バッドエンドは全力でぶち壊す!

血迷ったトモ

第8話 4年経過

「うぁ〜!長かったぁ〜!」

 雄貴がこの世界に来てから4年後の、西暦2030年3月15日。今日この日、ついに彼は中学校を卒業し、いよいよゲーム本編開始まで、1か月を切っていた。

 この六通学園の中等部の生徒は、全員超能力者であるので、このまま高等部へと進学する事になるので、大抵の者は何とも思ってなさそうな顔をしていた。

 だがそんな中で、雄貴は非常に嬉しそうに、伸び伸びとしてるように見えた。この4年間で大分痩せて、それなりに見れる顔と身体になった雄貴。伸び伸びしてるお陰か、より一層イケメンに見える。

「これでついに、漸く精神年齢を誤魔化さずに済むぞ〜!」

 そういう事である。今となっては、高校生3年生プラス4年分経過してるのだが、大学生が高校生のフリをするだけで良いのだ。
 小中学生のフリをするよりも、よっぽど気が楽であろう。

 東京都の西部に新しく設置された、唐科市にある六通学園は全寮制で、親元から離れて暮らすのだが、これは雄貴にとって、非常に気が楽なものであった。
 陽子さんには申し訳無いが、やはり他人という意識があるので、気を遣う必要が無いのは助かった。

「今日で、この部屋ともお別れか。」

 椅子に座りながら、1LDKの部屋を見回す。
 寮は、中等部、高等部、大学と別れており、高等部に進学するにあたって、引越しをする必要があった。

「青春真っ盛りな、素敵な高校生活…とはいかないけど、精一杯楽しみつつ、あのクソボケ主人公君を、どうにせにゃならんな。」

 『ウラデリ』に関する情報は、全てノートに纏めてあり、思い出せる限りのヒロインたちの、個人情報のオンパレードであり、誰にも見られる訳にはいかない、パンドラボックスならぬパンドラノートであった。

 これを用いて、効率的に主人公君をこっち側・・・・に引っ張って来れれば御の字である。最悪、命を奪うまであるが、それは最終手段であり、雄貴としては、そんな殺伐とした生活は嫌だった。

「今日は、お祝いって事で、少し贅沢に楽しむとすっか!」

 引越し自体は、20日までに済ませれば良いし、家具は備え付けの物ばかりなので、少し余裕がある。

「…ありゃ。冷蔵庫が空じゃんか。仕方無い。今から買い物に行くか。」

 余裕そうに見えて、雄貴は緊張をしていて、最近は身の回りの事が疎かになっているのが、丸見えである。
 それだけ、これから危ない戦闘に巻き込まれ、更には、バットエンドではドン引きなド鬼畜ぶりを発揮する、主人公君のせいで、頭がいっぱいいっぱいという事だ。

「さてと。そうと決まれば、さっさとスーパー行くべ。」

 『よっこらせ』と、中学生とは思えない声とともに立ち上がり、外出の支度を始める。夕方なので、そろそろ人が多くなり始めるので、少し急ぐ。とは言っても、この唐科市は人口が6万人で、あまり人口は多くないので、大した混み具合にはならない。

「ん?着信?」

 リュックを背負った所で、ポケットに入っていた端末から、着信音が聞こえてくる。

「…彼女・・か。」

 別に雄貴の恋人という訳では無く、少し距離を取りたいと思っている人物からの着信に、少し顔を顰める。

 別に彼女が嫌いな訳では無い。というより、寧ろ好ましく、何なら彼女の為であれば、自身の命をかけても良いぐらいには、仲良くなりたいぐらいだったが、『ウラデリ』のストーリーが狂ってしまうので、関わりたく無かった。

「はぁ…。はい、もしもし。どうしましたか?先輩・・。」

『あ、いや、その…卒業しましたので、4月からは同じ高校だなと思った次第で…。』

 電話の向こうから、モジモジと縮こまった様子の声が聞こえてくる。どうせこの先輩は、『ど、どうしよう?卒業とはいえ、ここから離れる訳でも無いし、電話したらおかしいかな?でも、何も言わなければ、冷たい女だとか思われるんじゃないかな?あ〜、どうしよう!!』とか、悶々としてから、意を決して電話して来たに違い無い。

「それは当然なのですが。ちょっと買い物したいので、電話はそれからでも大丈夫ですか?それとも、先輩が良いなら、買い物しながらでも…。」

 言いながら、端末から耳を離して、ワイヤレスイヤホンを耳に付ける。

 今どき、端末を耳に当てて電話してる人なんて、中々居ないので、これで外に出ても、目立たない筈だ。

『買い物?急ぎなのですか?』

「えぇ、まぁ。今日の夕食の食材が無いので、買い出しに行かないと、飯抜きが確定何ですよ。」

 話しながら、雄貴は靴を履く。暖かくなってきたとはいえ、まだ3月なので、薄手のジャンバーを手に、外に出ようとドアに手をかける。

『そ、そうですか!なら良かったです!』

「はい?」

『あ、すみません!食材が無いのが良かったんじゃなくて!』

「勿論分かってます。先輩はいつも、言葉が足りないですから。」

 雄貴の言葉が辛辣だが、これが通常運転である。それだけ仲良い証拠であり、雄貴が拒みきれてない事の証である。

『うぐ…。返す言葉も無いです。』

「女の子が、うぐ…とか言っちゃ駄目ですよ?」

『それは大丈夫です。雄貴君の前以外では、絶対に使わないので。』

「それは、俺如きに気を遣う必要は無いという事ですか?」

 ドアを開けながら、巫山戯て言うと、先輩が大声で叫ぶのが聞こえた。

「そ、そんな訳無いです!」

「冗談です…ん?」

 楽しそうに笑いながら、謝ろうとしたが、何故だかすぐ近くから・・・・・・先輩の声が聞こえた気がして、恐る恐る左右を見る。

 すると左手側に、綺麗な長い金髪を、キラキラたなびかせた、雄貴の先輩である、シンシア・リトルトンが顔を赤くして、立っていたのだった。

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