バッドエンドは全力でぶち壊す!
第45話 観光
 ガクブルと震える夏帆を見て、全員が気を遣ったのか、早々にガマから出てきた一行は、国際通り、海中道路等々、様々な場所を観光した。
 移動には、福地が運転するワゴンが使用された。
「いや〜、やっぱ東京には無い景色ばっかで、良かったですね。」
「そうですね。海も木々もとても綺麗でした。」
「サトウキビジュースだっけ?あれ、結構癖になったね。」
 雄貴の言葉に頷きながら、良い表情で言うシンシアと咲。まだ1日目だが、来て良かったと思える、そんな時間であった証拠だろう。
「ガマは兎も角、他は凄いところばっかりだったね。」
 暗闇から脱した夏帆は、すっかり元気を取り戻して、普段見られない観光地に大興奮であった。
 震えながら、雄貴に引っ付いてた人間とは、同一人物とは思えないほどのはしゃぎっぷりに、全員が目を丸くする程だ。
「あれだけはしゃいで、良くまだ元気ね。私はもう、疲れちゃったわ。」
「由橘乃ちゃん、体力無いんじゃない?そんなんじゃ、老後に困るよ?」
「夏帆って、今から老後の事を考えてるの?気が早く無いかしら?」
 確かに言う事には一理あるが、老後の健康を心配する女子校生など、そうは居ないだろう。
「そ、そうかな?えっと、ほら!子供を産む時とか、体力が必要じゃない?」
「……な、夏帆って、もう結婚願望があるのね。そうは見えないのに。」
「あ、いや、別にそういう訳じゃ!」
 何故だか耳の離せない会話が始まる。周りを見ると、シンシア達もそこはかとなく興味ありそうに見ていた。
ー結婚、ねぇ……。精神年齢がまだ新卒レベルの俺には、よく分からん物だ。ー
 他人同士をくっ付け、挙句の果てにはハッピーエンドまで持ってこうとしていた人間とは、とても思えない程に、結婚に対するイメージが良くない雄貴。
ー束縛とか制限とか、赤の他人がずっと同じ空間に居るとか、俺には耐えられない気がするな。そういう意味では、前はモテなくて万々歳だったよな。ー
 そんな事を考えながら、夏帆に目を向ける。
「な、何?」
「いや、俺には結婚とか、まだまだ考えられないなぁと思ってね。夏帆さんは、何か理想の結婚生活とか、相手とか居るのか?」
 雄貴の視線に聡く気が付いた夏帆。見てるのは自分だけでは無いが、焦点を当てられてしまったので、素直に思ってる事を口にする。
「ふぇ!?り、理想の相手!?」
「え、いや、何かマズかった?……あ、もしかして。」
「な、何?」
 雄貴がしたり顔で近付いた為、その距離感に頬を赤く染める夏帆。
「悠人を意識してるとか?」
 夏帆の耳元に口を寄せて、コソッと囁く。そうなのであれば、雄貴にとってありがいた事この上ない。
「え。」
 その途端、本当に何を言ってるのか、分からないといった感じで、キョトンとする。
「え?違った?」
 予想を違えてしまい、素直に驚いてしまう。最近はそれなりに悠人と話していた気がしたのだが、まだ時期尚早であったらしい。
 考えてみれば、夏帆の好感度を測る目安の抱き着きも、まだ悠人にはしてない様な気がする。
「アンタ…。」
 夏帆の隣に座っており、雄貴の言葉が聞こえた由橘乃が、呆れた視線を向けてくる。
「えっと…物凄く呆れた視線を向けてます?」
 視線に耐え切れなくなり、由橘乃に聞いてみる。
「気の所為じゃない?」
「そ、そう?なら良いんだけど…。」
 すると、即答でキッパリと否定されてしまい、これ以上の追及は出来ない状態になってしまう。
「えっと、で、何の話だっけか?」
「安曇さんの体力が無いって話だぞ。この中では、一番へばってるからな。」
