バッドエンドは全力でぶち壊す!
第38話 海だー!!
 2時間と少しのフライトで、昼前に空港に到着した一行は、そのままシンシアの父が持つ別荘まで、車で向かった。
「うっみだ〜!!」
「きゃっ!い、いきなり抱き着いて来ないでよ!」
「あはは〜。ごめんごめん!」
 別荘のダイニングからの眺めに、興奮した夏帆が叫びながら由橘乃に抱き着いた。
ー可愛い女の子同士のそういう姿は、とても良い眺めだな…。ー
「…。」
 自身が変な事を考えているのを自覚した雄貴は、慌てて思考をリセットして、窓の外に目を向ける。
 少し小高い所に別荘が作られてるので、手前は緑、奥の方に白い砂浜と青い海のコントラストが見える、絶景としか言いようの無いものだった。
ー全てが終わったら、こんな所で1ヶ月程、のんびりと過ごしたいもんだ。ま、どの道この世界に残るなら、高校生活はあるし、戻るなら戻るで、結局高3の自分自身の肉体だろうし、ゆっくりは出来そうに無いがな…。ー
 雄貴自身、何故この世界の少年の肉体に憑依し、更に、『何でも破壊する能力』なんてもの与えられたのか、未だに分かっていない。
 だが、何の説明も無く放り込まれたのだ。なら、雄貴のやる事はただ一つ。
ーどちらにせよ、俺のやりたいように、好き勝手にやってやるさ。つー事で、少し散歩でも行くとすっか。ー
 プライベートジェットで、結構リラックス出来たとはいえ、普段はあまり乗らない飛行機に乗ったのだ。少し肩が凝り固まってしまった。
「先輩。」
「どうかしましたか?」
「少し周囲を散策したいのですが、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。先行して来て頂いていたメイド達に、既に部屋や着替え等は、整えてもらってますので、お昼ご飯までは自由にして頂いて大丈夫です。」
「えっと、今が10時55分なので、じゃあ少なくとも11時半くらいには戻ります。もし何か不測の事態が発生したら、連絡しますね。」
「分かりました。」
「では行ってきます。」
「はい、行ってらっしゃい。」
 手短にシンシアに許可を取り、散策に赴こうとする。
「「「…。」」」
 だがその様子を、不思議そうな顔して見ている者達が居た。
「え?どうかした?」
「いや何か、今のやり取りが、新婚の夫婦に見えたんだが…。」
「…はい?」
 錆び付いた機械のように、ギギっと首を傾ける雄貴。欠片も考えていなかった事を言われ、全く理解が及んでいないのだ。
「うん、私もそう見えたよ。学校で話してるの見た事が無いけど、実は仲良かったりするの?」
「…いや、まぁ、中等部の頃に、少し話したくらいだよ。ですよね、先輩?」
 自分の過去なんて、今後のストーリー展開に一切関係無いのだ。軽く誤魔化そうと頭を回転させ、そう言って同意を求める。
「…。」
「先輩?」
 問いかけに答えないシンシアを不審に思い、チラッと様子を見ると、顔を真っ赤にして固まってしまっていた。
「え、大丈夫ですか?」
「は、はい?どうかしましたか?」
 ボーッとしているシンシアの肩を軽く叩き、正気に戻す。どうやら話しを全く聞いてないようだった。
「いえ、何でもありません。では、出てきます。」
「え、あ、はい、分かりました。」
 追求を逃れるのに、これ以上に良いタイミングは無いだろう。何故だか顔を赤くしているシンシアにそう言い残し、さっさと散策に出るのだった。
「う〜ん…。やっぱりこっちは東京とは違うよな。」
 軽く伸びをしながら、周囲に草木が生い茂る道を、ゆっくりと歩いて行く。普段は、音楽を聞きながら道を歩くが、今回ばかりは、イヤホンを着けずに、周囲の自然音に耳を傾ける。
 程よく風が吹いており、葉が擦れる音が心地良い。
 今、雄貴が歩いている道は、別荘から続いている下り坂になっており、下は海まで続いているようだ。
 この時期だと、既に海水浴は解禁となっていて、泳げはするだろうが、あいにくと水着は持ち合わせて無いので、泳ぎはしないが。
「さて、この後の展開はどうなるのかね?」
 歩きながら呟く。
 この旅行は、本来ならストーリーには無い、想定外の展開である。ここで悠人とヒロインズ達の距離が近付いてくれれば良いが、悉く失敗を重ねている為、もはや偶然を願う他無い。
ーはぁ…。気は重いが、一旦は放置だな。元々、彼女いない歴年齢の俺が、幾ら登場人物達の情報に精通しているとはいえ、意図的に恋仲にしようだなんて、虫が良すぎたんだ。ここからは、ただ手助けする方向で行くか。ー
 全くもってその通りである。
 『ウラデリ』の登場人物と、全く同じ性格や容姿、立場の人間だったとしても、この世界の人達は、プログラム通りに動く、ゲームキャラでは無いのだ。利用して100パーセント雄貴の思い通りに出来る訳が無い。
「あ〜あ。結局はなるようになるって事か…。」
 それなりに頑張って練ってきた物が、一瞬で瓦解したのだ。溜息のひとつでもつきたくなるというものだろう。
「…ん?」
 落ち込みながら呟いた雄貴の耳に、人の声のような音が入り、思わず立ち止まる。
 そして、道端の茂みに目をやると、ガサガサと音がして、何かがかき分けてやって来るようだった。
