バッドエンドは全力でぶち壊す!
第47話 劣等感
 外に出た雄貴は、夏帆が何処に向かったのか、必死に考え始める。
-あの様子だと、マトモな思考は出来なそうだ。なら、こういう時は、海岸って相場が決まってるな。取り敢えず行ってみるか。-
 謎理論でぱぱっと考えを纏めた雄貴は、悠人に指示を出しながら走る。
「俺は海の方を確認するから、悠人はあの十字路を左に行ってくれ!」
「分かった!」
 そうと決まれば、雄貴はそれなりの速度を出して走る。Cランクの身体能力強化の超能力者の、全力くらいだろう。
 走りつつ、見回し、周囲の気配を探り、夏帆を見逃さないように気を配りながらも、考えを巡らせる。
 -何で夏帆は取り乱して逃げた?……いや、聞かれた話の内容からすると、考えるまでも無くアレが理由か。だとすると、本来ならもう少し後に発生する筈なんだがな。-
 夏帆ルートにおいて、その根幹となるイベントがあるのだが、それと同じ問題が発生していると結論付ける。
-だとしたら、悠人に海に行ってもらえば、なんやかんやで付き合い始めたんじゃ!?-
 イベントが発生するのが早すぎるが、そこは主人公補正とかで補ってもらって、万事解決となるのではと、今更ながらに思い至る。それだけ夏帆の逃走に、慌てていたという事だろう。
 だが、既に悠人との距離は離れ過ぎており、今から戻っても、不自然すぎるだけである。下手したら、勘のいい悠人には、雄貴の思惑がバレるだろう。
-ま、まぁ、夏帆が海に居る事が、確定した訳じゃないしな。左に折れた事を祈りつつ、取り敢えずは海に行くか。-
 後悔しても遅いので、心の中で祈りながら、ただひたすらに駆けて行くのだった。
-oh......-
 砂浜に到着した雄貴は、思わず心の中で項垂れる。
 その視線の先には、ぼんやりと海を見つめる夏帆の姿があったからだ。
-さて、何て声を掛けるか。-
 こんな時、上手い言葉が見つからない。雄貴は主人公で無ければ、女性の扱いが上手いわけでもない。
「夏帆さん。ここに…居たのか。」
 思い悩んだ末のセリフがこれである。自分でも情けなくなってくるが、どうしようも無い事なので、どうにでもなれの精神で、夏帆を連れ戻すことを目標に、説得を試みる。
「急に飛び出してったから、ビックリしたよ。」
 背後から声を掛けられた夏帆は、こちらに振り向かないまま、ボソリと言う。
「…ごめんね。」
 酷く暗い声だ。雄貴はそれに、大慌てである。
「い、いや、謝る必要は無いよ。何かしらの理由があっての事だろうし。うん。」
……いくら何でも口下手すぎるだろう。だがこれが雄貴の精一杯である。
「えっと、理由は聞かないけど、みんな心配するから、取り敢えず戻ろうか。」
「……ちょっと、無理そうかな。」
「そっか。…俺はここに居るけど、良い?」
「……うん。」
「……。」
 別荘に戻る事は拒否されたが、追い返される事は無かったので、一緒に居ることにする。
 少しの間、その空間には漣と、少し吹く風の音のみが響いた。
「…ねぇ、雄貴君。」
 最初に沈黙を破ったのは、意外にも夏帆であった。
「何?」
「何も聞かないの?」
「ん、まぁね。何となく理由は分かってるから。」
「…分かるの?」
「何となく、だけどね。2年の付き合いは、伊達じゃないよ。」
 夏帆を刺激しないよう、なるべく穏やかな声音で言う。
 彼女の抱える問題は、個人の問題であり、第三者である雄貴からは、どうにも手出しは出来ないものである。
「…そっか。……少し、話しても良い?」
「良いよ。」
 だが、彼女から心の内を話してくれるというのならば、雄貴が拒む理由は無い。
-くっ…。ここは、悠人の出番なんだがな。けど、そんな事も言ってらんねぇよな。真面目に聞くとするか。-
 雄貴にとってここは、ゲームの世界では無く、紛れもない現実である。なのでここで夏帆を放置して、呑気に悠人を呼びに行くような事は出来ない。
「シンシア先輩と、由橘乃ちゃんが話してるのを聞いたの。由橘乃ちゃん、生徒会に入らないかって。」
「あぁ、やっぱりか。」
 納得したように、静かに呟く。
「…それと、雄貴君が、由橘乃ちゃんを褒めてるのを聞いた。生徒会に相応しいって。」
「いや、別に相応しいとは…「言ってるも同然だよ!」…。」
 悪い方向に取られたようなので、否定しようとしたが、大声で否定されてしまう。
「私が今、こうして飛び出して来た理由を、雄貴君は分かってるんでしょ!?なら、私がどんな気持ちなのか、理解してよ!」
 涙を流しながら、理不尽な事を言い出す夏帆。普段の彼女らしからぬその様子に、雄貴は動揺を必死に隠しながら、頭を下げる。
「俺の発言が、夏帆さんを傷付けてしまったのなら、謝るよ。すまなかった。けど、君を不快にさせる意図は無かった事だけは、理解して欲しい。」
「な、何で謝るの!?どう考えたって、私の八つ当たりじゃない!」
「いや、まぁ、夏帆さんが傷付いたのは事実だし、原因が俺にあるのは明白だし。」
「そうじゃなくて!勝手に傷付いて、わめいて、雄貴君に辛く当たって、めんどくさい奴だよね!?そんな奴に、何で馬鹿正直に謝ってるの!?普通は怒るところでしょ!?」
 泣きながら怒り出す夏帆。その剣幕に、雄貴は気圧されてしまう。
「え、あ、そう?」
 気圧される雄貴に、夏帆はグチグチと小言を並べてゆくのだった。
