バッドエンドは全力でぶち壊す!

血迷ったトモ

第26話 種目選び

 4月18日木曜日。由橘乃との模擬戦から数日経ち、変な噂が流れる事もなく平穏に過ごしていた。

「う〜ん、懐かしいなぁ。」

 LHRロングホームルームで配られた資料に目を通しながら、雄貴は呟く。

 手にした資料には、どでかく『体育祭について (能力使用禁止)』と書かれていた。

「懐かしいってどういう意味だ?」

「あぁ、いや、言葉の綾というか、まぁ色々とあるんだよ。さ、それよりも、前向かないと、先生に雷落とされるぞ。」

「それはまずいな。」

 先生を出しにして、失言を誤魔化そうとするが、どうやら上手くいった様である。

 我らがAクラスの担任は、鹿島美香かしまみかという、新任の22歳の女性である。彼女は、Sランクの超能力者であり、文字通り雷を落とす、武甕槌神たけみかづちのかみという能力を操り、数多の敵を黒焦げにして来たという。

 もう正直、このAクラスだけで小国1つ落とせるのでは無いだろうかという戦力が集まっている。

 単騎で一個旅団位なら相手出来そうな雄貴。川や海の無尽蔵の水を操り、環境を破壊しつつ、街一つなら十数分で滅ぼせる由橘乃。そして全てを雷で焼き払う美香。

 他にも幾人か戦闘向きの能力を持つ者がおり、それぞれ1人で100人分位の働きが出来るのだ。

 恐ろしい限りである。

「―という訳で、体育祭の種目決めを行います。最低でも、1人2つの種目に参加して下さい。」

『はい。』

 話を真面目に聞かないと、マジモンの雷を落とされかねない。

 なので生徒は皆、必死に話を聞いているのだ。

ーま、そんな事で雷なんて落としゃしないんだけどな。すっげぇ優しい先生なんだから。ー

 まだ関わり始めてから、そんなに経ってないのに、何故そんな事を知っているかというと、それは美香がサブヒロインの1人であるからだ。

 他にもサブヒロインが居る中で、最年長の彼女は、攻略が後回しにされがちだが、高校生には無い包容力に、やられてしまった紳士達は多い筈である。

 更に、大人ならではの、幅広いシチュエーションがあり、結構面白い√であったと、雄貴は思う。

「んで、雄貴はどうすんだ?」

 決める為の自由時間となったのか、後ろを向いて話しかけてくる悠人。

ー俺では無く、今回はヤツに話しかけてもらわないとな。さて、どうすっか。ー

 体育祭は、とあるヒロインの攻略には、必要不可欠なイベントである。その為、雄貴は裏で色々と手を回さなければならないのだ。

「ん〜、どうしようか。俺としては、体力を使い果たすような競技は、遠慮したいところだけど。」

 正確には、無尽蔵にある体力が露見せず、更には、超能力を使わない状態での、素の身体能力を隠しつつ、大勢の陰に隠れらる競技が良いのだ。

 そうすると、玉入れや大縄跳び、綱引き等、1人の力だけで全てが決しないような、そういう競技が良かった。

ーだが、な。はぁ〜。ー

 そうは問屋が卸さないとばかりに、嵐が到来するのを感知する。その為、そそくさと逃げようとするが、狭い教室の中ではどうしようもないと悟り、大人しく座ったままになる。

「どうした?急に悲痛な顔して。腹でも痛いんか?」

 急に様子が変わった雄貴を心配したのか、そう声をかけてくるが、それに答える前に、嵐の直撃を受けてしまった。

「もう出たい競技は決まった〜?私、体育祭の実行委員会だから、集計してるんだけど。」

 少し小さめな身長の、赤みがかった髪を長く伸ばした、少し幼さを感じさせる少女が、笑顔で話しかけてくる。変態紳士諸君が好きそうな外見だ。

「ん、夏帆・・さんか。まだ決まってないよ。特にこっちの悠人が。」

 メインヒロインの3人目である、百田夏帆が嵐の正体であった。

 彼女の接近には、雄貴は気付いてないフリをしていたので、わざとらしく顔を上げながら、生贄に悠人を差し出す。

「え、ど、どういう事なんだ?」

 急に話に引きずり込まれた悠人は、今までで一番驚いた顔をする。

 この体育祭において、夏帆は大活躍するヒロインであり、ここが攻略するイベントの中で、最も重要な時点であった。

 更に、暴走機関車と化した夏帆の前では、あらゆる思惑は無駄となる為、もう強引に悠人を押し付けよう作戦に出たのだった。

「え、雄貴君はもう決めちゃったの?」

「ま、まだだけど。目星は付いてるから、取り敢えずは大丈夫かな。」

「例えばどんなの?」

ーやべぇ!やっぱり・・・・目を付けられてる!ー

 体育祭イベントにおいて夏帆は、運動神経が良い者に目を付けて、話しかけてくるのだが、本来なら悠人vs由橘乃を見て、悠人に声をかける筈なのだ。

 超人的な動きをしてる最中でも、身体をコントロールするのは、素の脳である為、身体能力強化系の超能力者でそれなりの動きが出来る者は、素の運動神経が良い傾向にあった。

「玉入れとか、綱引きとかかな。」

「えぇ〜、せっかく動けそうなのに勿体無い!リレーとか出てよ〜!」

「あ〜、俺よりも、悠人の方が動けるんじゃないか?どっちかと言えば俺、インドア派なんだよ。」

「おいおい。俺も運動よりも、読書が好きなインドア派だぞ?」

「もう!悠人君はあんまりまだ分からないけど、雄貴君はプールの時に見た限りだと、凄い筋肉だったよね?」

 どうやら夏帆には、少なくとも去年の夏から目を付けられてたようだ。

 有事に備えて、普段から筋トレ道具を買い漁って、励んでたのが不味かったのか

「え、あ、男性の身体に、そんなに興味がお有りとは。あは、あはははは。」

 それよりも、ガッツリ見られていた事に衝撃を受ける。

「ちょ、ちょっと引かないでよ!」

 実は夏帆は、筋肉フェチだったりする。
 脱ぐと結構凄い悠人にも、その辺がきっかけで興味を持ったりするのだ。

「いや、まぁね。襲われないか心配だわ。なぁ悠人。」

「あぁ、そうだな。今だって、捲った雄貴の腕とか、少し空いてる胸元にも、視線を大分向けてるぞ?」

「え、ま、マジで?」

 悠人に賛同を求めようとしたところ、衝撃的な事実が告げられ、雄貴は愕然としてしまった。

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