神様に就職しました

聖夜

#0 プロローグ

いきなり、

「ねぇ、あなた神様やらない?というかやって欲しい。まぁ選択肢ないけどね!」

と、言われた。
俺はとても混乱した。
周りを見渡すと真っ白で机1つに椅子2つだけというなんともシンプルな場所だった。1つは俺(多分)、もう1つは目の前の女性?が座っていた。

「まぁ性別はあまり関係ないかなぁー、だって私は貴方達の言う神様だからよ、名前は…まぁーあとでもいいかな。で?ちゃんと名前覚えてる?」

と言われた、と言うか心の声読まれてる

 「俺の名前は神代仁かみしろじんです」

 「よろしく!じゃあ、まず仁君はどうしてここにいるのか覚えてる?」

 「いや覚えてないです、そもそもここはどこなんですか?」

 「まぁそんな堅苦しい言葉じゃなくていいよ」

そんな事言われたから次からそうしようかな。

「とりあえず、ここは神界でどうしてここにいるのかは亡くなったからここにいます所謂地球で言うテンプレです。そして最初の話に戻るのよ」

「あぁ、テンプレかー。で、どうして俺が神様やらなきゃダメなの?」

 「まず、私が管理してる世界は無数あるのよ。で、一人一人見てられないから誰かいないか探してたんだよ。」

 「そして、俺が選ばれたと」

 「そうだよ。まぁ偶々だけどね(本当は前から目を付けていたけどね)」

 「今、なんか最後小さく言わなかった?」

 「いや?何もないけど(汗」

 「まぁいいや」

何かありそうだけど聞かなかった事にしよう。

 「で、流石に最初から何処か管理するのは無理だと思うから現人神から始めてもらうからね?所謂研修が近いかな?」

※ 現人神あらひとかみとは「人間の姿で現れた神」とされる人物のことである

あれ?なにか今おかしな文字が頭に浮かんだけど?

 「あぁ!今文字が浮かんだと思うけどこの方がわかりやすいかなっと思ってやってみたんだ!まぁそれは研修中も分からないことがあったら頭の中に浮かぶから。その説明は後でやるから」

神様の力らしい。

 「それから現人神で世界を周ったらそれからその世界を管理するの、最終的に私の世界の半分を管理してもらう事になるから」

まじかぁ管理するのできるかなぁ。

「まぁ、最初はそんなに考えなくていいよ。まず現人神からだからね!」

やる事を聞かないと。

 「で、現人神で世界を周るって他に何かやる事あるの?」

 「いや、特にないですよ」
 
 「はい?」

思わず聞き返してしまった。

 「冗談よ。神様としてのお仕事があるんだけど、世界が滅びそうな危険があった場合動いてくれればいいから。逆に言えば滅びそうにならない限り一切動かなくてもいいわ」

……つまり、『世界の滅びそうな危機』には必ず『神』として動いて欲しい。それ以外は好きにするといいって言うことか。
あれ? この世界大丈夫か? もしかして俺次第?

「そうよー、あまりお勧めしないけど知的生命体殲滅してもいいわよー」

「お勧めしない? ダメじゃなくか?」

「別にいいわよ。ただ、話し相手私だけになるわね」

「……それは…ちょっと…」

「そ、だからお勧めはしない。」

「ふーむ……」

「簡単に纏めるわよ?」

ぬ、突然の真顔。さっきまでとは明らかに空気が違う。
なんだろう、神様っぽい。

「っぽいじゃない。神様です」

「はい」

「あなたのお仕事は『世界の滅びそうな危機』が起きた場合に私の代わりに原因を排除してくれればいい。で、それ以外はあなたの好きにしていい。女神と知らしめても、人間に紛れるもよし。冒険者として世界を歩き回るも自由」

「かなり自由だね」

「いいのよ、そんなんで。女神なんかじゃなく、人間とかエルフがいいと言うならそうするわ。あなたの今後を決める大事な事。しっかり考えなさい」

ふむ、女神か……。人じゃないから3大欲求はないのか。食事がいらず、寝る必要もなく、性欲はそもそも性がない。食べる事はできるし寝ることもできなくはないか。飽きたら山なり森なり海なりに隠居して寝て過ごし、数百年後に変化を楽しむ旅に出るとかもできるな……。全スキルレベル最大のスキルコンプリートを目指すとか。肝心のお仕事だけど、排除するための力は貰えるみたいだし問題はないか? んー、別になんでもいいかな?


