配属先の先輩が超絶美人だけど冷酷すぎて引く

笑顔付き

第19話 作戦会議

「具体案はあるんですか?」
「ある!」

ウェルシェパードがハッキリと言った。

「SCは合計10個ある。しかし相手はまだ4個しか手に入れていない。そしてここにSCが6個ある」
「私達結局2つしかSC獲得できてませんが、どうして6個あるんですか?」
「他の魔装部隊のメンバーが任務のついでに集めてくれていた。この数はこれは大きなアドバンテージだ。これを使って相手を呼び出し、倒す」
「SCを暴走させるのか? それは安全上の問題から好ましく無いが」

金剛征四郎が渋い顔をつくる。それに対して問題ないとウェルシェパードは言う。

「何も問題はない。何故ならSCは暴走させないからだ」
「じゃあどうやって」
「僕達の魔法通信は盗聴されているのは知っているだろう? これで宣戦布告する。全てのSCをかけて勝負しろ、とね。勿論勝つのが一番最高だが、負けた時の案も考えてある」
「どんな案なんですか?」

花宮愛華が問いかける。

「まず負けた時だ。負けた時は素直に譲り渡した後、相手は転移で消える。ここで前もって準備しておいた大型の逆探知装置を使って位置を特定する。次に買った時、勝った時は全てのSCを回収したのちユーフェミアをこちらに迎え入れる。そして言葉は悪いが自慢して相手の居場所を聞き出す」
「ユーフェミアがやってくるとは限らないんじゃないですか?」
「本人が来ても同じ事だ。負けたら逆探知、勝てば尋問。負けた場合はSCを失うが、相手の本拠地がわかった時に取り戻しにいけば良い」
「なるほど、素晴らしい戦略だ。で? 誰が餌になる」
「無論、僕が行きます」

銀河言う。それに反対する者はおらず、続いて花宮愛華が。

「私は周囲の警戒や市民が入ってこないか監視してます」
「なら俺は大型逆探知装置の護衛か」
「僕は大型逆探知装置を動かす役ってとこほかな」
「決行は明日の朝! 以上、作戦会議終わり! 解散! それぞれ英気を養っておくように!」

そう言うと机に突っ伏し、寝始めた。連日のSC関連の事で忙しかったのだろう。金剛征四郎は会議を終わるとすぐに外に出てどこかへ行った。銀河もソファーで横になろうとしたその時、花宮愛華に止まられた。

「もし良ければどこかでご飯でも食べませんか?」
「ええ、喜んで」

二人はランダムに選んだお店に入り、席に座る。そして飲み物を注文した。

「何を食べますか?」
「私はお肉系を食べたいです」
「僕もお肉系ですかね、このドラゴンステーキというのはどうでしょう?」
「ドラゴンを倒した私たちにはぴったりのご飯ですね。そういえば銀河さん」
「なんですか?」
「銀河さんって一人称が私だったり、僕だったり変わりますが何か切り替える目的とかあったりするでしょうか?」

銀河は水を飲んだ。喉を潤してから、言う。

「目的というほど大きなものではないですが、公的な場では私を、個人的な私的な場面では僕を使うようにしています」
「へぇ、そうなんですか。俺、僕、オイラと男性の一人称はありますが僕を選んだきっかけとかはあったりするんですか?」

銀河はクスリと笑いながら言った。

「オイラは無いと思いますが……まぁ、そうですね。俺は我が強く出過ぎる印象があるので、謙虚そうな僕を選んだ節はありますね。そういう愛華さんは自分の一人称をどうやって決めたとか覚えてるもんなんですか?」

花宮愛華は思案顔で深く考え込む。そして首を横に振った。

「覚えていません。私はいつの間にか私という呼び方が定着してました。銀河さんはよく覚えていましたね」
「僕の場合は意識的にやっていましたから」

そこでドラゴンステーキが運ばれてきた。大きな肉の塊が焼かれて皿の中央に置かれている。銀河はそれを切り分けて、小皿に乗せて花宮愛華に渡した。

「ありがとうございます。慣れていますね」
「これも戦闘技能の一環として仕込まれました」
「戦闘技能の一環……? どういう事ですか?」
「小さな気遣いから仲間からの信頼を得る、という意味です」
「今の切り分けてくれるのは少し好感度が上がりましたが、戦闘技能かは疑問が残りますね」
「確かに」