 話が途絶えてしまって、首を傾げた雄貴の疑問に、悠人が答えてくれる。
「悪かったわね!」
「あぁ、そう言えばそうだった。毎朝走るなら、付き合うよ?」
「あ〜、う〜ん、そこまで言うなら、少し考えるわ。」
 流石に体力の無さを実感したのか、やけに素直に雄貴の言葉に頷く由橘乃。
「最近は、色々と忙しくて朝に走れて無かったから、安曇さんが走るなら丁度良い機会だよ。」
「アンタがこれ以上、体力を付けてどうするのよ。ただでさえ、体力が有り余ってるのに。」
「う〜ん、まぁ、気分的なものかな。それに、体を動かせば、学校に行った時に完全に目が覚めてるからね。特に悠人。君は走って目を覚ましてから、学校に行くべきなんじゃ?」
「うぐっ。俺は別に良いんだよ。勉強なんかしたって…いや、何でもない。」
 何かを言いかけて、口を噤む悠人。そこを追及しても、どうせはぐらかされるだけと知っている雄貴は、流す事にする。
「そうか?まぁ兎も角、悠人も一緒にどう?」
 ここで誘って、あわよくば悠人と由橘乃と仲良くなってくれれば、万々歳であるが、それは淡い期待以下の、ちょっとした思いである。
「いや、俺は遠慮しとく。2人きりで、仲良く走ってくれ。」
「……2人きり。」
 思わずといった様子で、ボソッと悠人の言葉を反芻する由橘乃。鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
「ん?安曇さん何か言った?」
「な、何でもないわ!気にしないで!」
 微かにしか聞こえなかったので、雄貴が聞き返したところ、顔を真っ赤にして誤魔化す由橘乃。
「…?ま、いっか。んじゃ、旅行中は大変だろうから、戻ってから走ろう。」
「う、うん、そうね。」
 何だか妙な様子の由橘乃に首を傾げつつ、雄貴は言う。
 こんな感じに他愛ない会話を続けながら、一行は帰路に着くのだった。
 移動には、福地が運転するワゴンが使用された。
「いや〜、やっぱ東京には無い景色ばっかで、良かったですね。」
「そうですね。海も木々もとても綺麗でした。」
「サトウキビジュースだっけ?あれ、結構癖になったね。」
 雄貴の言葉に頷きながら、良い表情で言うシンシアと咲。まだ1日目だが、来て良かったと思える、そんな時間であった証拠だろう。
「ガマは兎も角、他は凄いところばっかりだったね。」
 暗闇から脱した夏帆は、すっかり元気を取り戻して、普段見られない観光地に大興奮であった。
 震えながら、雄貴に引っ付いてた人間とは、同一人物とは思えないほどのはしゃぎっぷりに、全員が目を丸くする程だ。
「あれだけはしゃいで、良くまだ元気ね。私はもう、疲れちゃったわ。」
「由橘乃ちゃん、体力無いんじゃない?そんなんじゃ、老後に困るよ?」
「夏帆って、今から老後の事を考えてるの?気が早く無いかしら?」
 確かに言う事には一理あるが、老後の健康を心配する女子校生など、そうは居ないだろう。
「そ、そうかな?えっと、ほら!子供を産む時とか、体力が必要じゃない?」
「……な、夏帆って、もう結婚願望があるのね。そうは見えないのに。」
「あ、いや、別にそういう訳じゃ!」
 何故だか耳の離せない会話が始まる。周りを見ると、シンシア達もそこはかとなく興味ありそうに見ていた。
ー結婚、ねぇ……。精神年齢がまだ新卒レベルの俺には、よく分からん物だ。ー
 他人同士をくっ付け、挙句の果てにはハッピーエンドまで持ってこうとしていた人間とは、とても思えない程に、結婚に対するイメージが良くない雄貴。
ー束縛とか制限とか、赤の他人がずっと同じ空間に居るとか、俺には耐えられない気がするな。そういう意味では、前はモテなくて万々歳だったよな。ー
