僕と彼女の小説ライフ

ヌマサン

第7話 上崎さんの家

「へぇ~、あの子澄本さんっていうんだ~」

あの後、僕は姉さんに澄本さんの名前を聞かれたので教えた。

「それで、あの子本当に彼女じゃないの?」

「ううん、違うよ。ただ委員会とクラスが同じなだけだよ」

「……そっか。幸人に春はまだ来ないんだね」

何かそんなにしみじみとした雰囲気で言われたら何か僕まで悲しくなっちゃうじゃないか!

僕はそんなことを心の中で突っ込みながら、姉さんと家に帰った。

その後はいつものように夕食を食べ、風呂に入って、学校の宿題をした。

「……メール?」

僕がベッドで横になっているとRINEラインが来た。

『滝平君、日曜日は高校の最寄り駅に9時集合で良いかしら?』

……と、朝倉先輩からのRINEラインだ。日曜日は9時に今日上崎さんを送っていった駅に集合か。

特に都合の悪いこともなかったので『了解しました』とだけ返してRINEラインを閉じた。

「明日も早いし、今日はもう寝よう」

僕は早々に眠りにつき、明日に備えた。

――――――――――

――ピピピピピピピピ

僕は目覚ましの音と共に目覚めた。

「ふわぁぁぁ……もう朝か」

僕はあの用意をいつも通りに済ませて家を出る。今日は放課後、上崎さんの家に行くことになっている。

姉さんにもちゃんとこのことは伝えた。

……まあ、寝ぼけてたからロクに話も覚えてなさそうだけど。

教室に着くと、すでに上崎さんが来ていた。

「あ、滝平君。今日は……」

「えっと、放課後に上崎さんの家に行くんだよね?」

「そうです!ちゃんと覚えててくれたんだ!良かった!」

僕はバカだけどさすがに昨日した約束は忘れないよ……。むしろ忘れてたら忘れっぽいにも程があるよ。

「それくらい覚えてるから。今日も電車で帰るんだよね?」

「はい!そうです!」

良かった……。さすがに2000円もあったら足りるだろうけど。そもそも、どれだけ電車賃かかるのか知らないんだけど。

僕たちは今日も授業を受けた。昨日、きちんと寝ていたおかげもあってか、授業中に眠くなることはなかった。

――そして、放課後。

「そ、それでは、い、行きましょうか!」

帰る準備をしていると、上崎さんは緊張した様子で話しかけてきた。

「そ、そうだね。行こうか」

僕はカバンを持って教室を後にした。上崎さんも後ろに続いてくる。

学校の外に出て、ようやく上崎さんは僕の隣に並んだ。

「そういえば、上崎さんの家って……あの駅から何駅くらい乗るの?」

僕は心配になったので上崎さんに電車を何駅乗るのか尋ねてみた。心配というのはもちろん、金銭的な意味で。

「えっと、ここから2駅ですよ。料金は確か……210円だったはずです」

210円か……それだったら往復で420円だから足りるな!よし!

