僕と彼女の小説ライフ

ヌマサン

第3話 委員会

「分かった。家に帰ったら書いてみるよ」

「うん。それじゃあ、今書いてみてください」

この瞬間、僕の時だけが凍てついたのかと思った。

「え、今?」

「うん、『~したら~する』とか『後でするよ』っていう人は大体その時になってもやらないじゃないですか?」

この意見は的を得ている。確かに上崎さんの言う通り、『~したら~する』とか『後でするよ』と言っている人はその時になってもやらない。

「……分かった。でも、どんな感じで書けばいいか分からないし……」

「滝平君は石橋を叩いて渡るくらい慎重ですよね」

「……もしかして、褒めてくれてるんですか?」

冗談めかして僕が聞いてみると、上崎はニコリと笑みを浮かべた。

「いいえ、そんなに石橋叩いてたら橋が壊れちゃいますよって言いたかっただけです」

「そうだね。確かに僕は慎重すぎだった。じゃあ、とりあえず書いてみるよ」

僕がそう言うと、上崎さんは優しい眼差しで僕を見ていた。

「それじゃあ、ラブコメ……でしたね。滝平君が書きたいと言っていたのは」

「そうだけど、実際問題どうやって書けばいいのか……」

僕はとりあえず、目の前にノートを広げてみたが、何も思い浮かばない。

「じゃあ、ラブコメを書くのは後にしましょう」

「え、それじゃあ、何を……」

僕が言いかけたところで、僕の鼻に上崎さんの力を籠めれば折れてしまいそうな細い指があてがわれた。

「それじゃあ、この状況を前にして思ったことを書いてみてください」

この状況を……!余計に難しいんだけど!

「状況を整理してみてください。順番に、ゆっくりと」

えっと、僕の鼻に上崎さんの指が当たっている。上崎さんの指は力を籠めれば折れてしまいそうなほどに細い。上崎さんは笑顔。上崎さんは制服で、胸元が見え……無くて。上崎さんの肌は朝日に当たってキラキラしている。そして、周りのクラスメートたちが僕と上崎さんをちらちらと見ている。

……いや、待った。クラスメートたちがちらちらとこちらを見ている。ダメじゃないか!これじゃあ、傍から見れば朝から教室でイチャコラしてるカップルみたいじゃないか!

僕は急いで上崎さんの手を引いて、教室の外へと飛び出した。

「滝平君、痛い!」

「あ、ごめん!」

僕は慌てて、掴んでいた上崎さんの手を離した。

「滝平君、どうして教室の外に……」

「上崎さん、あの状況をもう一度思い出してみてほしいんだ」

僕がそう言うと、上崎さんはどういうことか理解したのか、顔を真っ赤に染めてうつむいた。

「……確かに、あの状況は……恥ずかしいですよね……」

「でも、ごめん。せっかく教えてくれてたのに」

「いえ、私の方こそ、場もわきまえずにあんなふしだらなことを……」

ふしだら……今時あまり聞かないよな。それにしてもどことなく上崎さんって言葉遣いが丁寧なんだよな……。ま、まさかどこかのお金持ちのご令嬢……だったり?

いや、それは今考えることじゃないな。

「あと、手……きつく引っ張っちゃったみたいで、ごめんなさい」

「いえいえ、それは大丈夫ですからお気になさらないでください」

「それなら良かった」

僕が腕時計を見ると、時計は8時28分を示していた。8時半に教室に入って着席していないと遅刻扱いになってしまう!

