異世界ハーレム☆美少女これくしょん

笑顔付き

第三話

 客間に戻ってきた。全員欠ける事なくだ。喜ばしいとミストは素直に思った。だがメンタルの方は多大なダメージを受けていたようで、戻ってきてからすぐ全員自室に戻ってしまった。
 ミストは外に出て日の光を浴びながらロングソードを振るってトレーニングを開始する。

 そうして半日ほど過ごしていると宿の入り口ほうに魔法陣が浮かび上がった。何事かと駆け寄ると、そこには白い髪の少女がいた。サリアだ。魔法武器を持って立っている。
 ミストは背筋が凍る思いをした。慌ててサリアの手を掴み、近くの茂みに隠れる。

「ちょっと! 一体何するのよ!」
「魔法武器をそんな堂々と持ち歩くな。一般人に知られれば頭が爆発するぞ」
「そ、そうなの? 悪かったわ」
「それで、サリア。ミッションぶりだな。転移魔法を使ったにしても来るの早いな」
「そうね。急いできたから早い方だと思うわ」
「取り敢えず話がしたい。俺の部屋に来いよ。もちろん魔法武器は隠してな」
「ええ、了解」

 部屋に戻る最中に、アイリスと鉢合わせた。

「気分はどう?」
「最悪。まだ吐き気が残ってるわ。気持ち悪い」
「殺し方に配慮する余裕がなくてな。首飛ぶところとか見せちゃったし、ゆっくり静養してくれ。待ってるから」
「ありがとう。そっちの人は?」
「覚えてないか? サリアだ。俺よりポイントを取ってたゲーム参加者だよ」
「そう。貴方は殺す事に躊躇いがなかったんだ」

 弱っているとはいえあんまりな言い方にミストは注意する。

「その言い方はないだろう。彼女だって最初は戸惑っていたさ」
「でも最終的には殺したんでしょう? なら凄いわ。エルフだから人殺しじゃないもんね。そりゃあ殺しに慣れるか。40点以上だもんね。里に何人いたか知らないけど1000人以上は殺してるでしょう。人間様は他種族を隷属させるのに長けるわけだわ」

 濁った瞳で嫌味を言うアイリスに、ミストは強い口調で言う。

「アイリス」

 すると、はっとしたように顔に手を当ててヨロヨロと自室に戻っていく。

「ごめんなさい。ちょっとどうかしていたわ。疲れてるみたい。サリアさんも、好きでやってるわけじゃないのよね。ごめんなさい」
「お気になさらず」

 自室に消えたアイリスにサリアは同情の目を向けていた。

「同族が死ぬのを目の当たりにしたらああなるのも当然ですね。可哀想に」
「サリアは怒らないのか。あれだけ言われたら怒ると思ったが」
「流石に1000人以上エルフを殺しておいて、それを咎められて怒る器は私にはありませんよ。甘んじて受け入れます。それに同じ境遇ですしね。もしかしたらああなっているのは私の方かもしれなかった。そう考えてると、今の私は幸運だと思うのです」
「大人だな、サリアは」
「大人なのですよ、私は」

 部屋にサリアを入れると鍵を掛けてベットに座らせた。

「ちょっと待ってください。それは不安になるんですけど。凄い不安になるんですけど。話すなんて建前で私犯そうとしてませんか?」
「してないしてない。鍵を掛けたのは誰かが入ってきて会話をかからないように。ベット座らせたのはお尻が痛くならないようにと言う配慮から。もっと信用してくれても良いんじゃない?」
「出会って一日も経ってないですよ。信用できません」
「そうか。残念だ。じゃあ簡単にあの異空間のルールを説明する」
「お願いします」
「このゲームは、世界各地から参加者をランダムにかき集めて、魔法武装を授けて、戦わせる。このゲームを第三者に喋ったり、魔法武装を人目が多いところで使うと頭の中の爆弾が爆発して死ぬ。100点を取れば戦いから解放か強力な武器を得て戦える。そしてこのゲームの参加者は一ヶ所ではない。以上だ」
「目的は?」

 その質問にミストは答えられなかった。運営がどうしてこのコンテンツを設置させたのか考えたこともなかったからだ。しかしこのコンテンツをやった場合に得られる物から逆算することはできた。

