バッドエンドは全力でぶち壊す!
第25話 一段落
「なるほど。つまりは、雄貴君には何の咎も無いのですね。漸く理解出来ました。」
 雄貴と、途中から助け舟を入れた由橘乃の説得により、10分後にはシンシアの怒気は収まった。
「理解してもらえて、助かりました。ところで先輩は、どうしていらっしゃったんですか?生徒会の仕事があるのでは。」
「えっと、それはその、雄貴君が模擬戦すると聞き、しんぱ、あ、いえ、新入生がいきなり模擬戦は珍しいなと思ったので、行き過ぎが無いように監視をしようかと思いまして!」
 何かを言いかけるが、直ぐに首を振って、言い直す。
「それについては、ご迷惑をお掛けしました。すみません、副会長。模擬戦をやろうと言い出したのは、私ですから。」
 シンシアの言葉に、深々と頭を下げながら謝ったのは、由橘乃である。一時の怒りという感情に飲まれて、暴走したのは自身であるので、少し罪悪感があるのだろうか。
「あ、別に責めている訳ではありませんよ?これも生徒会としての仕事ですし、念の為に来ただけですから。」
 まさか個人的な理由で来たとも言えずに、建前を言う。
「さ、さて、そろそろあがりましょうか。ちょっと着替えたいので…。」
 シンシアが自分に気を遣ったせいで、結果として妙な空気感になってしまったので、払拭しようとする。
「確かに凄い泥汚れだな。まぁ何はともあれお疲れさん。」
 言いながら、お茶を渡してくる悠人。気の利く友人である。
「お、ありがとう。…あ〜、やっぱりお茶は美味いな〜。」
 手渡されたのは、やっほ〜いお茶などという巫山戯た名前だが、味だけは普通の美味しいお茶である。お茶だけは、どんな巫山戯た名前であろうと関係無く、好んで飲んでいた。
「ん?飲む?」
「あ、ありがとう。にしてもアンタ、凄い美味しそうにお茶を飲むわね。好きなの?」
「ジジくさいとは思うけど、そうなんだよね。」
 由橘乃にお茶を手渡しながら、苦笑いする。昔から、『好きな飲み物を選んで〜』と言われて、お茶を選択する度に、『え?それで良いの?』って顔をされるのだから、もう慣れっこである。
「あ、アンタって、こういうの気にならない人なの?」
「こういうの?」
「やっぱ何でも無いわ。…私が意識し過ぎなだけかしら (ボソッ)。」
 手にしたお茶を、少し頬を赤くしながらじっと見ていた由橘乃は、首を横に振って、何かを振り払ってから、意を決したように覚悟を決めた顔で、ペットボトルに口をつける。
ー何を顔を赤くして…あれ?俺今、普通に口付つた物を、安曇さんに渡したのか?それって配慮が欠けてね!?ただの間接キスじゃん!ー
 今更気付いてももう遅い。由橘乃は既に、口をつけてお茶を飲んでしまった後であった。
ーさっきの妙な間は、それが分かってたから止まってたって事だよな?なら飲まんで良いのに!ー
 雄貴は顔を赤くしながら、そっぽを向く。飲んでる様を眺めるのは、何か人として駄目な気がしてきた。
「何かお2人の雰囲気が…あ、飲み口。」
 ここ1人、気が付いてしまった者が居たが、幸いな事に騒ぎ立てる事も無かった。ただ何故か羨望の眼差しを由橘乃に送っている。
「…ありがとう。」
「あ、あぁ。」
 またしても変な空気感になってしまう。
「一息ついたところで、そろそろ帰るとしよう。」
 だが、一見気遣いとは無縁そうな悠人から、助け舟が出される。こういう気遣いが出来る人間だから、主人公として大モテしたのだろうか。
「そうだな。あ、先輩。」
「はい、何ですか?」
「演習場、結構えぐい事になってるので、整備とかどうしましょうか?」
 指差しながら聞く。その言葉に、この場の全員が見ると、そこは荒れ果てた演習場が広がっていた。
