バッドエンドは全力でぶち壊す!

血迷ったトモ

第21話 模擬戦

「何と言うか、ドンマイ…。」

 更衣室で頭を抱える雄貴に、遠慮がちに声をかける悠人。

「くっそぉ。何で俺がこんな目に…。羽虫のように、プチッと大質量の水に押し潰される予感しかしないぞ!」

 放課後になり、恐怖の模擬戦タイムとなった。何とも手回しの良い事に、既に模擬戦に使われる競技場の使用許可を取っているらしく、逃げ出せる雰囲気では無かった。

「雄貴の超能力は何なんだ?」 

「あぁ、俺は弁慶って名前が付けられてる、身体強化系のやつだよ。一応Bランク。」

  サラッと嘘をつくが、国の超能力者リスト登録では、本当にそうなっている。つまり雄貴は、自身の超能力を誤魔化して登録したのだ。しかも成功している。

 検査の際、妙な装置 (恐らく、超能力の行使の際のエネルギーを観測する装置)を装着して、人間離れした動きをしつつ、空気中の諸々の成分を壊したので、超能力により、身体能力を強化してるように、見せられたという訳である。

 客観的に見て、どう軽く見積ったとしても、何でも破壊するという能力は、Sランクは下らない、特異な物であるという自覚があった。

 しかしそれでは目立ってしまい、NHSの排除対象者認定を受けてしまう。

 という訳で、一か八か誤魔化す事にしたのだった。そして目論見は上手く行き、身体強化系でBランクはそうは居ない為、対策課に入れられるなど、若干の特別扱いをされたが、その程度で済んだのだった。

 雄貴が能力を誤魔化す事を思い付いたのは、とある人物の影響が大きいのだが、その人物には感謝せねばならないだろう。

「弁慶って、外見に似合わず、ごっつい名前の超能力たな。怪力無双って感じか?」

「まぁね。筋力を強化して、人間離れした速さで敵を翻弄し、馬鹿げたパワーで戦闘不能に陥らせる感じだな。多分素手で、鉄の扉くらいなら破れるんじゃないかな?」

「なるほどな。俺はDランクの身体強化・・・・だから、その戦闘力は羨ましいよ。」

「そうなんだ。まぁ、力が強くても、技術が無いとお話にならない事もあるし、要は使い方次第だぞ?」

 手早く体操服に着替えながら、雑談を続ける。

「にしても、はぁ〜。まさか、初日に挙げた強い奴の内の一人と、いきなり模擬戦する事になるとは。ホントにツイてないわ。」

 着替え終わり、ロッカーに手荷物を全て押し込んだ雄貴は、ため息をつく。

「まぁ、殺される事も無いだろうし、気楽に頑張れよ。」

「他人事だと思って、言ってくれるな。元はと言えば、悠人が安曇さんの下着を見たのが原因なんだからな。」

「…見ていないぞ。」

「目が泳いでる。」

「…。」

「ま、追求はよすとするか。今はなんとしてでも、生き残らないと。」

「が、頑張れ。」

 気まずそうな悠人から激励を受けた雄貴は、重い足取りで競技場へ向かうのだった。


「遅い!何をしていたのよ!」

「ごめん。ちょっと覚悟決めてた。」

 急ぎ足で向かうと、100メートル四方位の演習場の中央で、既に由橘乃が待っていた。
 さっさと雄貴をぶちのめしたくて仕方が無いらしい。

 更に、演習場の周囲にある観客席には、チラホラと人が見受けられた。新学期早々、いきなり模擬戦が行われるという噂を聞き付けて、野次馬しに来たのだろう。

「安心して。骨の2、3本で済むように、少し手加減して上げるから。軽傷なら文句無いでしょ?」

「骨が折れたら重症なのですがそれは。」

 ただひたすらに恐ろしいプレッシャーを放っている由橘乃。もうなるべく怪我が少なくなるよう、必死に逃げ回るしか無いようだ。

「因みにアンタの超能力は?」

「俺の超能力は弁慶。一応Bランクの身体強化になる。」

「なら、思いっ切り出来るわね!」

 雄貴の言葉に、物凄く嬉しそうにしている。

「出来ねぇよ!Sランクの、それも神の名を冠する超能力とか、Bランク如きでどう対処しろと!?」

「そういえばアンタ、朝から私の超能力の事を、知ってる風な口調で話してるけど、何処まで知ってるの?」

 『そりゃ全部』というのが本来の答えだが、それだとただのストーカーか何かなので、少し言葉を選んで答える。

八坂刀売神やさかとめのかみは、荒れる海の水を、山を穿って流し、鎮めたという治水伝説がある。だから、水を操る能力だと予想してるけど…。」

 これは半分だけ正解である。

「少し違うわね。確かに川とかの水を操れるけど、水を生成して、それを武器とする事も可能よ。量は、1秒あたりに50リットル。1日に最大で100万リットルまで作れるわ。」

「…殺さないでもらえると、めっちゃ助かります!」

 アホみたいな生成量を聞き、雄貴は震え上がる。凡そ5時間半は生成し続けられる計算になるが、そもそも量がおかしい。1000人単位の人間の、1日に使う水を余裕で賄えるのではないだろうか。

「殺さないわよ!少し痛い目にあってもらうだけ!」

「口は災いの元とは、良く言ったもんだよ。」

 後悔してももう遅いが、それでもボヤいてしまう。

「後悔しても遅いわ!」

「今丁度そう思ってたところだよ!もうこうなったら、とことん付き合ってやるよ!」

 吼えながらドンと地面を足の裏で蹴ると、そこから数メートル罅が広がる。

「す、凄いパワーね。でも、私もまけないんだから!」

 獰猛な笑みを浮かべて、周囲に球体の水を浮かべる由橘乃。普通の人がぶつけられれば、骨でも折れそうな質量があるだろう。

『おおっと〜!両者向かい合って、気合いはマックスのようだ!ここに、Sランクの安曇由橘乃さん対、見た目からは想像出来ない程のパワーを誇る、Bランクの高月雄貴さんの戦いが始まるぅ!』

「「いや、誰よ (だよ)!」」

 向かい合っていた2人の耳に、『ウラデリ』において解説さんと呼ばれる、2年の女子生徒の実況が聞こえてくる。

『両者、向かい合って下さい。』

「「…。」」

 すっかり場の空気をぶち壊されてしまった2人は、仕方無く解説さんの言葉に従う。

『では、始め!』

 こうして、想定外過ぎる由橘乃との戦いの火蓋が切って落とされた。

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