ブルー・ウルフ

立三 夕愛


ふたりで話すようになってから1ヶ月が過ぎました

そんなある日、ロウが病院へ運ばれました

病院に着くと病室の前にジンがいました

「ジンさん」

「アオさん、来てくれたんですね」

「ロウは大丈夫なんですか」

「はい。今は寝ていますが、手を少し切った程度なので大丈夫です。
ただ興奮していたので、薬で眠らせてもらいました。
でも明日には退院できます」

「そうですか。それで何があったんですか?」

「それが急に暴れだしたみたいなんです。
先程まで警察がいたのですが、その方の話では、BARで女性と話をしていたようなのですが。
気づいたときには知らない男性に掴みかかっていたようなんです。
もみあいになって割れたグラスで手を切ってしまって、それでもロウさんが暴れるので警察が呼ばれたようです。
落ち着いてから病院へ連れてきたら、また暴れだしたのでしかたなく眠らせたというわけです」

「警察のほうは大丈夫なんですか?」

「警察が駆け付けたときには相手の男性も女性もいなくなっていたので、とりあえずは大丈夫みたいです。
今後は気をつけて行動するように、と注意を受けましたが、特にお咎めはありませんでした。
ロウさんは怪我をしているので、もし被害届をだす場合は警察署に来てください、と話をして終わりました」

「そうですか」

病室へ入ると、眠っているロウを見つめました


深夜に目を覚ましたロウは、ベッドに頭をのせて寝ているアオに気づきました

「あれ。
ああ。やってしまった」

天井を眺めながらひとりごちました

手をアオの頭にのせて撫でていると、そのまま眠ってしまいました

明け方目を覚ましたアオは病院をあとにしました


ジンさんから退院したとのメールがきたので、次の日ロウの家に向かいました

「やあ」

「おじゃまします。怪我の具合はどう?」

「もう平気だよ」

「よかった。痛みはない?」

「少しね。でも大丈夫だよ」

「よかったわ」

「病院に来てくれてありがとう」

「うん。
それでどうしてあんなことになっていたの?」

「飲み過ぎたんだ」

「喧嘩をしたって聞いたわ。どうして喧嘩になったの?」

「ああ。
綺麗な女性がいたから仲よくなろうとしたんだ。でも相手がいたみたいでね」

「うん。
それでなぜロウが怒るのよ」

「なんでかな、なんかむかついたんだよね」

「ふーん」

庭ではリュウがスクワットをしていました


「今日は荷物が大きいね。どこかへ行くの?」

「へへ。今日からここに泊めてもらおうかと思って」

「ん?ここに泊まるって聞こえたんだけれど」

「よろしくお願いします」

お辞儀をしました

「なんで急に」

「怪我をしているから不便かと思って。
それにほとんど毎日ここへ来ているから、丁度いいじゃない」

「丁度いいの意味が分からないよ。
怪我はしていても困っていないから大丈夫だよ」

「まあ、見張りってことよ」

「は?」

「これ以上怪我をしないように見張るから安心して」

ウインクをして微笑みました

「なんだよ」

「嫌なら帰るけれど、一応家賃も払うわよ。
そんなには払えないけれど、一泊5千円でどうかしら?」

「まじで言っています?」

「言っています」

「分かったよ。
別に泊まるのは構わないよ。部屋も空いているし家賃もいらないよ」

「部屋を使わせてもらって、光熱費もかかるんだから、それは払わせてもらうわよ」

「別にいいよ。もともと空いている部屋だしね」

「それだと気になるわ」

「じゃあ一泊500円払ってよ、光熱費代として。部屋は空いているから受け取れないよ」

「本当に?安すぎるわよ」

「そんなことないよ。これならお互いWIN WINだろう」

「うーん?」

「部屋に案内するよ」

案内された部屋はとても広くて、なんども家賃を払わせてほしい、と言いましたがきいてくれませんでした

アオは荷物を置いてから仕事へ出かけて行きました

ロウは鼻歌をうたっていました



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