バッドエンドは全力でぶち壊す!
第19話 邂逅
 初日から慌ただしく走るという、何とも先が思いやられる状況に陥ったが、無事に時間に間に合い、雄貴は入学式の受付に行き、シンシアは会場となる体育館の裏手から中に入った。
ーさてと。俺の席はどこかな?ー
 受付では、端末に席の位置を送ってもらったので、それを頼りに探す。席が12ブロックあるうちの、向かって一番右端なので、分かりやすくて助かる。
ーあそこか。…あれ?おいおい。何か見た事ある奴が、俺の席の前に座ってんぞ。ー
 緊張のあまり、足が震えかけるが、ぐっと堪えて歩く。
ーまさか、俺の目の前に、主人公君が座ってるとは…。てなことは、俺と同じクラスって事だ!こいつは幸先良いぞ!ー
 記憶が確かなら、このブロック毎にクラス編成がされる筈なので、これは確定である。
ー癖の強いメインヒロインが、同じクラスに2人も居るって事になるが、これが一番やりやすい状況だ。ー
 メインヒロインは、シンシア、夏帆の他に、もう1人居る。夏帆に続き、その1人も非常に癖が強いので、苦労する事間違い無しである。
 そう考えながらそっと席に腰掛け、緊張を緩めた。
 このまま緊張していても、この先、絶対に精神がもたないので、意識して気を緩める事を心がける。
ーにしても、主人公君はやっぱり全然特徴が無いというか、目立たないというか…。確かに顔はイケメンだけど、よくモテるよなぁ。ー
 じっと後頭部に熱い視線を送ってしまう。すると、流石に主人公君も気になったのか、少し身動ぎしてから、後ろを振り返って来る。
「…何か、用か?」
「…あ、い、いや、別に用は無いんだけど、俺、友達少ないから、どうやったら君と友人になれるかを考えてたんだ。」
 話しかけられるとは思っておらず、面食らってしまうが、無視する訳にはいかず、必死に言い訳をする。
「俺と友人になりたいのか?変わった奴だな。」
「ご、ごめん。」
「いや、別に謝る事は無いだろ。…俺は高等部からこっちに来る事になったから、これから仲良くしてもらえると嬉しい。」
 何の気まぐれか、あんまり人との接触を好まない主人公君から、驚きの言葉が発せられる。
「そ、そっか。あ、俺は高月雄貴。雄貴って呼んでくれ。一応、中等部の1年からこの学園の生徒だから、分からない事があったら、何でも聞いてくれ。」
 言葉を失いかけるが、折角のチャンスである。何とか気を取り直して、自己紹介をする。
「俺の名前は田貝悠人。気軽に悠人と呼んでくれ。」
「分かった、悠人。これからよろしく。」
 名前を聞き、震えそうになる声を抑えて、どうにかそれだけ返す。
ーキャラクターネームは固定なんか!いやまぁ、どういう名前で、コイツが主人公か。気だるげだけど、何とか気合を入れて、引き込まないとだな。ー
 気を落ち着かせる為に、別の事を考える。
 そんな雄貴に、悠人が話しかけてくる。
「早速1つ質問なんだが、この学園で強い奴って言ったら、誰だ?」
「これはまた、初っ端からぶっ飛んだ質問だな。悠人は戦いたいのか?」
「いや、そういう訳では無いんだが、ただの興味本位だ。」
「そっか。まぁ、強さつっても、色々な方面があるから、一概には言えないけど、この学園では3人ほど挙げられるかな。」
「3人か。どんな能力なんだ?」
 この会話によって悠人が得る情報は、本来は初日から知ってるものでは無いので、少しハラハラしながら話し始める。
「1人目は悠人と同じ高等部からの新入生で、名前は知らないけど、『八坂刀売神』っていう超能力を持ってるらしい。山をぶち抜いて、荒れる海を鎮めたっていう、治水伝説がある神の名前から想像するに、超多量の水を操る能力だと思う。」
 これは、まだ実際には雄貴が会っていない、最後のメインヒロインの超能力であった。
 超能力には、それぞれ名前が付けられ、神の名前を冠する超能力は、非常に強力なものである証であった。即ちSランクの超能力である。
 超能力者は、日本全体で5万人程いるので、初期の方はノリノリで名付けてた政府も、流石にネタが切れてきたのか、Cランク以下の超能力は、基本的に一定程度のくくりに入れられて、名前が統一されてしまっているのだが。
 それは兎も角、雄貴としても、あんまり戦いたくない相手である。メインヒロインであるという事を抜きにしても、大量の水で攻められてしまえば、戦闘不能に追いやるまで、時間をとられてしまう。
「次は、2年の生徒会副会長の、シンシア・トリトン先輩だな。先輩の超能力は、『アルテミス』。弓矢を出現させて、大規模な破壊や、超遠距離からの狙撃等々、中々にえぐい能力だな。弓矢自体も結構丈夫で、近接もそれなりにこなせる武器になるらしい。戦争になったら、是非とも第一線に立って欲しい人材ではあるな。」
 本音では、彼女に戦闘をして欲しくは無いが、そうはいかないのが、この世界である。平穏の為にも、シンシアには頑張って戦ってもらわねばならない。
「そして最後に、これが一番恐ろしいかな。直接的な戦闘能力では無いんだけど、3年生の生徒会長、百田俊彦先輩だな。会長の超能力は、『八意思兼神』っていって、冠する名前の通り、天候を操る能力だ。Sランクで、大規模な操作は、禁じられてるって話だから、裏を返せば、自由に天候を操作出来るんじゃ無いかと思う。」
「聞けば聞くほど、超能力ってのは、何とも恐ろしいものなんだな…。」
「そうだね。でも超能力は、人間が操るものだ。要は、使う人間次第で、毒にも薬にもなるって事だ。」
