バッドエンドは全力でぶち壊す!

血迷ったトモ

第12話 仕事終わり

「あら雄貴君。今日はお仕事だったの?」

 19時半過ぎに、漸く開放され帰ろうとした所、署内で、別の課の女性から声をかけられる。

「はい。食事中に出動要請がかかりまして、被疑者を確保しました。」

 雄貴は苦笑いしながら答える。彼は、世にも珍しい、特例の特例中の、15歳の巡査であるので、署内ではよく声をかけられるのだ。

 「また活躍したのね。弟と同じ歳なのに、本当に凄いわ!」

「たまたま僕の持ってる超能力が、武力行使に優れてただけで、僕自身は凄くありませんよ。」

 雄貴は外行きの言葉遣いをし、笑顔を浮かべる。

「本当に出来が違うわ…。お疲れ様。ジュース飲む?」

 更に深く感心した様子の女性。

「い、いえ。態々悪いですから。それに、直ぐに帰りますし。」

「あら。デートかしら。」

「はははは。俺に彼女なんて居る訳無いじゃないですか。では、お先に失礼します。」

「えぇ!?嘘!?可愛いのに勿体ない!」

「あははは…。それではまた…。」

 確かに、この顔はイケメン (この世界の雄貴の顔なので、別にナルシストでは無い)なので、中等部の頃は、普通に何回か告白されたが、断腸の思いで断っていた。

 この世界の雄貴が目覚めた時、いきなり彼女とか居ても嫌だろうからと、泣く泣く断った雄貴の気持ちを、誰が理解出来るだろうか。

 まぁ、大体はあんまり話してないのに、急に告白してきたので、『面食いめ!』と悪態をつきながら、断る事が出来たのが、せめてもの救いであろう。

 苦笑いしながらフェードアウトし、いそいそと帰路に着く。

 見上げると、少し欠けた上弦の月が見えた。

「はぁ。先輩には後でちゃんと、謝らないとな。」

 あの後、犯人は、酔いが覚めた事で、顔面を蒼白にし、必死に謝罪をしていた。

 どうも彼は、超能力者としては、1年半くらい前に目覚めたらしく、超能力者を嫌う田舎に居た為、仕事はクビになり、奥さんと子供には逃げられてしまったらしい。
 そして、超能力者が全国で最も多い、唐科市であれば、居場所があるのではとやって来たが、仕事にありつけず、ヤケになって飲んでるところに、如何にも働いてる風な、サラリーマン男性を見て、怒りが抑えられなくなったそうだ。

 謝り倒している犯人を見て、雄貴はもう怒る気にもなれずに、事務的に処理し、やるせない気分のまま、帰るはめになった。

「つーか、夜飯も食い損ねたじゃんか!」

 歩きながら、ガックリと項垂れる雄貴。もう夜飯を作る気力も残って無いので、味気無いレトルト食品か、カップ麺でも食べるかと、投げやりになる。

ー先輩との高級フレンチが…!どんだけの落差やねん!ー

 もう気分はドン底である。意気消沈したまま、寮に戻った雄貴は、ため息をつきながら、ロックを開け、部屋に入ろうとする。
 だが、その肩が『ポン』と叩かれたので、びっくりして後ろを慌てて振り向く。

「だ、誰ですか!?って、先輩か…は?先輩!?何でここに!?」

「ナイスリアクションです。待った甲斐があったというものです。」

 振り向いた雄貴の目に映ったのは、笑顔のシンシアの姿であった。

 一瞬、幻を見てるのかと、目を疑ったのだが、雄貴が彼女を見間違える筈が無い・・・・・・・・・

 どうやらこのシンシアは、本物であるらしい。

「驚き過ぎではありませんか?」

「あ、はい、すみません。少し予想外だったので、つい。」

 驚き過ぎてしまい、言葉が途切れ途切れである。

「それで、一体どうしたんですか?」

 まだ打ち上げから帰ってる生徒は、少ない筈なので、噂にはならないだろうが、ここでは誰に見られるか分からない。

 雄貴としては、どこか人目の無いところに行きたいが、夜にシンシアをそんな場所に連れて行く事など、出来るはずもなく、要件が早く終わる事を願うばかりである。

「部屋、上がっても良いですか?」

「…今何と?」

 予想外な言葉に、雄貴は聞き間違いだと思ったのか、聞き返す。

「だから、雄貴君の部屋に、上がっても良いですかと、聞いたのですが…。」

 だが、シンシアから同じ言葉が繰り返された為、雄貴は額に手をやる。

「はい?俺の部屋にですか?年頃の女性が、1人で男の部屋に入るだなんて、危機感が足りないのでは無いですか?」

「お父様みたいな事、言わないで下さい!私が他の男性の部屋に、上がると思いますか?」

「それはまるで、俺なら問題無いと言ってるように聞こえるんですが?」

 信用されてるのか、それとも男と見られてないのか。後者であれば、それはそれで悲しいが、その分動きやすいので、助かるのが何とも言えない。

「はい、信用してますから。」

「…。」

 邪推したのが恥ずかしくなる程、真っ直ぐに言い切られてしまい、もう何も言えなくなる。

「どうしたのですか?」

「いえ、何でもありません。立ち話っての何ですし、是非上がって下さい。」

「ありがとうございます!じゃあ、キッチンを借りますね!」

「はい?」

 嬉しそうに、唐突にそんな事を言い出したシンシアに、首を傾げるが、その際、彼女の足下にスーパーの大きな袋があるのが目に入った。

「え?え?え?まさかとは思いますが、料理を作って下さるんですか?」

 目を白黒させて聞く。

「はい、そのつもりです。任せて下さい。こう見えても、料理はそれなりにしますので。」

「そこは心配してませんが、まさか先輩の手料理が食べられる日が来るとは、思っても無かったので。」

 好きなキャラクターに、手料理を振舞ってもらえるとか、前世で一体どれ程の徳を積んだら、そんな状況が訪れるのだろうか?感動に打ち震えている雄貴は、同じように震える手でドアを開け、シンシアを招き入れるのだった。

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