配属先の先輩が超絶美人だけど冷酷すぎて引く

笑顔付き

第21話 強襲突撃

パイオニアの拠点を叩くにあたって、タッグを組むメンバーが変わった。
相手は金剛征四郎だった。花宮愛華は優秀な魔装救助部隊員だ。それだけに戦闘行為には向いていないと判断され外された。そして後方支援担当のウェルシェパードと組む事になった反対に命令違反を繰り返す銀河は、その手綱を握る為の金剛征四郎というタックが結成されたわけである。

「お前と一緒に戦うのは初めての経験だ。命令はしない。好きにやれ。俺も好きにやる」
「わかりました。よろしくお願いします」

言葉を交わす二人に管理者から魔法通信が入る。一般的に使われるものとは違う秘匿回線だ。今使われている魔法通信は解析されているので、使えないので暫定的にこの周波数で言葉を飛ばしているのだ。

『管理者より全メンバーへ。各自指定のポイントへ移動してください。そこがテロリストの拠点から一番近く、尚且つ飛行魔法を使っても安全な区域となります。移動の際は気付かれないように低空飛行を心掛けてください。なおテロリストひいてはパイオニアの人権は剥奪されているので殺しても問題ありません。捕縛の危険性を鑑みて積極的な殺害を推奨します。以上、通信を終わります』

管理者から指定されたポイントは山岳地帯のある場所だった。すぐそばにテロリストの拠点があり、切り立った山が雨風に削られて天然の要塞のようになっている。そこを更に人の手で改修を加えているのでテロリストの抵抗は激しくなると予想される。
二人は顔を見合わせ、飛行魔法を発動、低空飛行でその場所まで移動した。

「どう攻めるつもりだ?」
「変装して内部から切り崩そうかと」
「そうか、なら俺が先行しよう。正面から堂々と捻り潰す」
「わかりました」
『管理者より全メンバーへ通達。各員ポイントに到着。攻撃を開始してください』
「了解」

金剛征四郎は飛び上がり、魔力を充填し始めた。

「魔力充填開始、目標を固定、魔法陣展開、複数展開」

魔法陣が展開され魔力が集まりだす。それに気付いたパイオニアのメンバーが弓矢を打ってくるか、ガードジャケットに阻まれて体に届かない。魔法無効化アイテムより遠いため、金剛征四郎の行動を止めるものがいない。

「魔力出力制限解除を申請」
『魔力出力制限の解除を許諾』
「魔力収束――発射」

高出力の魔力弾がパイオニアの拠点に突き刺さり爆発した。建物が倒壊する。それに巻き込まれて人々が潰れて死んでいく。銀河としては彼らも助けたいが、それができる状況ではなかった。

「第二射準備、魔力収束――発射」

反撃していた弓矢部隊に直撃した。爆発が地面を舐めとって粉々に吹き飛ばされる。体がバラバラになったのが見えた。爆発が爆発を呼んで連鎖的に爆発していって建物内が膨らんで火を噴く。内部にいた人は跡形もなく散っていった事だろう。

「第三射準備、魔力収束――発射」

一際大きい建物に当たって、そして落下した。下の建物を押し潰し、血の津波が発生した。三度の砲撃によって、パイオニアの拠点は壊滅状態だと銀河は判断した。しかし、それは誤りだった。

「高魔力エネルギー反応! 魔力砲撃だ! 防御態勢!!」
「了解!!」

ガードジャケットに魔力を込めて全身をガード強化する。強い衝撃と共に魔力の奔流が銀河と金剛征四郎を襲う。地面がえぐられガタガタと上下に揺れながら転がり落ちる。そうしてなんとか魔力砲撃を耐え凌ぐと、壊滅した筈のパイオニアの拠点から浮き上がる存在がいる。

「誰だ、あれは」
「わかりません。ただ凄い魔力数値です。並の魔法使いじゃありません。撤退か戦闘か、素早く決めるべきかと」
「撤退だ。目標の建造物は破壊したし、メンバーも相当する殺した。これで自爆テロなんて真似は出来ないだろう。飛行魔法を使って即時離脱だ」
「了解!」