銀河は周囲を見渡し言った。そこにはエルフにドワーフ、人間と酷似した面を持ちながらも羽や猫耳が生えた獣人属がお互いに笑い合いながら食事を共にしていた。それを銀河は感慨深そうに見つめる。

「だいぶ異種属が受け入れられてきましたね」
「獣人やエルフなどは一昔前まで奴隷扱いが当たり前でしたからね。それも管理者のおかげといったところでしょうか。感慨深そうにしてますが、貴方は生まれたばかりの赤ん坊ですから、感慨も何も無いのでは?」
「私の記憶にはありませんが、これまでこの世界がどういう経緯を辿って今に至ってるかは知っています。だから、奴隷解放宣言が行われ人間と獣人の泥沼の戦いになると思われた中、管理者という絶対の存在により統治され平和になるのは胸にくるものがあるんですよ」
「愚かな民衆の自由より、賢い独裁の方が良いって事ですね。管理者といえば、管理者部隊の話は知っていますか?」

銀河の食べる手が止まる。

「管理者部隊?」
「はい。噂レベルの話ですけど、管理者の判断であらゆる組織人種の垣根を越えて組織された部隊で、管理者の統治に邪魔なものを消して回る実働部隊。それが管理者部隊」
「怖いですね。命令違反を何度もしてる身としてガタガタ震えちゃいます」
「ふふ、いつか消されないように気をつけないといけませんね。じゃないとあの世行きですよ」
「怖い事を言いますね。でも確かにその通りです。管理者の統治は絶対。歯向かっていけない。そうしないと消されるから。とんだ恐怖政治ですよ。でもそれで平和が保たれるなら良いのかもしれませんね」

花宮愛華は意外そうに目を見開いた。

「意外です。銀河さんはそういうの許せない! と怒るものとばかり」
「確かに私は人が死ぬのは嫌いです。目の前で人が、命が奪われるのは嫌です。たげどそれで多くの命が守られているのを許容できないわけじゃないてますよ。勿論、目の前で命を奪おうとする人がいたら全力で戦いますけど」

子供のように折れないブレない意思を持ちつつ、大人の冷静に人の命を天秤にかける死生観を持っている。歪だと花宮愛華は感じた。これがデザインベイビー。自分の意思は持ちながらも、管理者を第一とした冷徹さが合体している。

花宮愛華はそそられた。
その歪さがとても儚く、美しいものに思えた。目の前で命が消えてしまう事を全力で阻止しようとする子供らしさ。平和の為には邪魔者が消えても良いと許容する大人びた精神。矛盾したあり方。辛い生き方。そしてナイフで刺されながらも他者を救う自分の身を顧みないデザインベイビーとしては失格の自己保護の欠如。
イレギュラー。
だから。
花宮愛華は銀河の目を見て言った。

綺羅星きらぼし銀河さん。貴方が好きです。お付き合いしてくれませんか?」

その言葉に呆気に取られたように固まる。

「どういう意味ですか?」
「貴方とお付き合いしたいと言ったんです。貴方に興味が湧きました。とても」
「花宮さんとは出会って数日です」
「日数は関係ありません。密度が大切なんです」

花宮愛華とは第08魔装救助部隊にやってきてからSC暴走体を倒して、殺人現場から犯人を推察して、尋問した。尋問した際に逃げ出され、その捕獲を行った。その後はカウンセリングが終わるまで待っていた花宮愛華と歩いていた。
その時にユーフェミアと三人でお茶をした。パイオニアに襲われ、皆殺しにした。
金剛征四郎がやってきて、パイオニアの隠れ家に強行偵察を行った。結果、背中を刺されながら花宮愛華の命を救う出来事があった。
銀河は思い当たった。

「もしかしてその時ですか?」
「はい。その時に私はは綺羅星きらぼしが好きになったんだと思います。だから付き合ってください」

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