バッドエンドは全力でぶち壊す!
第5話 柄じゃない
ー確か、彼女の超能力が発現したのは、中三の頃だったはず。なら、今は一個上の中一であるシンシアさんは、ただのか弱い女の子だ!ー
 ついに、その歩みを止める雄貴。
「おい、黙って動けっつったよな?あぁ!?」
「あ。あぁ…。」
 シンシアは竦んでいて、すっかり動けなくなってしまっている。このままでは、最大戦力である人間の内の一人である彼女が、殺されかねない。
 だがそれ以上に、『ウラデリ』により、擬似的にはではあるが、彼女の人柄を知っている雄貴には、ここでシンシアを見捨てるという選択肢は、存在しなかった。柄では無いのだが。
 幸いな事に、強盗犯はシンシアにお冠で、雄貴の行動には、一切気が付いて無かった。
『ゆうちゃん!何をしているの!?』
 そんな感じの事を言いたいのだろう。必死な、強い視線が、雄貴の背中に突き刺さる。
ーごめん、陽子さん。ー
 心の中で謝りながら、背後から強盗犯に近寄る。
「…このぉっ!クソガキがぁ!」
 ついにブチ切れた強盗犯が、シンシアを銃の銃床で殴ろうと、大きく振りかぶる。
ー今だ!ー
「止めろ!!」
 渾身の力を込めて、強盗犯の腰あたりにタックルをする。少し小太りな体型の雄貴は、50キロくらいだろうか。そんな彼がタックルしてきたので、倒れるまではいかないものの、少しよろめいて、銃床の軌道が変わり、シンシアには当たらずに済んだ。
「ぬおっ!」
 振り抜いた体勢のまま、少しバランスを崩してくれたので、そのままもう一押しして、何とか転がす事に成功する。
 が、直ぐに強盗犯は立ち上がって、ギロリと覆面から覗く目で、雄貴を睨み付けてきた。
「こ、このクソ野郎!!」
 立ち上がり、自身にタックルしてきたのが、雄貴のような子供だと認識すると、一瞬だけ驚いたように見えたが、直ぐに怒りによって動揺を消し、そして怒鳴りつける。
 更に、強盗犯は力任せに雄貴に蹴りを放ってくる。
「うぐぅ!?」
 腹付近に飛んできた蹴りを、咄嗟に両腕でガードする事に成功するが、強盗犯の馬鹿力により、雄貴の身体は軽々吹っ飛んで、誰も居ない壁際の方に転がっていく。
ー痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!痛すぎる!何で俺はこんな事してるんだ!ー
 痛みのあまり雄貴は今更ながらに、強盗犯に抵抗した事を後悔してしまう。
 ガードした腕は、すっかり痺れてしまい、動かす事もままならない。しかも吹っ飛んで地面に落ちた時、少し背中を打ったので、呼吸も少し難しくなっているのだ。
「ゆうちゃん!」
「騒ぐんじゃねぇ!ぶっ殺すぞ!」
 ついに我慢の限界となった陽子さんの悲鳴のような声が、遠くに聞こえる。それに過剰に反応する、強盗犯の声も。
ー痛い、けど!陽子さんを…殺させる訳には、いかない!俺の、仕出かした事だ!最悪、俺の意識がどうなっても良い!この身体と、陽子さんだけは、守らないと!!ー
 雄貴は力を振り絞って、遠のく意識を繋ぎ止めて、よろよろと立ち上がる。
「ごほっ。…おい、どこを、見ている?よそ見、していると、ごほっ。はぁ…。また、俺みたいなガキに、遅れをとるぞ。」
 途中経過むせながらも、挑発的な態度と笑みで、強盗犯の注意を引き付ける。
 言い終わると同時に、強盗犯は雄貴の目論見通り、陽子さんから視線を外して、真っ直ぐこちらを見てくる。
「ちっ!どこまでもムカつくクソガキだな!どうも死にてぇらしいなぁ!」
 雄貴に、確実に死を与えるであろう、強盗犯の無慈悲な銃口が、こちらに向く。
 それを前にして尚、雄貴の闘志は一切萎える事が無かった。それどころか、より強く燃え上がる。
ーこんな所で、この身体を殺す訳にはいかない!限界なんかぶち壊して、出せる力全て出して、アイツの顔面を、陥没させてやれ!ー
 すると、その瞬間、雄貴の身体に、何か黒い鎖が巻き付いてるのを、幻視した。その鎖は重く、1人の力では、解く事なんて出来ないほど、しっかりとしたものだった。
ーな、何だ?この鎖は?ー
