バッドエンドは全力でぶち壊す!
第16話 平穏な夜
 カレーも完食し、お腹も落ち着いたところで、雄貴は立ち上がって言う。
「今日はありがとうございました。夜も遅いですし、寮の前まで送ります。」
 時刻は21時半を周り、そろそろ女性が1人で外を出歩くのには、不向きな時間帯である。
 その為、シンシアを送ろうと、手早く服を着込む。
「い、いえ、態々悪いです。1人で大丈夫ですよ。こう見えて私、Sランク何ですよ?」
 ここで、シンシアからとんでもない言葉が飛び出る。聞く者が聞いたら、目をひん剥いて、問い詰めるレベルの言葉である。
「街中では、基本的には超能力の使用は禁止ですよ?」
 苦笑いしながら言う雄貴。
 その言葉から分かるように、Sランクというのは、超能力に関する用語である。
 超能力を使用すると、専用の機器を通す事によって、何らかのエネルギーの流れが確認されているのだが、流れるエネルギーの量、世界に与える影響、物理的な効果等々、 S〜Dまでのランク付けがされる。
 9割以上はBランク以下におり、Aが上位0.2パーセント、Sランクに至っては、世界でも100人人と居ない存在である。
 そんなSランクの1人が、雄貴の目の前に居る、シンシア・トリトンであった。
「正当防衛の時は、話は別ですよ?」
 自信満々に、胸を張って言うシンシア。彼女は、結構良いスタイルなので、少し目の毒だ。雄貴はそっと視線を外しながら、苦笑いを浮かべる。
「そん時は、加害者は漏れなく全員死んでますよね。それどころか、周囲の地形も…。」
 野郎どもの骸が周囲に転がってる状態で、頭を抱えて、涙を浮かべてるシンシアの様子が、目に浮かぶようだ。勿論シンシアの居る場所は、クレーターのど真ん中である。
「そ、その位は調整出来ますよ。」
「まぁ、その辺の話を抜きにしても、後ろから不意打ちされたらお終いですよ?先輩はか弱い女性なんですから。」
「確かに、後ろから頭を殴られたりしたら、終わりですよね…って、何で私が襲われる前提の話なんですか?」
「だって、夜は物騒じゃないですか?」
 雄貴は問い掛ける。
「えぇ、まぁ、そうですね。ここは比較的、犯罪が少ないですが。」
 夜が物騒なのは、どこの世界でも街でも、共通事項であるので、これにはシンシアも普通に頷く。
「んで、先輩は可愛いじゃないですか?」
「えぇ、まぁ、そうですね?…はい?今なんとおっしゃいましたか?」
 さらっと容姿を褒められて、シンシアは頷きかけたが、動きを止めて聞き返す。
「先輩はとても可愛いじゃないですか、って言ったんです。」
 雄貴は真顔で、恥ずかしがる素振りも見せずに、言葉を口にした。
「ほ、褒め言葉が過剰になってます!って、そこじゃなくて、私が可愛いって、何の冗談ですか!?」
「いやいや。大真面目ですから。先輩で可愛くないなら、全世界の女性は不細工です。あ、いや、顔がありません。その位は、先輩は可愛いんです。自覚して下さい。」
「そこまで言いますか!?」
 顔を真っ赤にして叫ぶシンシアをスルーして、言葉を続ける。
「んで、可愛い先輩を手に入れる為、後ろからガツンとやって、良からぬことをしようと、企んでる連中が居るかもしれません。」
ー居たら全員、この世から消すけど。ー
 心の中で、物騒な事を考えながら、雄貴は熱弁を振るう。
「という事で心配なので、寮まで送ります。」
「は、はい…。お願いします…。」
 雄貴から、可愛いと何回も言われて、すっかり頭が茹だってしまったシンシア。褒め殺しにされる前に、諦めて白旗を上げるのであった。
「「…。」」
 月夜の下、高等部の寮近くの道を、無言で歩く2人の姿があった。
ーやっべぇ!変なスイッチが入っちまって、つい言い過ぎちまった!気色悪いとか、思われて無いよな!?思わないで下さい!ー
 自己嫌悪に陥る雄貴と。
ーか、可愛いって!雄貴君に言われてしまいました!嬉し過ぎます!ー
 片や浮かれて、脳内お花畑なシンシア。
 対極的な2人ではあったが、同じ歩幅で、付かず離れずの距離感で、ゆっくりと歩いていた。
ーあ〜あ。やらかしちまったけど、ストーリー開始以降は、こういう事は無いように、全力で気を付けよう…。それにしても、月が綺麗だな。」
「え?い、今なにかおっしゃいましたか?」
「…口に出てましたか?いや、夜空が綺麗だなと思いまして。」
「月が綺麗だな、と言ってた気がします。」
「今日は少し疲れてるんですかね?帰ったら、早めに寝ようと思います。」
 幸いな事に、最初の方は声になってなかったようだ。ほっと胸を撫で下ろす。
「あ、ただ本当に思っただけなんですね…。」
「はい?」
「いえ、何でもありません。」
 心做しか残念そうなシンシアの様子に、首を傾げる雄貴。鈍すぎて、本気で気が付いて無いようだ。
「えっと、ではここまでで大丈夫です。」
 首を傾げてるうちに、寮の目の前にまで来ていた。
「はい、分かりました。お休みなさい。」
「はい、お休みなさい。」
 手を振りながら寮の玄関に向かってくシンシアを見送り、一息つく雄貴。ふと横を見ると、自販機があったので、そこで缶コーヒーを買う。
「あ〜、今日は色々と濃い1日だったな。」
 オッサン臭いが、ブラックの缶コーヒーを片手に、ため息をつく。
 中坊が出していい貫禄では無いが、雄貴はそのまま寮へと歩く。
 星空は、彼の行先を暗示してるかのように、不安定に瞬いていた。
