バッドエンドは全力でぶち壊す!

血迷ったトモ

第43話 恐怖症

「―――と、言う訳で、これはボクの超能力の、ワーキャットの影響なの。」

「なるほど。把握しました。」

 ダイニングに全員を呼び付け、始めた咲の自己紹介。その中で、咲の猫耳が、趣味で着けてる物ではなく、超能力の残滓である事の説明を受け、納得した雄貴。

ーしっかし、ボクっ娘で獣耳っ娘とは、中々に業が深いな…。ー

 心の奥底で、実に失礼な事を思いながら頷く。

「両親と来てたので、連絡して、もう暫くここに居る事にしました。皆、よろしくね。」

 ぺこりと頭を下げる咲。普通に良い人っぽいので、雄貴としても大歓迎である。

 口々に『よろしく』と言いながら、咲を受け入れるのだった。

「さて、では皆さんも揃って、咲さんの自己紹介も終わった事ですし、そろそろお昼ご飯にしましょう。」

 こうして新たな仲間が加わり、女性比率が上がった一行は、昼食を摂るのだった。


「あ〜、少し食べ過ぎたかな。」

「前から思ってたけど、やっぱ雄貴君は見かけによらず、大食漢だね。」

 昼食はソーキそばだったが、トッピングとして余計に用意されていたソーキを含め、雄貴は5人前は軽い平らげていた。

 夏帆は単純に驚いてるようだった。

「見ていて、清々しいくらいだったわ。体調は大丈夫なの?」

「うん、問題無いよ。今日は少し能力使ったし、朝ご飯も食べてなかったから、寧ろ丁度良いぐらい。」

 由橘乃の言葉に頷く。

4年前の事件において、身体能力が上昇した事により、それに比例して食べる量も増えた。なので、普段はなるべくカロリー消費を少なくする為、動きを少なするように気を付けている。

 そうでもしないと、食費がとんでもなく嵩んで、破産してしまう。

 特に、犯人確保後はお腹が空いてしょうがないので、警察に経費として請求しようかと、本気で悩むレベルであった。

「俺は胸焼けがしたぞ。よく骨付肉を大量に食えるな…。」

 雄貴の隣に座っていた悠人は、呆れた顔をしていた。

「育ち盛りだからな。」

「足りないかと思って、少し冷や冷やしました。」

 胸を張っている雄貴に、ホッと胸を撫で下ろしているシンシア。彼女は、雄貴が結構大食いである事を知っているたので、予め多めに用意してくれていたようだ。

「わざわざ気を遣っていただいて、ありがとうございます。」

 こうして気を遣ってもえるのは、嬉しい限りである。

「やっぱ雄貴…。」

「ん?どーした?」

 雄貴とシンシアのやり取りを見て、何かを言いたげな悠人。何か変な事でもあったのかと、首を傾げる。

「いや、何でもない。」

 悠人は首を振った。一体、何を言いたかったのだろうか。

「そ、そうか?えっと、さて、昼食も終えた事だし、何しましょうか。」

 これ以上の追及は、何か墓穴を掘りそうな予感がした為、大人しく引き下がり、周りを見渡したながら言う。

 折角沖縄に来たのなら、こちらでしか出来ない事をしたいのだが。

 すると、そんな雄貴の意を汲んでくれたのか、シンシアが口を開く。

「それなら、この近くにガマがあるので、皆さんで行きませんか?」

「あ〜、洞窟っすね。普段、東京では見られないんで、自分は賛成です。」

 そういった、あんまり普段体験出来ない事は、大歓迎であるので、即答する雄貴。

「へ、へぇ〜、洞窟…い、良いんじゃ無いかな?あははは。」

「あ〜、夏帆さん?何か近くね?」

 洞窟と聞いた途端、顔色を悪くして、雄貴にピッタリと寄り添って来る夏帆に、目をぱちくりさせる。

ーそう言えば、夏帆さんは暗い所が…あぁ、そういう事か。ー

 確か夏帆は小さい頃、実家の納戸にお仕置として何回か閉じ込められ、それっきり暗くて狭い所が苦手になったのだ。

 なので、洞窟なんて、苦手な場所代表みたいな感じだろう。

「そ、そうかな。あは、あはは…。」

「…いや、ま、いっか。それより、皆はどうする?」

 わざわざ夏帆のウィークポイントを、この場の全員に教える必要も無いので、取り敢えずはスルーし、他の人達の意見を聞く。

「俺も参加するかな。」

「私も行きます。」

「ボクも行こうかな。」

 すると、全員一致で、ガマへ行く事が決定になる。隣をふと見ると、夏帆は青い顔をしており、何とも哀れに見えてくる。

「…苦手なら、無理する事は無いんだぞ?」

 仕方ないので、助け舟を出してやる。無理して洞窟内で動けなくなっても、どうしてやる事も出来ないのだ。

 コソッと耳元で囁くと、恐る恐るといった表情で、こちらを見てきた。

「な、何の事かな?」

 夏帆は、こっそりと耳打ち程度の大きさで、聞き返してくる。どうやらシラを切るらしい。痩せ我慢など、しなくても良いだろうに。

「いや、見た感じ、暗くて狭いところ、無理なんでしょ?」

「そ、そんな事、無いもん。それに、もし苦手だったとしても、せっかくの機会なんだから、みんなと一緒に行きたいもん…。」

「…そっか。ま、何をとは言わないけど、頼ってくれて良いからさ。」

 そこまで言うのなら、もう無理に止めさせる訳にもいかない。

 だが、怖い事には変わりないだろうからと、雄貴は深く追求はしないものの、手は差し伸べてやる。

「……ありがとう。」

「お、おう。」

 ひっつきながら小声で礼を言う夏帆に、思わず照れてしまう雄貴であった。

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