
俺、ラーメン食いたいって言ったけど、
ラーメン屋さんに行くとは言ってないよ」

「滅茶苦茶だ……てか、ここは……」

雷夂は、扉近くのかけられた小さな看板を
見つける。

そこには、こう書かれていた。

「大人の里帰り」

雷夂は、頭に?マークが余儀った。

「今日は俺のイチオシの美人母さんが
いるんだ。
君のおかげでまた会う口実が出来たよ。
ほら~、あんまり頻繁に来るとガツガツした
客って思われるじゃん。
後輩を連れて来たって事に……」

雷夂は、如何わしい店だと関知した様で、
帰ろうとする。
橄椥は、雷夂の腕を掴む。

「ちょっと待ってよ。
ここは、人を蹴落として天下を取るような街で
君はこれから、生きる戦略を立てるんだ。
ガラの悪い輩が集まる店で飯を食いたいのか。
ここは、れっきとした老舗の飯屋だよ。
俺は君を厚待遇で迎えたい。
いわば、接待面接だ」


































コメント

コメントを書く

「現代ドラマ」の人気作品

書籍化作品