-あの様子だと、マトモな思考は出来なそうだ。なら、こういう時は、海岸って相場が決まってるな。取り敢えず行ってみるか。-
 謎理論でぱぱっと考えを纏めた雄貴は、悠人に指示を出しながら走る。
「俺は海の方を確認するから、悠人はあの十字路を左に行ってくれ!」
「分かった!」
 そうと決まれば、雄貴はそれなりの速度を出して走る。Cランクの身体能力強化の超能力者の、全力くらいだろう。
 走りつつ、見回し、周囲の気配を探り、夏帆を見逃さないように気を配りながらも、考えを巡らせる。
 -何で夏帆は取り乱して逃げた?……いや、聞かれた話の内容からすると、考えるまでも無くアレが理由か。だとすると、本来ならもう少し後に発生する筈なんだがな。-
 夏帆ルートにおいて、その根幹となるイベントがあるのだが、それと同じ問題が発生していると結論付ける。
-だとしたら、悠人に海に行ってもらえば、なんやかんやで付き合い始めたんじゃ!?-
 イベントが発生するのが早すぎるが、そこは主人公補正とかで補ってもらって、万事解決となるのではと、今更ながらに思い至る。それだけ夏帆の逃走に、慌てていたという事だろう。
 だが、既に悠人との距離は離れ過ぎており、今から戻っても、不自然すぎるだけである。下手したら、勘のいい悠人には、雄貴の思惑がバレるだろう。
-ま、まぁ、夏帆が海に居る事が、確定した訳じゃないしな。左に折れた事を祈りつつ、取り敢えずは海に行くか。-
 後悔しても遅いので、心の中で祈りながら、ただひたすらに駆けて行くのだった。
-oh......-
 砂浜に到着した雄貴は、思わず心の中で項垂れる。
 その視線の先には、ぼんやりと海を見つめる夏帆の姿があったからだ。
-さて、何て声を掛けるか。-
 こんな時、上手い言葉が見つからない。雄貴は主人公で無ければ、女性の扱いが上手いわけでもない。
「夏帆さん。ここに…居たのか。」
 思い悩んだ末のセリフがこれである。自分でも情けなくなってくるが、どうしようも無い事なので、どうにでもなれの精神で、夏帆を連れ戻すことを目標に、説得を試みる。
「急に飛び出してったから、ビックリしたよ。」
 背後から声を掛けられた夏帆は、こちらに振り向かないまま、ボソリと言う。
「…ごめんね。」
 酷く暗い声だ。雄貴はそれに、大慌てである。
「い、いや、謝る必要は無いよ。何かしらの理由があっての事だろうし。うん。」
……いくら何でも口下手すぎるだろう。だがこれが雄貴の精一杯である。
「えっと、理由は聞かないけど、みんな心配するから、取り敢えず戻ろうか。」
「……ちょっと、無理そうかな。」
「そっか。…俺はここに居るけど、良い?」
「……うん。」
「……。」
 別荘に戻る事は拒否されたが、追い返される事は無かったので、一緒に居ることにする。
 少しの間、その空間には漣と、少し吹く風の音のみが響いた。
「…ねぇ、雄貴君。」
 最初に沈黙を破ったのは、意外にも夏帆であった。
「何?」
「何も聞かないの?」
「ん、まぁね。何となく理由は分かってるから。」
「…分かるの?」
「何となく、だけどね。2年の付き合いは、伊達じゃないよ。」
 夏帆を刺激しないよう、なるべく穏やかな声音で言う。
 彼女の抱える問題は、個人の問題であり、第三者である雄貴からは、どうにも手出しは出来ないものである。
「…そっか。……少し、話しても良い?」
「良いよ。」
 だが、彼女から心の内を話してくれるというのならば、雄貴が拒む理由は無い。
-くっ…。ここは、悠人の出番なんだがな。けど、そんな事も言ってらんねぇよな。真面目に聞くとするか。-
 雄貴にとってここは、ゲームの世界では無く、紛れもない現実である。なのでここで夏帆を放置して、呑気に悠人を呼びに行くような事は出来ない。
「シンシア先輩と、由橘乃ちゃんが話してるのを聞いたの。由橘乃ちゃん、生徒会に入らないかって。」
「あぁ、やっぱりか。」
 納得したように、静かに呟く。
「…それと、雄貴君が、由橘乃ちゃんを褒めてるのを聞いた。生徒会に相応しいって。」
「いや、別に相応しいとは…「言ってるも同然だよ!」…。」
 悪い方向に取られたようなので、否定しようとしたが、大声で否定されてしまう。
「私が今、こうして飛び出して来た理由を、雄貴君は分かってるんでしょ!?なら、私がどんな気持ちなのか、理解してよ!」
 涙を流しながら、理不尽な事を言い出す夏帆。普段の彼女らしからぬその様子に、雄貴は動揺を必死に隠しながら、頭を下げる。
「俺の発言が、夏帆さんを傷付けてしまったのなら、謝るよ。すまなかった。けど、君を不快にさせる意図は無かった事だけは、理解して欲しい。」
「な、何で謝るの!?どう考えたって、私の八つ当たりじゃない!」
「いや、まぁ、夏帆さんが傷付いたのは事実だし、原因が俺にあるのは明白だし。」
「そうじゃなくて!勝手に傷付いて、わめいて、雄貴君に辛く当たって、めんどくさい奴だよね!?そんな奴に、何で馬鹿正直に謝ってるの!?普通は怒るところでしょ!?」
 泣きながら怒り出す夏帆。その剣幕に、雄貴は気圧されてしまう。
「え、あ、そう?」
 気圧される雄貴に、夏帆はグチグチと小言を並べてゆくのだった。
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