 地面は深く広く抉れ、泥濘はぐちゃぐちゃにされており、何とも酷い状況であった。このままでは、後の使用者が泣く事になるだろう。
「た、確かにこれは凄いですね。ですが、整備は学園の仕事なので、私の方から申請しておきます。」
「ありがとうございます。」
 少し引いた様子のシンシアから、有難い提案がされる。これを自分達だけで整備しろとか言われた日には、流石に絶望感が半端ないだろう。
「なら、今日は帰ろうか。2人ともお疲れさん。」
 悠人の言葉により、今回はここでお開きとなったのだった。
「はぁ〜、疲れたぁ〜。」
「何か、いざこざに巻き込んだみたいで、すまんな。」
 更衣室で、深くため息をついていたら、悠人から急に謝られた。
「いやいや。失言したのは俺だから。弾丸を込めたのは悠人かもしれないけど、実際に引き金を引いたのは俺だよ。」
「それは何の慰めにもなってないぞ?」
「ははは。まぁ、俺も久々に思いっきり身体を動かせて、それなりに満足したから、この話はもうお終いな。」
「そうか。分かった。…ところで、雄貴は副会長と親しいのか?」
 何やら神妙な顔つきで聞いてくる。
「ん?どうしてそんな事を聞くんだ?先輩の事、女性として意識してるのか?」
「いや、違う。何となくそう感じたから聞いた。ただの興味本位だ。」
「ほほう?なら答えてやろう。俺は別に、先輩とは仲良くも何とも無いぞ。話す事も稀だし。」
ー学校では。ー
 心の中で意味の無い注釈を入れながら、真っ赤な嘘をつく。下手したら、この学園で最も仲が良いと言っても過言では無いのが、シンシアである。
 こんな事を言うのは、勿論、悠人とシンシア、その他諸々のヒロインズをくっ付ける為の方便であるが、チクリと、ほんの一瞬だけ、心に走った痛みに、雄貴は気が付かなかった。
 雄貴と、途中から助け舟を入れた由橘乃の説得により、10分後にはシンシアの怒気は収まった。
「理解してもらえて、助かりました。ところで先輩は、どうしていらっしゃったんですか?生徒会の仕事があるのでは。」
「えっと、それはその、雄貴君が模擬戦すると聞き、しんぱ、あ、いえ、新入生がいきなり模擬戦は珍しいなと思ったので、行き過ぎが無いように監視をしようかと思いまして!」
 何かを言いかけるが、直ぐに首を振って、言い直す。
「それについては、ご迷惑をお掛けしました。すみません、副会長。模擬戦をやろうと言い出したのは、私ですから。」
 シンシアの言葉に、深々と頭を下げながら謝ったのは、由橘乃である。一時の怒りという感情に飲まれて、暴走したのは自身であるので、少し罪悪感があるのだろうか。
「あ、別に責めている訳ではありませんよ?これも生徒会としての仕事ですし、念の為に来ただけですから。」
 まさか個人的な理由で来たとも言えずに、建前を言う。
「さ、さて、そろそろあがりましょうか。ちょっと着替えたいので…。」
 シンシアが自分に気を遣ったせいで、結果として妙な空気感になってしまったので、払拭しようとする。
「確かに凄い泥汚れだな。まぁ何はともあれお疲れさん。」
 言いながら、お茶を渡してくる悠人。気の利く友人である。
「お、ありがとう。…あ〜、やっぱりお茶は美味いな〜。」
 手渡されたのは、やっほ〜いお茶などという巫山戯た名前だが、味だけは普通の美味しいお茶である。お茶だけは、どんな巫山戯た名前であろうと関係無く、好んで飲んでいた。
「ん?飲む?」
「あ、ありがとう。にしてもアンタ、凄い美味しそうにお茶を飲むわね。好きなの?」
「ジジくさいとは思うけど、そうなんだよね。」