「今日はありがとうございました。夜も遅いですし、寮の前まで送ります。」
 時刻は21時半を周り、そろそろ女性が1人で外を出歩くのには、不向きな時間帯である。
 その為、シンシアを送ろうと、手早く服を着込む。
「い、いえ、態々悪いです。1人で大丈夫ですよ。こう見えて私、Sランク何ですよ?」
 ここで、シンシアからとんでもない言葉が飛び出る。聞く者が聞いたら、目をひん剥いて、問い詰めるレベルの言葉である。
「街中では、基本的には超能力の使用は禁止ですよ?」
 苦笑いしながら言う雄貴。
 その言葉から分かるように、Sランクというのは、超能力に関する用語である。
 超能力を使用すると、専用の機器を通す事によって、何らかのエネルギーの流れが確認されているのだが、流れるエネルギーの量、世界に与える影響、物理的な効果等々、 S〜Dまでのランク付けがされる。
 9割以上はBランク以下におり、Aが上位0.2パーセント、Sランクに至っては、世界でも100人人と居ない存在である。
 そんなSランクの1人が、雄貴の目の前に居る、シンシア・トリトンであった。
「正当防衛の時は、話は別ですよ?」
 自信満々に、胸を張って言うシンシア。彼女は、結構良いスタイルなので、少し目の毒だ。雄貴はそっと視線を外しながら、苦笑いを浮かべる。
「そん時は、加害者は漏れなく全員死んでますよね。それどころか、周囲の地形も…。」
 野郎どもの骸が周囲に転がってる状態で、頭を抱えて、涙を浮かべてるシンシアの様子が、目に浮かぶようだ。勿論シンシアの居る場所は、クレーターのど真ん中である。
「そ、その位は調整出来ますよ。」
「まぁ、その辺の話を抜きにしても、後ろから不意打ちされたらお終いですよ?先輩はか弱い女性なんですから。」
「確かに、後ろから頭を殴られたりしたら、終わりですよね…って、何で私が襲われる前提の話なんですか?」
「だって、夜は物騒じゃないですか?」
 雄貴は問い掛ける。
「えぇ、まぁ、そうですね。ここは比較的、犯罪が少ないですが。」
 夜が物騒なのは、どこの世界でも街でも、共通事項であるので、これにはシンシアも普通に頷く。
「んで、先輩は可愛いじゃないですか?」
「えぇ、まぁ、そうですね?…はい?今なんとおっしゃいましたか?」
 さらっと容姿を褒められて、シンシアは頷きかけたが、動きを止めて聞き返す。
「先輩はとても可愛いじゃないですか、って言ったんです。」
 雄貴は真顔で、恥ずかしがる素振りも見せずに、言葉を口にした。
「ほ、褒め言葉が過剰になってます!って、そこじゃなくて、私が可愛いって、何の冗談ですか!?」
「いやいや。大真面目ですから。先輩で可愛くないなら、全世界の女性は不細工です。あ、いや、顔がありません。その位は、先輩は可愛いんです。自覚して下さい。」
「そこまで言いますか!?」
 顔を真っ赤にして叫ぶシンシアをスルーして、言葉を続ける。
「んで、可愛い先輩を手に入れる為、後ろからガツンとやって、良からぬことをしようと、企んでる連中が居るかもしれません。」
ー居たら全員、この世から消すけど。ー
 心の中で、物騒な事を考えながら、雄貴は熱弁を振るう。
「という事で心配なので、寮まで送ります。」
「は、はい…。お願いします…。」
 雄貴から、可愛いと何回も言われて、すっかり頭が茹だってしまったシンシア。褒め殺しにされる前に、諦めて白旗を上げるのであった。
「「…。」」
 月夜の下、高等部の寮近くの道を、無言で歩く2人の姿があった。
ーやっべぇ!変なスイッチが入っちまって、つい言い過ぎちまった!気色悪いとか、思われて無いよな!?思わないで下さい!ー
 自己嫌悪に陥る雄貴と。
ーか、可愛いって!雄貴君に言われてしまいました!嬉し過ぎます!ー
 片や浮かれて、脳内お花畑なシンシア。
 対極的な2人ではあったが、同じ歩幅で、付かず離れずの距離感で、ゆっくりと歩いていた。
ーあ〜あ。やらかしちまったけど、ストーリー開始以降は、こういう事は無いように、全力で気を付けよう…。それにしても、月が綺麗だな。」
「え?い、今なにかおっしゃいましたか?」
「…口に出てましたか?いや、夜空が綺麗だなと思いまして。」
「月が綺麗だな、と言ってた気がします。」
「今日は少し疲れてるんですかね?帰ったら、早めに寝ようと思います。」
 幸いな事に、最初の方は声になってなかったようだ。ほっと胸を撫で下ろす。
「あ、ただ本当に思っただけなんですね…。」
「はい?」
「いえ、何でもありません。」
 心做しか残念そうなシンシアの様子に、首を傾げる雄貴。鈍すぎて、本気で気が付いて無いようだ。
「えっと、ではここまでで大丈夫です。」
 首を傾げてるうちに、寮の目の前にまで来ていた。
「はい、分かりました。お休みなさい。」
「はい、お休みなさい。」
 手を振りながら寮の玄関に向かってくシンシアを見送り、一息つく雄貴。ふと横を見ると、自販機があったので、そこで缶コーヒーを買う。
「あ〜、今日は色々と濃い1日だったな。」
 オッサン臭いが、ブラックの缶コーヒーを片手に、ため息をつく。
 中坊が出していい貫禄では無いが、雄貴はそのまま寮へと歩く。
 星空は、彼の行先を暗示してるかのように、不安定に瞬いていた。
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