メガネと元借金取りと6匹のこやぎ

かのちゃん

13 ノリさん

ふふふーん♪
今夜は、俺はあの人に会いに行こう。
着いたのは、『トリヤマ』という焼き鳥屋さん。
ガラッ。

「邪魔するでぇ〜。」

「カズさん!」

ノリさん!久しぶりやなぁ!

「久しぶり!」

この人、俺の知り合い、畑典彦。俺のよき相談相手で、一人でこの焼き鳥屋をやってるんや!

「いきなりアパート解約するって言ったから、びっくりしたよぉ!」

へへっ。悪かったな。
ほな、ビール飲もっかな!あと、鶏皮も!

「はいはい。カズさん、鶏皮好きだもんね。」

ノリさんは、ビールをグラスに注いで、俺の前に置き、鶏皮を2本乗せた皿も置いた。

「へい、お待ちっ。」

おおきに!
ぱくっ!
ん〜!んまーい!
ゴクゴクゴク……あー!ビールと一緒に飲むと、うまいなぁ!

「カズさん。今、なにしてんの?借金取りの仕事は、続いてんの?」

やめた。

「えっ!?辞めたの!?」

言ってへんやったっけ?

「初耳だよぉ!どして!」

……大切な場所ができたんや。ほっこりする、温かいとこ。

「ん?」

俺、子守りしてんねん。6人の。

「ろ、6人の子供を!?カズさん1人じゃ、大変だろ!」

いや、もう一人おる。女が。

「つまり、その女の人が母親代わりで、カズさんは、父親代わりだな。」

そういうことや。

「どうして子守りをするようになったの?」

俺は、ビールを一口飲んで、口を開いた。

「その子達の本当の母親がな、育児放棄しようとしててん、その母親の親友が、その母親代わりの女で、キレて言い合いになったんや。俺、その姿を見て、心を打たれたんや。俺にも、そんなことがあったなぁって。だから、父親代わりなろうと決めたんや。」

「ははーん。」

うわっ!ノリさん、気持ち悪い顔になってんで!

「カズさんさー、ひょっとして、その女の人が好きだから、一緒に住んでんでしょ?」

ブー!
俺はビールを吐き捨てた。

「何言うてんねん!あんなブスで、地味でメガネでまな板の女、誰が好きになんねん!ノ、ノリさんも知っとるやろ!?俺の好きなタイプは、美人で、茶髪のロングで、こーんな胸がボイーンとした姉ちゃんや!」

「カズさんわかりやすい。」

……まあ、正直言うと、まさにそれやな。
俺、あの女に惚れてんねん。すんごく。
まるで……あの人に似てて……。

「そんならさ、告っちゃえよ。」

はあ!?

「告っちゃって、その人と結婚すれば、正式に6人の子供達の父親になれるじゃん!」

そんな簡単なこと……ある。

「少しずつ、希望を持とうぜ!」

ノリさん……ありがとな!






「ただいまぁ〜。」

「カズ〜!お帰り〜!」

「どこ行ってたの〜?」

「まあ、ちょっとな……。」

「あ!焼き鳥だぁ!」

「嘘!」

「知り合いに、サービスしてもらったんや。」

わあ〜。夜ご飯に食べようね!

「やったぁ〜!」

「その前に、あんたらはお風呂!」

「はーい!」

「俺は勉強するよ。」

ご飯までに戻るのよ〜。
ん〜。鶏皮とムネ皮とつくねと特上もも!おいしそー。

「……あ……あの……。」

どうかしましたか?カズさん。

「話したいことがあんねん。」

話したいこと?なんでも聞きますよ。

「あ……あの……俺……す……す……す……。」

「もしかしてカズさん、すき焼きが食べたいんですか?」

「へっ?」

ちょうど、すき焼きの材料を買ってきたんですっ!私も食べたいなぁって思って!お肉は奮発して買っちゃったんです♡

「カズもお肉、食べようよ〜!」

「あ……せやな。」

(この女……鈍感すぎやろ!)

続く!


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