非公開日記

文戸玲

妻の非公開日記③~トイレの神様~



令和二年 八月二十六日 水曜日

 トイレの神様。いるのならどうか,私に微笑んでください。トイレにはそれはそれは綺麗な神様がいると聞きました。だから毎日,綺麗にしています。
 今日だってそう。男の人ってどうしてそんなにトイレを汚すことが出来るのかしら。本当に汚らしいったらない。立ち小便しては尿が跳ねる。座れと言っても立ってやる。座ってやらないなら掃除をしろというと,その時だけは便座に座ってやっていた。直後に覗きに行くと便座から尿が垂れているのだから,どんなやり方をしているのかとあきれ果てた。何とかならないものかと本気で悩みトイレトレーニングの講座をインターネットで検索したぐらいだ。尿なんてかわいいもんだ。極めつけはお腹を下した時。夫は下痢をすると必ずトイレを汚す。その汚し方が尋常ではない。ウォシュレットの下の方にちらし,便器の側面にちらし,たちの悪いのが便座を上げると夫の液状化した便が固まってこびりついていることだ。これには耐えられないほど気分が悪くなる。
 体調が悪いのならそれぐらい目をつぶってやりたいのはやまやまだが,夫はお腹が弱いことを知ったうえで,激辛料理を食べたがる。辛さを売りにしたラーメンを食べてはお腹を下す。激辛カレーを食べては腹を下す。冷たいビールを飲んではお腹がゆるくなるのにわざわざエクストラコールドとかいう氷点下のものを好んで飲む。しまいには激辛チャレンジのテレビ番組を見て「腹下した」と言ってトイレに駆け込む始末だ。
 本当に繊細なお腹の持ち主である。汚していない日も無いわけではないが,トイレに関してストレスを感じない日はない。今日も私はトイレに座る前に,上げられた便座を下ろすことから始めなければならない。トイレをしたら便座を下ろしなさい。

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