能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

フェアリーの特性

「おっ、あれって俺が初めて戦った骸骨がいこつモンスターじゃないか」

フェアリーの先導で森の中を歩き始めてからわずか数分。

俺達の視線の先には、カラカラと乾いた音を立てながら闊歩かっぽする骸骨兵士の姿があった。

「あっ、ホントです! ……なんか骸骨って明るい所で見ると、不気味さよりも違和感の方が強いですね。夜に遭遇した時と印象が全く違います」

「だな。まぁ、オバケ屋敷に来た訳じゃないんだし、怖くなくても特に困らないんだけど」

仮に、オバケ屋敷のオバケが怖くなかったら、何が面白いんだって話になるけどな。

「……オバケ、屋敷?」

「ああ、いや、こっちの話。さて、そんな事より、フェアリー。さっきから、一人で何やってんだ? パッと見た感じ、シャドーボクシングしてるみたいだけど」

俺達が話している間、ずっと一人で拳を突き出していたフェアリーが、“ようやく気付いてくれた!”というような顔を見せる。

そして、骸骨兵士を指差して、再び拳を放つ。

「ふむ……。あの骸骨兵士を倒してくれば良いのか?」

「…………(コクコクッ)」

俺の質問に対し、首を縦に振って応えるフェアリー。

まぁ、大幅なレベルアップでステータスも上がってるし、あのくらいのモンスターなら簡単に倒せるけど、いったい、どんな意図があるのやら。

そんな疑問を抱きつつ、俺は能力値リセットで、ステータスを敏捷力びんしょうりょくに最適化し、一瞬で骸骨兵士と距離を詰める。

そして、すかさず筋力に最適化し直して、その身体を一撃で粉砕した。

「うん、予想通り呆気あっけなく片付いた……けど、敏捷力が上がった事で、今までと感覚が変わってるな。危うくけそうになった」

これは筋力についても注意が必要だな。

モンスター相手ならまだしも、人間相手に戦う時は特に。

殺す気もないのに、軽く叩いただけでオーバーキルとか御免ごめんだぞ。

「それで、フェアリーさん。今の戦闘には、どんな意味があったんですか?」

「…………(フニッ!)」

フェアリーが腕に力を込め、力こぶを作るようなポーズを取る。

しかし、本来ならムキッ! という擬音ぎおん相応ふさわしいのだけど、フェアリーの身体がプニプニしているせいで、変な擬音が聞こえた気がした。

あっ、フェアリーも自覚があるのか、なんかへこんでるっぽい。

「気にするな。筋肉ムキムキのフェアリーとか誰も見たくないから。それより、そのジェスチャーは……」

「もしかしたら、“ステータスを見てっ”という事でしょうか? どれくらい強くなったか――つまり経験値の増加を確認して欲しいという意味かと思います」

「なるほどな。えーっと?」

リリィの推測を信じてステータスを覗き、経験値のらんを確認する。

すると、かつて戦った時とは比べ物にならないほど、一度の戦闘で多くの経験値を獲得していた。

そして、ここに来て、ようやく気付く。

あの時と今とで決定的に違う点は二つだけ。

一つは、レベルが大幅に上がっていること。

ただし、それが獲得経験値に影響しているとは思えない。

なら必然的に答えは一つ。

あの時は、一緒にいなかったフェアリーが原因に違いない。

とはいえ、見たところ、フェアリーが何か仕掛けた様子はない。

ということは……。

「もしかして、お前がそばに居るだけで獲得経験値が上がる?」

「えぇっ!? そんな、まさか!?」

「…………(ドヤァッ♪)」

本日、二回目のドヤ顔、頂きました。

しかし、話は、それだけで終わらない。

「えっ? 私ですか?」

フェアリーが、今度はリリィを指差して力こぶを作る。(作れてないけど)

その仕草から、何かを察した様子のリリィが恐る恐るといった様子で目をつむり、すぐに開いて虚空こくうを見つめる。

俺には見えないけど、たぶん、ステータスを確認してるんだろう。

そして、俺の予想が正しければ……。

「なぁ、リリィ。もしかして」

「すごいっ! リリィさんってば、すごいです! 私はほとんどモンスターを倒してないのに、レベルが3に上がってます!」

あまりの興奮に我を忘れてしまったのか、フェアリーをむぎゅ〜! と全力で抱きしめるリリィ。

いくら物理攻撃無効のフェアリーとはいえ、さすがに窮屈きゅうくつそうだ。

まぁ、それでも悪い気はしていないようで、満更まんざらでもない表情だけど。

「それにしても、獲得経験値の増加に、経験値の分配か……。やっぱり、フェアリーって、とんでもない奴だったんだな」

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