 由橘乃にお茶を手渡しながら、苦笑いする。昔から、『好きな飲み物を選んで〜』と言われて、お茶を選択する度に、『え?それで良いの?』って顔をされるのだから、もう慣れっこである。
「あ、アンタって、こういうの気にならない人なの?」
「こういうの?」
「やっぱ何でも無いわ。…私が意識し過ぎなだけかしら (ボソッ)。」
 手にしたお茶を、少し頬を赤くしながらじっと見ていた由橘乃は、首を横に振って、何かを振り払ってから、意を決したように覚悟を決めた顔で、ペットボトルに口をつける。
ー何を顔を赤くして…あれ?俺今、普通に口付つた物を、安曇さんに渡したのか?それって配慮が欠けてね!?ただの間接キスじゃん!ー
 今更気付いてももう遅い。由橘乃は既に、口をつけてお茶を飲んでしまった後であった。
ーさっきの妙な間は、それが分かってたから止まってたって事だよな?なら飲まんで良いのに!ー
 雄貴は顔を赤くしながら、そっぽを向く。飲んでる様を眺めるのは、何か人として駄目な気がしてきた。
「何かお2人の雰囲気が…あ、飲み口。」
 ここ1人、気が付いてしまった者が居たが、幸いな事に騒ぎ立てる事も無かった。ただ何故か羨望の眼差しを由橘乃に送っている。
「…ありがとう。」
「あ、あぁ。」
 またしても変な空気感になってしまう。
「一息ついたところで、そろそろ帰るとしよう。」
 だが、一見気遣いとは無縁そうな悠人から、助け舟が出される。こういう気遣いが出来る人間だから、主人公として大モテしたのだろうか。
「そうだな。あ、先輩。」
「はい、何ですか?」
「演習場、結構えぐい事になってるので、整備とかどうしましょうか?」
 指差しながら聞く。その言葉に、この場の全員が見ると、そこは荒れ果てた演習場が広がっていた。
 地面は深く広く抉れ、泥濘はぐちゃぐちゃにされており、何とも酷い状況であった。このままでは、後の使用者が泣く事になるだろう。
「た、確かにこれは凄いですね。ですが、整備は学園の仕事なので、私の方から申請しておきます。」
「ありがとうございます。」
 少し引いた様子のシンシアから、有難い提案がされる。これを自分達だけで整備しろとか言われた日には、流石に絶望感が半端ないだろう。
「なら、今日は帰ろうか。2人ともお疲れさん。」
 悠人の言葉により、今回はここでお開きとなったのだった。
「はぁ〜、疲れたぁ〜。」
「何か、いざこざに巻き込んだみたいで、すまんな。」
 更衣室で、深くため息をついていたら、悠人から急に謝られた。
「いやいや。失言したのは俺だから。弾丸を込めたのは悠人かもしれないけど、実際に引き金を引いたのは俺だよ。」
「それは何の慰めにもなってないぞ?」
「ははは。まぁ、俺も久々に思いっきり身体を動かせて、それなりに満足したから、この話はもうお終いな。」
「そうか。分かった。…ところで、雄貴は副会長と親しいのか?」
 何やら神妙な顔つきで聞いてくる。
「ん?どうしてそんな事を聞くんだ?先輩の事、女性として意識してるのか?」
「いや、違う。何となくそう感じたから聞いた。ただの興味本位だ。」
「ほほう?なら答えてやろう。俺は別に、先輩とは仲良くも何とも無いぞ。話す事も稀だし。」
ー学校では。ー
 心の中で意味の無い注釈を入れながら、真っ赤な嘘をつく。下手したら、この学園で最も仲が良いと言っても過言では無いのが、シンシアである。
 こんな事を言うのは、勿論、悠人とシンシア、その他諸々のヒロインズをくっ付ける為の方便であるが、チクリと、ほんの一瞬だけ、心に走った痛みに、雄貴は気が付かなかった。
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