 手足を動かそうとするが、鎖のせいで、1ミリも動かせない。虚空から伸びた鎖なのに、ビクともしないのだ。
ークソっ!邪魔だ。邪魔なんだよ!こんな変な鎖、ぶっ壊れちまえ!ー
そう思った途端、鎖が『パキーン』と粉々に砕け散った。
 すると、先程まで重石が乗せらてるかのように、重かった身体が、ふっと軽くなり、何でも出来そうな気がする程の、万能感に満たされる。
 何が何だか分からないが、このまま動かなければ、死あるのみである。
 強盗犯の引き金にかけられた指に、力が入るのを見た雄貴は、ほぼ無意識で、足を踏み出していた。
「…ふっ!」
『ズガァン!!!!!』
 体勢を低くして飛び出した雄貴の頭の上を、弾丸が通り過ぎる。
 気が付くと、目の前には呆けた様子の強盗犯の顔面がある。
「うあああああ!!」
 雄貴は飛び出す前にイメージした通りに、本気で強盗犯の顔面に右拳を叩き込む。
「うぐぉっ!?」
 すると、情けない声と共に、強盗犯は先程の雄貴のように、軽々と吹っ飛んで、地面をゴロゴロと転がっていく。
『突入!!』
 と、そこに、タイミングが良いのか悪いのか、武装した治安部隊と思しき集団が、入口からぞろぞろと入ってくる。
「はぁ、はぁ、はぁ…。助かった、のか?うっ…。」
  それをボーッと眺めてた雄貴は、安堵からか足の力が抜けて、その場にへたり込む。その視線の先では、すっかり伸びている強盗犯が、あっという間に拘束されていた。
 自分の事で手一杯な状況ではあるが、念の為周囲に目をやる。
ーシンシアさんは、無事か。放心してるな。それと、陽子さんは…。ー
 陽子さんの方に、目をやると、こちらに駆け寄って来るのが見えた。
「ゆうちゃん!無事なの!?」
「あ〜、うん、取り敢えずは大じょ、痛っ。」
 大丈夫だと言おうとしたが、急に右腕から激しい痛みを感じて、何も言えなくなってしまう。
「だ、誰か!息子が怪我してます!救急車を!」
 そんな雄貴を見て、顔面を蒼白にした陽子は、大慌てで助けを求める。
「いや、大袈裟な…。」
 雄貴の呟きは聞き入れらず、またしても病院送りになってしまうのだった。
 ついに、その歩みを止める雄貴。
「おい、黙って動けっつったよな?あぁ!?」
「あ。あぁ…。」
 シンシアは竦んでいて、すっかり動けなくなってしまっている。このままでは、最大戦力である人間の内の一人である彼女が、殺されかねない。
 だがそれ以上に、『ウラデリ』により、擬似的にはではあるが、彼女の人柄を知っている雄貴には、ここでシンシアを見捨てるという選択肢は、存在しなかった。柄では無いのだが。
 幸いな事に、強盗犯はシンシアにお冠で、雄貴の行動には、一切気が付いて無かった。
『ゆうちゃん!何をしているの!?』
 そんな感じの事を言いたいのだろう。必死な、強い視線が、雄貴の背中に突き刺さる。
ーごめん、陽子さん。ー
 心の中で謝りながら、背後から強盗犯に近寄る。
「…このぉっ!クソガキがぁ!」
 ついにブチ切れた強盗犯が、シンシアを銃の銃床で殴ろうと、大きく振りかぶる。
ー今だ!ー
「止めろ!!」
 渾身の力を込めて、強盗犯の腰あたりにタックルをする。少し小太りな体型の雄貴は、50キロくらいだろうか。そんな彼がタックルしてきたので、倒れるまではいかないものの、少しよろめいて、銃床の軌道が変わり、シンシアには当たらずに済んだ。
「ぬおっ!」
 振り抜いた体勢のまま、少しバランスを崩してくれたので、そのままもう一押しして、何とか転がす事に成功する。
 が、直ぐに強盗犯は立ち上がって、ギロリと覆面から覗く目で、雄貴を睨み付けてきた。
「こ、このクソ野郎!!」
 立ち上がり、自身にタックルしてきたのが、雄貴のような子供だと認識すると、一瞬だけ驚いたように見えたが、直ぐに怒りによって動揺を消し、そして怒鳴りつける。
 更に、強盗犯は力任せに雄貴に蹴りを放ってくる。
「うぐぅ!?」
 腹付近に飛んできた蹴りを、咄嗟に両腕でガードする事に成功するが、強盗犯の馬鹿力により、雄貴の身体は軽々吹っ飛んで、誰も居ない壁際の方に転がっていく。