 まずはジャブを放つ。これで悠人の心を動かせるとは思わないが、それでも今後楽になればと、その一心で、臭い言葉を口にするのだった。
ーさてと。俺の席はどこかな?ー
 受付では、端末に席の位置を送ってもらったので、それを頼りに探す。席が12ブロックあるうちの、向かって一番右端なので、分かりやすくて助かる。
ーあそこか。…あれ?おいおい。何か見た事ある奴が、俺の席の前に座ってんぞ。ー
 緊張のあまり、足が震えかけるが、ぐっと堪えて歩く。
ーまさか、俺の目の前に、主人公君が座ってるとは…。てなことは、俺と同じクラスって事だ!こいつは幸先良いぞ!ー
 記憶が確かなら、このブロック毎にクラス編成がされる筈なので、これは確定である。
ー癖の強いメインヒロインが、同じクラスに2人も居るって事になるが、これが一番やりやすい状況だ。ー
 メインヒロインは、シンシア、夏帆の他に、もう1人居る。夏帆に続き、その1人も非常に癖が強いので、苦労する事間違い無しである。
 そう考えながらそっと席に腰掛け、緊張を緩めた。
 このまま緊張していても、この先、絶対に精神がもたないので、意識して気を緩める事を心がける。
ーにしても、主人公君はやっぱり全然特徴が無いというか、目立たないというか…。確かに顔はイケメンだけど、よくモテるよなぁ。ー
 じっと後頭部に熱い視線を送ってしまう。すると、流石に主人公君も気になったのか、少し身動ぎしてから、後ろを振り返って来る。
「…何か、用か?」
「…あ、い、いや、別に用は無いんだけど、俺、友達少ないから、どうやったら君と友人になれるかを考えてたんだ。」
 話しかけられるとは思っておらず、面食らってしまうが、無視する訳にはいかず、必死に言い訳をする。
「俺と友人になりたいのか?変わった奴だな。」
「ご、ごめん。」
「いや、別に謝る事は無いだろ。…俺は高等部からこっちに来る事になったから、これから仲良くしてもらえると嬉しい。」
 何の気まぐれか、あんまり人との接触を好まない主人公君から、驚きの言葉が発せられる。
「そ、そっか。あ、俺は高月雄貴。雄貴って呼んでくれ。一応、中等部の1年からこの学園の生徒だから、分からない事があったら、何でも聞いてくれ。」
 言葉を失いかけるが、折角のチャンスである。何とか気を取り直して、自己紹介をする。
「俺の名前は田貝悠人。気軽に悠人と呼んでくれ。」
「分かった、悠人。これからよろしく。」
 名前を聞き、震えそうになる声を抑えて、どうにかそれだけ返す。
ーキャラクターネームは固定なんか!いやまぁ、どういう名前で、コイツが主人公か。気だるげだけど、何とか気合を入れて、引き込まないとだな。ー
 気を落ち着かせる為に、別の事を考える。
 そんな雄貴に、悠人が話しかけてくる。
「早速1つ質問なんだが、この学園で強い奴って言ったら、誰だ?」
「これはまた、初っ端からぶっ飛んだ質問だな。悠人は戦いたいのか?」
「いや、そういう訳では無いんだが、ただの興味本位だ。」
「そっか。まぁ、強さつっても、色々な方面があるから、一概には言えないけど、この学園では3人ほど挙げられるかな。」
「3人か。どんな能力なんだ?」
 この会話によって悠人が得る情報は、本来は初日から知ってるものでは無いので、少しハラハラしながら話し始める。
「1人目は悠人と同じ高等部からの新入生で、名前は知らないけど、『八坂刀売神』っていう超能力を持ってるらしい。山をぶち抜いて、荒れる海を鎮めたっていう、治水伝説がある神の名前から想像するに、超多量の水を操る能力だと思う。」
 これは、まだ実際には雄貴が会っていない、最後のメインヒロインの超能力であった。
 超能力には、それぞれ名前が付けられ、神の名前を冠する超能力は、非常に強力なものである証であった。即ちSランクの超能力である。
 超能力者は、日本全体で5万人程いるので、初期の方はノリノリで名付けてた政府も、流石にネタが切れてきたのか、Cランク以下の超能力は、基本的に一定程度のくくりに入れられて、名前が統一されてしまっているのだが。
 それは兎も角、雄貴としても、あんまり戦いたくない相手である。メインヒロインであるという事を抜きにしても、大量の水で攻められてしまえば、戦闘不能に追いやるまで、時間をとられてしまう。
「次は、2年の生徒会副会長の、シンシア・トリトン先輩だな。先輩の超能力は、『アルテミス』。弓矢を出現させて、大規模な破壊や、超遠距離からの狙撃等々、中々にえぐい能力だな。弓矢自体も結構丈夫で、近接もそれなりにこなせる武器になるらしい。戦争になったら、是非とも第一線に立って欲しい人材ではあるな。」
 本音では、彼女に戦闘をして欲しくは無いが、そうはいかないのが、この世界である。平穏の為にも、シンシアには頑張って戦ってもらわねばならない。
「そして最後に、これが一番恐ろしいかな。直接的な戦闘能力では無いんだけど、3年生の生徒会長、百田俊彦先輩だな。会長の超能力は、『八意思兼神』っていって、冠する名前の通り、天候を操る能力だ。Sランクで、大規模な操作は、禁じられてるって話だから、裏を返せば、自由に天候を操作出来るんじゃ無いかと思う。」
「聞けば聞くほど、超能力ってのは、何とも恐ろしいものなんだな…。」
「そうだね。でも超能力は、人間が操るものだ。要は、使う人間次第で、毒にも薬にもなるって事だ。」
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