「それじゃあ、上崎さん。僕、切符買ってくるよ」

「あ、はい。行ってきてください。私は先に改札通ってますね」

僕は切符売り場で切符を買い、上崎さんは一足先に改札を抜けていった。

僕も切符を買って、後に続いた。

「待たせちゃってごめん、上崎さん」

「いいえ、全然大丈夫ですよ!」

上崎さんは胸の前で手をパタパタと左右に振っている。

「電車はあと1分で来るみたいですし、間に合ったから気にしなくて良いですよ」

僕は上崎さんにそう言われて胸を撫でおろした。

その後、電車が来るまで、僕と上崎さんは今日の学校であったことなどを話して時間を潰した。

「あ、電車が来ましたよ」

上崎さんの指差した方から電車が速度を落としながらやって来た。

僕たちはその電車に揺られて、上崎さんの家を目指した。

電車の中はガラガラで会社帰りのおじさんとOLの人しか居なかった。

なので、僕と上崎さんは椅子に腰掛けた。

「いつもこんなに空いてるの?」

「うーん、この時間に乗ったのは初めてなので……」

それもそうか。月火は午前中だけだったし、昨日はこれよりももっと遅かったから分からないのも当然か。

「上崎さん、家族とかは家にいるの?」

僕がそう言うと、上崎さんの表情は影を落とした。

「ごめん!何か聞いちゃまずかったかな?」

「あ、いえ……そういうわけでは……!」

上崎さんは慌てて否定していたが、何かありそうな感じだったな……。

その後は上崎さんの家庭事情地雷を踏まないように注意を払いながら、話を続けているうちに上崎さんの最寄り駅に到着した。

「滝平君、こちらです」

駅からは上崎さんの道案内に随って、徒歩で向かった。

「ここです」

上崎さんが立ち止まった先には二階建てのアパートだった。

「やっぱり、幻滅……してしまいましたか?」

上崎さんは上目遣いで僕に問いかけてくる。でも、これで幻滅するとかありえない。別にどんな家に住もうが、人の勝手だ。

「ううん、別に。そんなのじゃ幻滅したりしないよ」

「……それなら良かったです」

そう言って上崎さんは未発達の胸を撫でおろした。

「それじゃあ、私の家は2階なので」

上崎さんは外付けの階段を上がっていく。僕もその後を離れずについていく。しかし、階段の軋む音は気味が悪い。

「お邪魔します」

僕は上崎さんに鍵を開けてもらって中に入る。

扉を開けると、窓から差し込む西日が目に入って眩しかった。

玄関の右側に三畳ほどの台所。反対側にはユニットバスとシャワーが一つ。その奥には六畳くらいの広さの和室があった。奥にはベランダがついている。

間取りだけ見れば単身者用のものだ。しかし、内部は中々酷い有様だった。

壁は所々が剥がれ落ち、畳も傷がつきボロボロだった。

上崎さんは部屋に入るとすぐに和室の奥の大きな窓を開けて換気をした。

「あの、滝平君。怒ったりしてないですよね?」

「え、僕そんな怒ってる風に見えた!?」

僕がそう言うと、上崎さんはコクリと首を縦に振った。

正直、怒っていないのかと言えばウソになる。こんなところでJKが一人住まいをしているのか。親は一体何をしているのか。

そんなことを考えていたから表情が強張ってしまっていたのだろう。

「あ、お茶入れてきますね。そこで座っててもらっていいですか?」

「あ、うん。分かった」

僕は上崎さんに言われた通りに焦げ茶色のちゃぶ台に正座して部屋の隅にカバンを置いた。

僕は上崎さんがお茶を入れてくれている間に和室を見渡した。

部屋の隅に綺麗に畳まれた布団。綺麗に畳まれた洗濯物……いや、何で僕を呼んだのに下着とか一番上に置いちゃってるの!?

……今のは見なかったことにしよう。

そして、畳に積み上げられた本の数々。教科書類とはきっちり分けて置かれている。

「滝平君、お茶持ってきましたよ」

「あ、ありがとう」

僕は上崎さんからお茶を受け取った。喉が渇いたので、一気に飲み干してしまった。

「それじゃあ、小説書くの始めましょうか」

僕と上崎さんは小説を書くという本題に移った。

「あの、上崎さん。オリジナルの小説を書こうと思うんだけど……いいかな?」

「それくらい全然大丈夫ですよ」

僕は急に二次創作は止めて一次創作の方をやりたいなんて言ったら怒られると思っていたけど、全然大丈夫だった。

そのことでホッとした。

「それじゃあ、まず書くジャンルはどうしますか?」

「とりあえず、イメージしやすいから学園ものとか書きたいんだけど……」

「それじゃあ、ジャンルは学園ものにしましょう。次は……」

……こうして上崎さんの家で僕の小説書きとしての人生が始まった。

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