ー痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!痛すぎる!何で俺はこんな事してるんだ!ー
 痛みのあまり雄貴は今更ながらに、強盗犯に抵抗した事を後悔してしまう。
 ガードした腕は、すっかり痺れてしまい、動かす事もままならない。しかも吹っ飛んで地面に落ちた時、少し背中を打ったので、呼吸も少し難しくなっているのだ。
「ゆうちゃん!」
「騒ぐんじゃねぇ!ぶっ殺すぞ!」
 ついに我慢の限界となった陽子さんの悲鳴のような声が、遠くに聞こえる。それに過剰に反応する、強盗犯の声も。
ー痛い、けど!陽子さんを…殺させる訳には、いかない!俺の、仕出かした事だ!最悪、俺の意識がどうなっても良い!この身体と、陽子さんだけは、守らないと!!ー
 雄貴は力を振り絞って、遠のく意識を繋ぎ止めて、よろよろと立ち上がる。
「ごほっ。…おい、どこを、見ている?よそ見、していると、ごほっ。はぁ…。また、俺みたいなガキに、遅れをとるぞ。」
 途中経過むせながらも、挑発的な態度と笑みで、強盗犯の注意を引き付ける。
 言い終わると同時に、強盗犯は雄貴の目論見通り、陽子さんから視線を外して、真っ直ぐこちらを見てくる。
「ちっ!どこまでもムカつくクソガキだな!どうも死にてぇらしいなぁ!」
 雄貴に、確実に死を与えるであろう、強盗犯の無慈悲な銃口が、こちらに向く。
 それを前にして尚、雄貴の闘志は一切萎える事が無かった。それどころか、より強く燃え上がる。
ーこんな所で、この身体を殺す訳にはいかない!限界なんかぶち壊して、出せる力全て出して、アイツの顔面を、陥没させてやれ!ー
 すると、その瞬間、雄貴の身体に、何か黒い鎖が巻き付いてるのを、幻視した。その鎖は重く、1人の力では、解く事なんて出来ないほど、しっかりとしたものだった。
ーな、何だ?この鎖は?ー
 手足を動かそうとするが、鎖のせいで、1ミリも動かせない。虚空から伸びた鎖なのに、ビクともしないのだ。
ークソっ!邪魔だ。邪魔なんだよ!こんな変な鎖、ぶっ壊れちまえ!ー
そう思った途端、鎖が『パキーン』と粉々に砕け散った。
 すると、先程まで重石が乗せらてるかのように、重かった身体が、ふっと軽くなり、何でも出来そうな気がする程の、万能感に満たされる。
 何が何だか分からないが、このまま動かなければ、死あるのみである。
 強盗犯の引き金にかけられた指に、力が入るのを見た雄貴は、ほぼ無意識で、足を踏み出していた。
「…ふっ!」
『ズガァン!!!!!』
 体勢を低くして飛び出した雄貴の頭の上を、弾丸が通り過ぎる。
 気が付くと、目の前には呆けた様子の強盗犯の顔面がある。
「うあああああ!!」
 雄貴は飛び出す前にイメージした通りに、本気で強盗犯の顔面に右拳を叩き込む。
「うぐぉっ!?」
 すると、情けない声と共に、強盗犯は先程の雄貴のように、軽々と吹っ飛んで、地面をゴロゴロと転がっていく。
『突入!!』
 と、そこに、タイミングが良いのか悪いのか、武装した治安部隊と思しき集団が、入口からぞろぞろと入ってくる。
「はぁ、はぁ、はぁ…。助かった、のか?うっ…。」
  それをボーッと眺めてた雄貴は、安堵からか足の力が抜けて、その場にへたり込む。その視線の先では、すっかり伸びている強盗犯が、あっという間に拘束されていた。
 自分の事で手一杯な状況ではあるが、念の為周囲に目をやる。
ーシンシアさんは、無事か。放心してるな。それと、陽子さんは…。ー
 陽子さんの方に、目をやると、こちらに駆け寄って来るのが見えた。
「ゆうちゃん!無事なの!?」
「あ〜、うん、取り敢えずは大じょ、痛っ。」
 大丈夫だと言おうとしたが、急に右腕から激しい痛みを感じて、何も言えなくなってしまう。
「だ、誰か!息子が怪我してます!救急車を!」
 そんな雄貴を見て、顔面を蒼白にした陽子は、大慌てで助けを求める。
「いや、大袈裟な…。」
 雄貴の呟きは聞き入れらず、またしても病院送りになってしまうのだった。
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