 そんな事を考えながら、夏帆に目を向ける。
「な、何?」
「いや、俺には結婚とか、まだまだ考えられないなぁと思ってね。夏帆さんは、何か理想の結婚生活とか、相手とか居るのか?」
 雄貴の視線に聡く気が付いた夏帆。見てるのは自分だけでは無いが、焦点を当てられてしまったので、素直に思ってる事を口にする。
「ふぇ!?り、理想の相手!?」
「え、いや、何かマズかった?……あ、もしかして。」
「な、何?」
 雄貴がしたり顔で近付いた為、その距離感に頬を赤く染める夏帆。
「悠人を意識してるとか?」
 夏帆の耳元に口を寄せて、コソッと囁く。そうなのであれば、雄貴にとってありがいた事この上ない。
「え。」
 その途端、本当に何を言ってるのか、分からないといった感じで、キョトンとする。
「え?違った?」
 予想を違えてしまい、素直に驚いてしまう。最近はそれなりに悠人と話していた気がしたのだが、まだ時期尚早であったらしい。
 考えてみれば、夏帆の好感度を測る目安の抱き着きも、まだ悠人にはしてない様な気がする。
「アンタ…。」
 夏帆の隣に座っており、雄貴の言葉が聞こえた由橘乃が、呆れた視線を向けてくる。
「えっと…物凄く呆れた視線を向けてます?」
 視線に耐え切れなくなり、由橘乃に聞いてみる。
「気の所為じゃない?」
「そ、そう?なら良いんだけど…。」
 すると、即答でキッパリと否定されてしまい、これ以上の追及は出来ない状態になってしまう。
「えっと、で、何の話だっけか?」
「安曇さんの体力が無いって話だぞ。この中では、一番へばってるからな。」
 話が途絶えてしまって、首を傾げた雄貴の疑問に、悠人が答えてくれる。
「悪かったわね!」
「あぁ、そう言えばそうだった。毎朝走るなら、付き合うよ?」
「あ〜、う〜ん、そこまで言うなら、少し考えるわ。」
 流石に体力の無さを実感したのか、やけに素直に雄貴の言葉に頷く由橘乃。
「最近は、色々と忙しくて朝に走れて無かったから、安曇さんが走るなら丁度良い機会だよ。」
「アンタがこれ以上、体力を付けてどうするのよ。ただでさえ、体力が有り余ってるのに。」
「う〜ん、まぁ、気分的なものかな。それに、体を動かせば、学校に行った時に完全に目が覚めてるからね。特に悠人。君は走って目を覚ましてから、学校に行くべきなんじゃ?」
「うぐっ。俺は別に良いんだよ。勉強なんかしたって…いや、何でもない。」
 何かを言いかけて、口を噤む悠人。そこを追及しても、どうせはぐらかされるだけと知っている雄貴は、流す事にする。
「そうか?まぁ兎も角、悠人も一緒にどう?」
 ここで誘って、あわよくば悠人と由橘乃と仲良くなってくれれば、万々歳であるが、それは淡い期待以下の、ちょっとした思いである。
「いや、俺は遠慮しとく。2人きりで、仲良く走ってくれ。」
「……2人きり。」
 思わずといった様子で、ボソッと悠人の言葉を反芻する由橘乃。鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
「ん?安曇さん何か言った?」
「な、何でもないわ!気にしないで!」
 微かにしか聞こえなかったので、雄貴が聞き返したところ、顔を真っ赤にして誤魔化す由橘乃。
「…?ま、いっか。んじゃ、旅行中は大変だろうから、戻ってから走ろう。」
「う、うん、そうね。」
 何だか妙な様子の由橘乃に首を傾げつつ、雄貴は言う。
 こんな感じに他愛ない会話を続けながら、一行は帰路に着くのだった。
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