 「あ、それから仁君に行ってもらう世界は地球に似てるけど違う世界に行ってもらいます。まぁ私の遊び場みたいな場所だよ。
人間に獣人、エルフやドワーフ、更に精霊や妖精、魔物はもちろん天使や悪魔まで盛りだくさんです。他にも魔法があるよ」

それは面白そうだね、特に最後の。

 「それからこの世界はスキルがあるんですよ。そのスキルは努力次第で誰でも覚えられるよ。
スキルがないとダメーってわけではありませんが、スキルは動作補助で、例えば調合スキルだけど、スキルを持っていてもレシピ間違えれば当然失敗するし、タイミング間違えても当然失敗もする」

「スキルの意味……」

「レシピが分かったり、素材の状態が分かったり、タイミングが分かったりがスキルの補助で、スキルレベルが上がればその精度も上がる」

「あー、なるほど……」

「あくまで作るのはその人であってスキルではないよ」

「ゲームみたいに素材集めたらスキル使ってはい完成とはならないと」

 「そういうこと。で、これから仁君に関する説明をするよ」

やっと自分の話かぁ

 「まず性別がなくなります」

いきなり!?ᔪ(°ᐤ°)ᔭᐤᑋᑊ̣←(現実)

「無性ってこと?」

 「そうだよ。だって神様だもん、まぁ男神か女神の違いはあるけど」

そうなんだ。

 「で、君は女神だからね!」

はい!?

 「ちょっと待て、今女神って聞こえたけど
?」

 「そうだよ。だって残ってる役割女神しかないよ。男神の方は現人神でも超目立つもん(嘘だけど)」

「あ、そういえば魂も少し弄らないとダメね……」

「えっ?」

なんかサラッと爆弾発言された気がする。

「神様なるのに人間の魂のままじゃ問題がね?」

「どう変わるんだ?」

「そうねぇ。『魂は体に引っ張られる』ということを聞いたことは無い? それは実際にあってね。ある程度バランスが取れないと非常にまずいのよ。『神の器(体)』に『人間の魂』を入れると間違いなく人格が持たない。その逆『人間の体』に『神の魂』を入れると体が持たない。と言うか体が消し飛ぶ。1.5のペットボトルに海は入らない。ここまではいい?」

「うん」

「せっかく転生するのに人格が壊れてしまったらそれは『あなた』とは言え無くなってしまう。それを防ぐために『人間の魂』から『神の魂』として作り変える。価値観が少し変わったり、感情の波が緩やかになったりが主な変化かな?」

「感情の波は……まぁわかるとして、価値観の変化か」

「あなたの世界から考えると……。人を殺しても大したことじゃなくなる?」

「ああー」

「と言うか人間至上主義ってあるじゃん?」

「人間こそが最高のなんたら?」

「そうそうそれ。人間こそが一番で他の種族はゴミだなんだってやつね。この世界でも国によってはあるのよ」

「そうか……」

「でも私達『神』からしたら人間だろうがエルフだろうが獣人だろうが『あ、そう』で済んじゃうのよね。」

「それは、まぁ」

「人間を頂点にその他とやたら優劣つけたいようだけど、私達からしたら人間を含めその他大勢でしか無いわけで、例えるなら人間が蟻ね。蟻の巣という街や国で働き蟻やら女王蟻やら別に殺したところでなんとも思わないわけで」

「なるほど……」

「まぁ、この世界の蟻は魔獣なんだけどね。変えるなって言うなら変えないこともできなくは無いけど、色んな意味でお勧めはしない。人が死ぬところは普通に見かけることになる世界だからね」

「魔獣や魔物?」

「うん。移動中に襲われて帰って来ないとか普通にあるからね。別に蟻(人間)と話す気が無くなるとかそんな事はないからね? 『種族』として見るか『個人』としてみるかは貴方次第、個人的に気に入ったのがいれば加護をあげてみたり、孤児を引き取って育ててみたり好きにするといいわ」

「ふむ、むしろ価値観は変えて貰った方が楽かな」

「楽だね。確実に楽。特にあなたの世界の人は……ね。目の前で人が死んでいちいち泣いたり吐いたりしてたら生きていけないわよ」

「あ、グロ耐性も付くんだ」

「それが『普通』ってことになるからね。感情は喜怒哀楽の怒の部分は確実に弄るわ。簡単にキレられちゃね……」

「ふむ……。じゃあお願いするよ」

「任せなさい。悪いようにはしないわ。あとは…見た目はどうせなら美人にしてっと」

それからしばらくして

 「じゃああとはその世界に行くだけかな。必要な知識は入れておくから。
じゃあね!?」

《あ、そういえば仁君の向こうの名前が無かったわね。あなたに新しい名をあげる。
あなたの名は……そうね、リュアカーナ。
……いってらっしゃい、リュア。起きたら連絡してちょうだい》


その声と共に意識が無くなる。微睡みへと誘われるがままに。最後に見たのは母の様な優しい微笑み。


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