「上崎さん、急いで教室まで戻ろう!」

「そうですね!」

僕と上崎さんが教室へ戻ると、少々視線を感じはしたもののそれ以外のことで別段変わった様子はなかった。

僕たちが教室に戻ってきてすぐに先生がやってきた。

「それじゃあ、HRを始めるぞ」

そんな先生の一言で朝のHRが始まった。今日は委員会を決めて、その後は各委員会同士で集まって詳しい説明を聞いて終わりだ。

そして、このクラスは全員で36人だ。そして、委員会は全部で10もある。

――――――――――
学級委員2名(委員長・副委員長 各1名ずつ)
図書委員3名
風紀委員4名
広報委員3名
美化委員4名
体育祭実行委員4名(男女2人ずつ)
文化祭実行委員4名(男女2人ずつ)
放送委員会4名
選挙管理委員会4名
保健委員会4名
――――――――――

ざっとこんな感じだ。僕は図書委員、美化委員、保健委員辺りが良いと思っている。

「それじゃあ、上から順番に決めていくぞ」

まず、学級委員だが、誰も挙手しなかった。なので、一旦飛ばして図書委員から決めることに。

図書委員は僕と上崎さんだけが手を上げた。

僕は委員会が決まってホッとした。これで人前で話したりしなくて済む。

上崎さんもおそらく同じことを思っていたりするんじゃないだろうか。

その後、30分に渡って委員会決めが行われた。委員会決めが終わったのは9時半。小一時間に渡って委員会決めは行われていたということになる。

結局、学級委員長には彰二がなっていた。これには僕も驚いた。そして、副委員長は僕の後ろの席の武淵夏海さんがすることになった。

そして、図書委員には僕と上崎さんの他にもう一人。藍色の天然パーマが特徴の澄本紗弓さんが図書委員になった。背丈は小柄な上崎さんより頭一つ高い。そして、澄本さんは彰二の隣の席の人だ。

そうして、僕と上崎さん、澄本さんの3人は図書委員会の詳細を聞きに行くことに。

集合場所は図書委員会の活動場所である図書室とのことだった。

「上崎さん、やっぱり緊張してる?」

僕は表情の強張っている上崎さんに声をかけた。澄本さんが近くにいるからか、ずっと黙ったままだ。

「うん、初対面の人と話すのはちょっと……滝平君は平気なんですか?」

「全然平気じゃないよ……何かこっちを睨んでるし……」

そう、澄本さんがさっきから僕と上崎さんをじっと見てきているのだ。別に何か深いにさせることはしたことはない。

……というか、そもそも話したことなんかないよ!

「滝平君が話しかけてきてくれませんか?」

「ぼ、僕が!?」

――僕にも上崎さんにも初対面の人に話しかける勇気もコミュ力もない。

どうしようかと思ってるうちに図書室に到着。

図書委員は僕たちの他に一年生が6人。そして、二年、三年が9人ずつ。

「それじゃあ、委員会の仕事の紹介から始めていこうと思います!」

部長らしき人の号令で仕事内容の紹介が始まった。

まず、仕事内容は7個ある。

1.カウンター業務。本の貸し出し、返却、予約などをする。昼休みと放課後に行う。
2.ラベル貼り。本の返却がしやすいように新しい本が入ってくるたびに行う。
3.本の返却と整理。返却された本を元の棚に戻す仕事。
4.蔵書点検。学期ごとに一度、本の損傷具合や正しい位置にあるのかを調べる。
5.ホームページの更新。開館日の連絡と新書追加の案内をする。
6.ディスプレイ。質素な図書館をイラストを描いたりしてデコレーションする。
7.選書。生徒のリクエストのあった本や生徒が好みそうな本を委員会メンバーで書店に行ったりして購入する。

1,2,3,5,6,7は当番制だ。4は終業式の日の前日に行われる。

当番は平日の昼休みと放課後。曜日ごとに分担されるらしい。

図書委員は全員で27名。これを各曜日に4人ずつ。残りの7人はディスプレイの仕事をする。

ちなみに、僕と上崎さんは水曜日の当番になった。そして、澄本さんはディスプレイの班になった。

その日は当番になった曜日のメンツで自己紹介をして解散になった。そこでも僕と上崎さんはロクに自己紹介が出来ず、先輩たちに失笑されてしまった。

どうして、脳内ではあれだけ完璧に自己紹介が出来るのに、何故それを言葉にすることが出来ないのか……。

ともあれ、明日が水曜日なので早速当番をすることになりました。

……大丈夫かな。不安でしかない。

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