非公開日記
妻の非公開日記⑥~ばかに付ける日記はない~
令和二年 九月四日 金曜日
本当にどうしようもないほど隙だらけの男と一緒になったものだ。これで馬鹿正直なのだから損をしてばかりいないかと不安になる。別にいいように使われて人よりつかれる思いをするぐらいならどうってことないのだが,家族で使えたはずのお金を搾取されていたりカモにされていないかと思うと余計に情けなくなる。
触れたものをもとに戻したつもりなのだろうが,私が付けている日記を記したノートに手を触れたことはお見通しだ。普段目につくところでありながらなかなか触らないところにちょっとしたものを隠すのは基本中の基本だ。ただ,万が一のことを考えて異変があった時に気付けるようにトラップを仕掛けておく。私はノートを上限反転にして本棚にさしていた。薄手のノートだから背表紙のように見えるものはついていないため何も意識せずに手に取ると戻すときにはいつもの癖で天地を元通りにして戻してしまうのだ。たまにこの日記をつけようとしてノートに手を伸ばすときに,トラップを仕掛けていた私でさえもそのことを忘れているのだから,他に人の場合はなおさらだ。
しかし,私は今日気づいた。ノートの向きがいつもと違うことに。誰もいないことは間違いないにもかかわらず辺りを伺い,ノートの中身を入念にチェックした。特に変化はない。さすがに人のノートの中身にいたずらをするほど幼いはずはない。しかし,勝手に日記を見られて気分の良い気はしない私は旦那の書斎に勝手に忍び込んだ。勝手に忍び込んだとはいえ,掃除をしているのはほとんど私なのだから別段変わったことはない。ただ,しばらく掃除をしていなかったから何か新しい発見があるかもしれないと思い,内心ワクワクしながら心躍る気持ちで狭い書斎を見渡そうとした。が,あほ丸出しの旦那は人のことを疑いもせず,この世に悪は存在しない性善説を信じる聖人君子のごとくの性格をしているのか,見慣れないノートを机の上に無防備に置いていた。これが日記であることはなぜかその時分かった。理由はない。直感だ。女の感というのは恐ろしいものでどうしてこうあたるのだろう。表紙を開くと,
夫の非公開日記
と乱れた字で書かれていた。パラパラとめくると分かるのだが,このタイトルは2ページ目の文字に比べるとやけに新しい。もしかすると昨日書いたのかもしれない。これは私への当てつけだろうか。あえて分かるように私のノートの向きを変え,私に知らせるように机の上に自らの日記を差し出しているのだろうか。だとしたら相当の策士だ。私はこの男のことを長い間勘違いしていたのかもしれない。若干の武者震いと望むところだという意気込みをそばにおい,ノートのページをゆっくりと繰った。
本当にどうしようもないほど隙だらけの男と一緒になったものだ。これで馬鹿正直なのだから損をしてばかりいないかと不安になる。別にいいように使われて人よりつかれる思いをするぐらいならどうってことないのだが,家族で使えたはずのお金を搾取されていたりカモにされていないかと思うと余計に情けなくなる。
触れたものをもとに戻したつもりなのだろうが,私が付けている日記を記したノートに手を触れたことはお見通しだ。普段目につくところでありながらなかなか触らないところにちょっとしたものを隠すのは基本中の基本だ。ただ,万が一のことを考えて異変があった時に気付けるようにトラップを仕掛けておく。私はノートを上限反転にして本棚にさしていた。薄手のノートだから背表紙のように見えるものはついていないため何も意識せずに手に取ると戻すときにはいつもの癖で天地を元通りにして戻してしまうのだ。たまにこの日記をつけようとしてノートに手を伸ばすときに,トラップを仕掛けていた私でさえもそのことを忘れているのだから,他に人の場合はなおさらだ。
しかし,私は今日気づいた。ノートの向きがいつもと違うことに。誰もいないことは間違いないにもかかわらず辺りを伺い,ノートの中身を入念にチェックした。特に変化はない。さすがに人のノートの中身にいたずらをするほど幼いはずはない。しかし,勝手に日記を見られて気分の良い気はしない私は旦那の書斎に勝手に忍び込んだ。勝手に忍び込んだとはいえ,掃除をしているのはほとんど私なのだから別段変わったことはない。ただ,しばらく掃除をしていなかったから何か新しい発見があるかもしれないと思い,内心ワクワクしながら心躍る気持ちで狭い書斎を見渡そうとした。が,あほ丸出しの旦那は人のことを疑いもせず,この世に悪は存在しない性善説を信じる聖人君子のごとくの性格をしているのか,見慣れないノートを机の上に無防備に置いていた。これが日記であることはなぜかその時分かった。理由はない。直感だ。女の感というのは恐ろしいものでどうしてこうあたるのだろう。表紙を開くと,
夫の非公開日記
と乱れた字で書かれていた。パラパラとめくると分かるのだが,このタイトルは2ページ目の文字に比べるとやけに新しい。もしかすると昨日書いたのかもしれない。これは私への当てつけだろうか。あえて分かるように私のノートの向きを変え,私に知らせるように机の上に自らの日記を差し出しているのだろうか。だとしたら相当の策士だ。私はこの男のことを長い間勘違いしていたのかもしれない。若干の武者震いと望むところだという意気込みをそばにおい,ノートのページをゆっくりと繰った。
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