「味方と連携した戦いの訓練をさせる為とか、あとは強力な武器を手に入れる為のエンドコンテンツ、世界の勢力図を調整する為の特殊部隊……とか?」
「なるほど」

 その話を聞いてサリアは笑っていた。

「面白いですね。強力な武器というのが気になります。今の武器で1000人殺すの余裕なのに、もっと強力な武器が手に入ったらどうなるんでしょう。次のミッションが楽しみですね」

 ミストは笑った。ミッションに肯定的な意見を聞けたからだ。彼女とは良い協力関係を築けそうだ、と思った。勿論、命の危険は伴うが、この世界はやり込んだゲームだ。死ぬ筈がない。リーア、アイリス、ゲラルドを守りながらも突破できる確信がミストにはあった。

「ああ、そういえば聞きましたか?」
「ん? 何をだ」
「これです」

 サリアは魔法新聞を差し出した。

『エルフ種の降伏!』
『人類の勢力圏広がる!』
『エルフの人権剥奪!』
『唐突なエルフ国の崩壊の裏には一体何が!?』
『これから高まるエルフ奴隷の需要上昇!』
『エルフの王、処刑予定』
『エルフの王妃、奴隷化』
『エルフ種隷属のパレードを実施予定』

「これは?」
「号外の魔法新聞です。エルフの国が崩壊したそうです。もしかしてさっきのミッションと関係あるのかと思って持ってきました」
「関係あるだろうな、俺達は一チームじゃない。無数のチームが同時にエルフの里を襲って皆殺しにしたとすれば国が崩壊するのも頷ける。しかしこうなるとエルフと人間との関係は悪化の一途を辿るだろうな」
「魔法新聞にはエルフ奴隷化を推奨する内容が書かれてますしね。これで友好ムードにはならないでしょう」
「勢力図が大きく変わったな。これはエルフの姫であるアイリスには言い辛いなぁ。国が滅んで、父親は殺され、母親は奴隷か。最低限の扱いは受けるだろうがエルフほどの美しさなら性処理させられるのは間違い無いだろうなぁ」
「そうですね」
「これを教えてくれてありがとう。先に他の三人に相談してくる。ついてくるか?」
「あー、はい。お願いします」

 そう言って部屋を出て、リーアの部屋をノックする。

「はい」
「ミストと昨日一緒に戦ったサリアという少女がいる」
「何かご用ですか?」
「アイリスの事でまずい事態になった。その相談をしたい。この後ゲラルドにも声をかけるつもりだ」
「わかりました。部屋を出ます。ゲラルドさんの部屋についていきます」

 そして部屋からリーアが出てくる。身嗜みが整えられていた。戦いに行くのとは別の姿に少しときめく。長い金髪をポニーテールにして、爪に蒼いナイルが張ってある。

「ゲラルド、少し話がある。ゲラルド?」

 ノックを数回するが、反応が返ってこない。不審に思ったミストはドアを蹴破り室内へ突入する。そこには誰もいなかった。お風呂ではない。武器や防具も全てなくなっている。

(まさか)

 ミストは部屋を出て、アイリスの部屋を叩いた。

「アイリス! 緊急事態だ! アイリス!!」

 何度呼びかけても出ないことを確認するとドアを蹴破って部屋の中に侵入する。そこにはゲラルドと同じく武器も防具、それに戦う為のアイテム全てが根こそぎ持っていっていた。
 そこでミストは確信する。
 アイリスは自身の親を救出するつもりなのだ。どういう事情でエルフ関連の情報を手に入れたか不明だが、ともかく自分の父親が殺され、母親が性奴隷にされそうになってると知ったアイリスはゲラルドを連れて旅だったのだ。

「どういうことですか? これは?」
「リーア、時間がないから簡潔に話す。第一にエルフの国が滅びて王と王妃が人間に降った。そして王は処刑、王妃は隷属化されそうになっている。つまりアイリスの両親がだ! それを知ったアイリスはそれを止めるために処刑場へ向かったと思われる」
「そんな、処刑場には沢山の兵士がいる筈です! 勝てるわけありませんよ!」
「その通りだ。このままだとゲラルドとアイリスは死亡してしまう。それはまずい。だから止めにいく」
「私も同行します!」
「サリアはどうする?」
「私も手伝う。だけど魔法武装しか使えないからあんまり戦力としては期待しないでね」
「ありがとう。処刑会場は『人類戦線第一支部サンドゥルク』。ここから数千キロ離れているが、転移魔法を使えば一瞬だ。サリア、頼めるか」
「ええ、大丈夫よ。三人くらいならへっちゃら」
「よし、では装備を整えたらすぐ出発する」

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