メガネと元借金取りと6匹のこやぎ

かのちゃん

10 陽菜の恋の悩み!?

今日もいい朝だなぁ。
さーて、朝食の準備をしよう。

「おはよう。」

陽菜、おはよう。

「手伝うよ。」

陽菜がエプロンを付け始めた。
いつもありがとね。陽菜がいると、助かるよ。

「うん……。」

……何かあった?

「へっ?」

最近、なんか元気ないような気がして……。

「お母さん。」

ん?

「……お母さんは、カズのこと、好き?」

!?
な、なに言ってんの!?
カズさんは、同居人として好きよ!

「恋愛対象としては?」

ないよ!全く!

「そうなんだ……。お母さんって、男の人と付き合ったことあるの?」

いないいないいない!そもそもお母さん、彼氏いない歴29年だし!それに、こんなに地味でメガネだよ!?彼氏なんてできっこないよ!

「……。」

陽菜……もしかして……。






「いってきます。」

いってらっしゃい!

「……陽菜、なんか様子が変やなぁ。」

「なんかあったの?」

あー、なんでもないよっ。

「てかさ、陽菜姉、可愛くなった気がするんだけど。」

さすが女子……鋭いなぁ。

「俺もそう思った!」

「お母さん、陽菜姉となんかあったの?」

……あのね。私の勘だと……。

「好きな人がいるっぽい。」

「……えーっ!?」

みんなが驚いた。

「どんな人!?」

「かっこいい!?」

そこまで聞いてないよ〜。
それっぽかったからぁ〜。

「なんじゃそりゃあ〜。」

「そこ聞かないとぉ〜。」

お母さん、恋愛話はぁ……ちょっとぉ……。

「知ってるよ、陽菜の好きな人。」

!?

「兄ちゃん、ホント!?」

「教えて教えて!」

「そこまで話したら、学校に遅れるで!」

「陽菜の一個上の先輩の内野ってやつ。俺、帰り道に見たんだよねぇ。2人がコンビニの前にいるとこ。」

でも、なんで陽太達と一緒に行かないんだろ。

「あいつ、野球部で朝早くから練習やってるから、それが見たいからじゃない?」

そっかぁ〜。

「そういうお年頃やもんなぁ〜。」

「ねえねえ!カズって好きな人、いるの?」

「ブー!」

ああ!カズさん、味噌汁を吹き出したよ!
大丈夫ですか!?

「あ……ああ……。」





「……。」 


「おう!陽菜!」 


「カズ!」
 

「学校帰りか?」


「うん……。」


「ちょうど、晴連れて散歩してたんや。」


「そうなんだ……。」

「なんや?元気ないなぁ。」

「ちょっとね。」

「どら、近くに公園あるから、そこで話しよう。」






「はい。喉乾いたやろ。」

「ありがとう……。」

「……泣いてるんか?」

「……好きな人がいたんだ。野球部の先輩。よく一緒に帰ったり、昼休みに図書室で勉強したり、話したりしてたんだ。私、勇気を出して告白したんだ。けど……先輩、好きな人がいるって、断られちゃった……。失恋って、こんなに辛いんだね。初めてだよ、こんな気持ち……。」

「……そんだけ、その男が好きやったってことやろ。振られて涙を流すってことは、本気で好きやったってことや。」

「いいこと言うじゃん。」

「いやあ〜。そこまで褒められると、照れるで〜♡」

「カズにはいたの?好きな人。」

「おったで。陽太と同い歳の頃な。」

「そうなの?」

「そや。そいつは、学校のマドンナで、よーそこら辺の男子に告白されよったわ。俺も、その中の1人やったんや。けどな……ある日、その子の父親が犯罪を犯してしまって、色んな人から目ェ付けられて、母親と一緒に田舎に引っ越したんや。好きっていう気持ちを、伝えられず。」

「その人、今は……?」

「同級生から聞いたんやけどな、ビルの屋上から飛び降り自殺したって……。21の若さで。会社に父親のことバレて、精神的に落ち込んでたらしいって。」

「……そうなんだ。」

「もし俺が、彼女のために何かしてあげてたら、こんなことにならんやったかもしれんと、今でもずっと後悔してんねん。手を差し伸べてやれてたらって。」

「その人、カズのこと、空の上から見てると思うよ。私達のこともねっ。」

「せやな。さ、帰るかぁ!今日の夜ご飯は、アジフライって言うてたで!楽しみやなぁ、晴ぅ〜。」

「う〜!」

「アハハハ!」

続く!

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