バッドエンドは全力でぶち壊す!

血迷ったトモ

第2話 不幸中の幸い

 この身体の持ち主の母親、陽子ようこさんが、あっという間に医者を手配し、記憶喪失の原意を調べるべく、更に検査入院する事となった。

 話を聞くと、部屋でぶっ倒れて気絶していた雄貴を発見した陽子さんは、念の為、病院へと運び、外傷が大した事無かったので、安心をしていたらしい。

 因みに、この身体も雄貴という名前で、更にびっくりさせられた。ただ、名字は高月たかつきというらしい。それにしても名前は一緒なんて偶然、普通はあるだろうか?いや、そもそも他人の身体に入り込むなんて事は起きないのだが。

医者や陽子さんとの話の中で、西暦や元号などの話題が出なかったが、雄貴が元いた時代とほぼ変わらないようだった。

 その辺は、周りに置いてある、電子機器類や設備で大体分かった。

 だがしかし、良く見ると自分が知っている代物よりも、高性能であり、たまに空中に浮かび上がるタッチパネルが、雄貴を非常に驚かせた。

「この夢、もう少し続いても良いかも…。」

 そんな事を呟いてしまうぐらいには、ワクワクさせる技術力だった。

 ただ一つ気になるのが、いい歳した大人が、病院のロビーのあちこちで、何のアニメか漫画の事かは分からないが、『超能力者』について、馬鹿真面目に話しているシーンに、何度か出くわした事だ。

「超能力といえば、『ウラデリ』だよな。確か、あのゲームも、舞台は近未来だったよな。西暦で言うと、2030年か?」

 ここは、『ウラデリ』が大ヒットし、全年齢向けが発売された後の世界なのかと、馬鹿な事を考える。超能力を扱った漫画やアニメなど、大量にあるのだから、他の作品である可能性が高いだろう。

「果たして、ジェネレーションギャップに着いてけるのか?高校生にしては枯れてるだとか、流行に疎いとか散々言われまくった俺が。」

 平成すらも、『え!?平成生まれ!?超昔じゃん!』とか言われる時代なのではと、急に心配になってくる。

「ま、まだこの身体は小学六年生らしいし、今から頑張れば何とかなる筈、だと願いたいなぁ。」

 健康体なのに、入院させられている雄貴は、期間中ずっと、そんな事を考えながら、悶々としたベッド生活を送る羽目になったのだった。


 3日後、漸く異常無しという事で、退院が認められた雄貴は、陽子の迎えで自宅へと帰ってきた。

「ただいま?」

「お帰りなさいゆうちゃん。」

  疑問形で言う雄貴に、陽子は暖かい笑顔で返してくれる。こういう人がこの身体の持ち主の母親で良かったと思う反面、愛する息子を奪ってしまったという、罪悪感を感じてしまう。これを不幸中の幸いと言うのだろうか?

「えっと、僕の部屋は2階?」

「うん、そうよ。後で案内してあげるから、まずは手を洗ってらっしゃい。」

「うん、分かった。」

 口調を少年のものにし、なるべく違和感の無いように、最大限に気を付けるが、やはりまだ固い。

 それもう慣れてくしか無いので、陽子の言葉に素直に従い、洗面所に向かおうとするが、その足は止まってしまう。

「洗面所、どこ?」

「あ!教えてなかったわね!ごめんなさい!」

 どうやら陽子さんは、雄貴と同様に抜けてる所があり、その天然さに、既に数度大爆笑させてもらっている。勿論彼女の居ない、一人きりの病室でだが。

「はい、ここが洗面所よ。」

「うん、ありがとう。ついでに、歯ブラシはどれなの?」

「ゆうちゃんの歯ブラシは、その青いやつ。」

 陽子さんに聞いて、自分の事について、色々と補完していく。

「うん、分かった。」

  洗った手を、タオルで拭きながら頷く。下手にこの身体の雄貴としての記憶が無い事を隠すよりも、こうして早めにバレてくれて、寧ろ助かったかもしれない。

「じゃあ、1階にあるものを説明するね。この洗面所のすぐ隣が、お風呂で、緑色のボトルがシャンプー、ピンクのボトルがボディソープよ。」

「緑がシャンプー、ピンクがボディソープだね。」

「そうよ。で、こっちがトイレで、ここから玄関の方に向かうと、右手にリビングがあるわ。左側の扉は、物置になるわ。」

「ふむふむ。」

 説明を受けながら、実際に扉を開けて、中を確認しながら、頭に叩き込む。

「それじゃあ次は2階ね。1階は他にも部屋はあるけど、普段はゆうちゃん使わないから。」

「うん、分かった。」

 陽子の案内で、2階へと上がる。

「まずはゆうちゃんの部屋ね〜。」

 階段から、一番遠い、日当たりが良い部屋が、雄貴の自室となっていた。

ー俺が目を覚ました部屋か。確か、夏休みの課題中に、鈍い音が聞こえたから見に行ったら、中でぶっ倒れていたと。ー

  今日は8月1日なので、比較的早い段階から課題に手をつけてるようで、雄貴は素直に感心したものだ。自身も、夏休みが始まってから、1週間以内にテキストや読書感想文は仕上げるタイプだったので、親近感も湧いた。

 先に部屋に入る陽子さんを追いかけながら、雄貴は今後の事について、考え続けるのであった。

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