バッドエンドは全力でぶち壊す!

血迷ったトモ

第18話 予定外

 気を取り直して、雄貴は当然に生じた疑問をぶつける。

「えっと、どうやって部屋に入ったんですか?」

「ドアが中途半端に開いてたので、少し心配になって、そこから入らせていただきました。」

「…ごみ捨ての時に、閉め忘れたようです。」

 上の空過ぎた行動に、雄貴は気分がずんと落ち込んでくる。幾ら何でもアホ過ぎるだろう。

 何時までもシンシアを放置する訳にもいかないので、無理矢理忘れる事にして、顔を上げて聞く。

「それで、何で朝からいらっしゃったんですか?」

「実は、困った事に、生徒代表のスピーチを頼まれてしまいまして。」

「スピーチですか。先輩の事だから、もう十分に練ってきたのですよね?なら安心では?」

 シンシアは見た目もそうだが、Sランクの超能力者である事で、非常に華がある。だから彼女に依頼するのは当然であろう。

 勿論シンシアは、依頼されれば断らず、真摯にスピーチに取り組む事間違い無しであるので、当日になって困る事など、何一つ無いはずである。

「依頼されたのが、昨日の朝で無ければ大丈夫だったのですが…。」

「え、今、昨日の朝とおっしゃいましたか?」

「はい、その通りです。」

「何でまたそんな急に…。」

 雄貴は耳を疑うってしまうが、何とも酷い状況に、シンシアは追いやられているらしい。

「実は、百田ももた生徒会長の妹さんが、なんと言いますか、私のファンらしくて、生徒会長が生徒代表のスピーチやると言ったら、殴られてしまったそうなんです。」

「…あぁ、あの元気な子ですか。」

 雄貴は顔を顰める。生徒会長の妹とは中2の時からの同級生であるので、それなりに知ってはいるが、少し苦手なタイプであった。

 嫌いでは無い。寧ろ人としては好ましいが、良く言えば元気が良い、脳天気な人柄だったので、色々と画策したい雄貴にとって、最大級の障害の一つになりかねなかった。

「あ、夏帆なつほさんをご存知なんですね。」

「えぇまぁ。彼女はコミュ力お化けですから、当然自分も話した事があります。」

 その性格を、元々・・知っていたとはいえ、『おっはよ〜う!何だか難しい顔してるけど、大丈夫?』と、いきなり話しかけられた時は、驚愕したものである。

ーあの妹系ヒロイン・・・・は、もう少し落ち着きってもんを持った方が、良いんじゃないか?ー

 その言葉の通り、百田夏帆はメインヒロインの1人である。都合のいい事に、ヒロイン達は纏めてこの寮に居るので、夏帆も上階に住んでいる。

「私も何度かお会いしましたが、確かに人と話すのが得意そうな子でしたね。」

「まぁ、今は百田さんの事じゃ無くて、スピーチの事ですよね。」

 脱線しかけた話を元に戻す為、取り敢えずは夏帆の事は一旦忘れる事にする。

「あ、そうでした。一応形は出来てるのですが、時間が全然無かったので、練習も何も出来なかったんです。」

「自分で力になれるなら良いんですが。」

 雄貴にスピーチの才能など無いので、力になれるか些か疑問である。だが、シンシアから頼られたとなれば、これを断る理由は一切無い。

「緊張とかが無くなれば良いので、私が一番聞いて欲しいと思っている、ゆ…。」

「ゆ?」

「い、いえ、何でもありません。ただ聞いて頂いて、おかしいと思った所を、指摘していただければ嬉しいです。」

 何かを言いかけたシンシアは、慌てて必死に言葉を繕う。

「まぁ、それくらいなら、何とかお力になれるかと思います。」

 何を言いかけたか全然分からないが、今はスピーチを完成させる方が、より優先度が高い。

 こうして雄貴は、夏帆の暴走のせいで、朝からシンシアに付き合わされる事となったのだった。


「―以上を持ちまして、歓迎の挨拶とさせて頂きます。」

「はい、そんな感じで大丈夫だと思います。」

 修正が終わり、最後に1回通してみたシンシアに、拍手を送りながら言う。

「ありがとうございます。本当に助かりました。」

「後は、本番で噛まなければ、大成功ですね。」

 笑顔でシンシアを揶揄う。

「こ、怖い事言わないで下さい!」

そうすると、面白いくらいに反応を返してくれるので、雄貴は笑ってしまった。

「冗談です。さて、時刻は…8時15分、ですか。これ、急がないと不味いのではないですか?」

 確か、集合時間は8時半だった筈なので、そろそろ部屋を出ないと、遅刻してしまう。

「え、もうそんな時間何ですか?」

「はい、もうそんな時間です。」

 スマホの画面を見せて言う。

「せ、生徒会メンバーは、8時20分集合なんですが…。」

「い、急ぎましょう!カバンは持ってきてますか?」

「はい、持ってきてます!」

「じゃあ俺が持ちますので、走りましょう!」

 学校までは徒歩5分ちょい。走れば十分に間に合う距離である。

「分かりました。ありがとうございます。」

「いえ、礼には及びません。」

 喋ってる時間も勿体ないぐらいなので、口を動かしながらもちゃんと動き、もう玄関まで出てきていた。

「では行きましょうか。」

「はい!」

 暖かな日差しが降り注ぎ、桜舞い散る中、2人は慌ただしく、学園へと走り出すのであった。

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