「うっみだ〜!!」
「きゃっ!い、いきなり抱き着いて来ないでよ!」
「あはは〜。ごめんごめん!」
 別荘のダイニングからの眺めに、興奮した夏帆が叫びながら由橘乃に抱き着いた。
ー可愛い女の子同士のそういう姿は、とても良い眺めだな…。ー
「…。」
 自身が変な事を考えているのを自覚した雄貴は、慌てて思考をリセットして、窓の外に目を向ける。
 少し小高い所に別荘が作られてるので、手前は緑、奥の方に白い砂浜と青い海のコントラストが見える、絶景としか言いようの無いものだった。
ー全てが終わったら、こんな所で1ヶ月程、のんびりと過ごしたいもんだ。ま、どの道この世界に残るなら、高校生活はあるし、戻るなら戻るで、結局高3の自分自身の肉体だろうし、ゆっくりは出来そうに無いがな…。ー
 雄貴自身、何故この世界の少年の肉体に憑依し、更に、『何でも破壊する能力』なんてもの与えられたのか、未だに分かっていない。
 だが、何の説明も無く放り込まれたのだ。なら、雄貴のやる事はただ一つ。
ーどちらにせよ、俺のやりたいように、好き勝手にやってやるさ。つー事で、少し散歩でも行くとすっか。ー
 プライベートジェットで、結構リラックス出来たとはいえ、普段はあまり乗らない飛行機に乗ったのだ。少し肩が凝り固まってしまった。
「先輩。」
「どうかしましたか?」
「少し周囲を散策したいのですが、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。先行して来て頂いていたメイド達に、既に部屋や着替え等は、整えてもらってますので、お昼ご飯までは自由にして頂いて大丈夫です。」
「えっと、今が10時55分なので、じゃあ少なくとも11時半くらいには戻ります。もし何か不測の事態が発生したら、連絡しますね。」
「分かりました。」
「では行ってきます。」
「はい、行ってらっしゃい。」
 手短にシンシアに許可を取り、散策に赴こうとする。
「「「…。」」」
 だがその様子を、不思議そうな顔して見ている者達が居た。
「え?どうかした?」
「いや何か、今のやり取りが、新婚の夫婦に見えたんだが…。」
「…はい?」
 錆び付いた機械のように、ギギっと首を傾ける雄貴。欠片も考えていなかった事を言われ、全く理解が及んでいないのだ。
「うん、私もそう見えたよ。学校で話してるの見た事が無いけど、実は仲良かったりするの?」
「…いや、まぁ、中等部の頃に、少し話したくらいだよ。ですよね、先輩?」
 自分の過去なんて、今後のストーリー展開に一切関係無いのだ。軽く誤魔化そうと頭を回転させ、そう言って同意を求める。
「…。」
「先輩?」
 問いかけに答えないシンシアを不審に思い、チラッと様子を見ると、顔を真っ赤にして固まってしまっていた。
「え、大丈夫ですか?」
「は、はい?どうかしましたか?」
 ボーッとしているシンシアの肩を軽く叩き、正気に戻す。どうやら話しを全く聞いてないようだった。
「いえ、何でもありません。では、出てきます。」
「え、あ、はい、分かりました。」
 追求を逃れるのに、これ以上に良いタイミングは無いだろう。何故だか顔を赤くしているシンシアにそう言い残し、さっさと散策に出るのだった。
「う〜ん…。やっぱりこっちは東京とは違うよな。」
 軽く伸びをしながら、周囲に草木が生い茂る道を、ゆっくりと歩いて行く。普段は、音楽を聞きながら道を歩くが、今回ばかりは、イヤホンを着けずに、周囲の自然音に耳を傾ける。
 程よく風が吹いており、葉が擦れる音が心地良い。
 今、雄貴が歩いている道は、別荘から続いている下り坂になっており、下は海まで続いているようだ。
 この時期だと、既に海水浴は解禁となっていて、泳げはするだろうが、あいにくと水着は持ち合わせて無いので、泳ぎはしないが。
「さて、この後の展開はどうなるのかね?」
 歩きながら呟く。
 この旅行は、本来ならストーリーには無い、想定外の展開である。ここで悠人とヒロインズ達の距離が近付いてくれれば良いが、悉く失敗を重ねている為、もはや偶然を願う他無い。
ーはぁ…。気は重いが、一旦は放置だな。元々、彼女いない歴年齢の俺が、幾ら登場人物達の情報に精通しているとはいえ、意図的に恋仲にしようだなんて、虫が良すぎたんだ。ここからは、ただ手助けする方向で行くか。ー
 全くもってその通りである。
 『ウラデリ』の登場人物と、全く同じ性格や容姿、立場の人間だったとしても、この世界の人達は、プログラム通りに動く、ゲームキャラでは無いのだ。利用して100パーセント雄貴の思い通りに出来る訳が無い。
「あ〜あ。結局はなるようになるって事か…。」
 それなりに頑張って練ってきた物が、一瞬で瓦解したのだ。溜息のひとつでもつきたくなるというものだろう。
「…ん?」
 落ち込みながら呟いた雄貴の耳に、人の声のような音が入り、思わず立ち止まる。
 そして、道端の茂みに目をやると、ガサガサと音がして、何かがかき分けてやって来るようだった。
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