飛行魔法で離脱する二人。だがそれを謎の敵は見逃す筈無かった。同じく飛行魔法で銀河達に追いすがる。背後につき、魔力弾を形成、射撃する。
乱数回避で魔力弾を避ける二人だが、その顔には焦りが浮かんでいた。

「ちっ、早いなくそったれ!」
「振り切れない! 戦闘の許可を!」
「許可を得ようとするなんて成長したじゃないか! やつはここで堕とす!! 二人でだ!」
「はい!」

左右に分かれ、両側から挟むように接敵する。魔力ブレードが謎の敵のガードジャケットに激突する。激しい魔力火花を散らしながら甲高い音を響かせる。連続して攻撃を仕掛けるが、謎の敵はガードジャケットで全て受け止め魔力ブレードすら出現させない。どうやら相当自分の心に自信があるらしい。

魔法で作られるガードジャケットは心の強さそのもの。それでガードするには自分が絶対に相手より上だと確信を持たなければかなりリスキーな行為となる。もし万が一にでも破壊されれば自信が打ち壊され、肉体的にもダメージを負うからだ。
そんな行為をされているという事は格下だと思われ、侮られている事に他ならない。

「その自信、ぶち壊してやる!!」

金剛征四郎は魔力弾を発射し、弾幕を張る。その中に自ら突っ込み、魔力ブレードを振るった。銀河とは出力が違う殺傷能力が高い一撃だ。ズバン! と良い音を奏でながら謎の敵の腕が切り落とされた。

「ば、ばかなっ!」
「拘束魔法、発動」
「ナイスだ、銀河!!」

腕が切られ動揺しているところに拘束魔法で動きを止める。相手は動揺しているので強い魔法が放てない。そのまま袈裟けさ斬りにされて地面へ落下していった。
謎の敵の敗因は二人を侮った事だろう。銀河が出力制限解除していない事を良い事に自分の力を見せつけるつもりだったのが仇となった形だ。

「良いのか? 助けなくて」
「良いですか? 助けて?」
「捕虜の一人ぐらいいた方が何かと都合が良いだろう」
「ありがとうございます」

銀河は落ちていった敵を拾って治療施した後、手足を切断して目玉を抉ってら拘束魔法で拘束して連れて行く。
『第08魔装救助部隊待機室』に戻ってくると明るい表情をした二人が出迎えた。捕虜を尋問部隊に引き渡す。どうやら花宮愛華とウェルシェパードチームも作戦にしたようだった。管理者からの情報が届く少しの間、それぞれ好きな事をして過ごしていると、あっという間に時間が経った。
管理者から連絡が届く。

『管理者より全メンバーへ通達。作戦は成功。各地のパイオニアの拠点は壊滅。そして貴重な捕虜を取る事にも成功しました』
「よしっ!」

金剛征四郎が嬉しそうに声を上げる。

『これでパイオニアだけではなく他のテロ組織も活動しにくくなったでしょう。今回の作戦に参加した全ての者に感謝と謝礼金をお配りします。またスコアにも大きく加算点が加えられるでしょう』
「やはり世のため人のために働くものですね」

花宮愛華が清々しく良い表情でそう言った。スコアの加算がそれほどまで嬉しいのだ。彼女にとってスコアをどれだけ稼げるか、それこそが彼女の喜びなのだ。

『捕虜などを取った事で、情報を引き抜くことができました。捕虜を取る事で残敵掃討の為の情報源に確保でき、また人道的なのは管理者側である事を示す事ができました。捕虜を取った人道的な者達に拍手を』

パチパチと音が鳴る。
銀河は照れた。公の場で褒められるのに慣れていない。むしろ怒られたり、諌められたらする方が多い。純粋に褒められると嬉しくなり、銀河は小さくガッツポーズを取った。そして捕虜を取る許可をくれた金剛征四郎にも感謝した。
偶然、視線が重なり、お互いにハイタッチを交わした。

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