能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜
異常事態
「あっ、そうだ! あんなに強い緋熊を倒したんですから、そろそろレベルアップしていても、おかしく無いんじゃないですか?」
もうすっかり気分が切り替わった様子のリリィが、妙なハイテンションを引きずったまま、そう尋ねてくる。
その代償として、俺が地獄を見る羽目になったけどな。
まぁ、あの気まずい空気が続くよりはマシだったと割り切って、黒歴史の事は忘れよう。
「そういえば、そうだな。戦ってる時は勝つ事に必死だったし、帰ってからは半ば放心状態だったから、経験値の事なんて、すっかり忘れてたわ。どれどれ……」
心の中で、“ステータス”と念じると、目の前に複数の文字と数字が浮かび上がった。
その中から目的の欄――レベルについて記された部分に視線を向ける。
「…………」
「え、えっと……。ハヤト様?」
困惑したようなリリィの声が洞窟に響く。
しかし、その言葉は、俺が意味を認識する前に耳の中を通り過ぎた。
何故なら、俺の意識は表示されたステータスに釘付けなっていたから。
そして、なにより、その意味不明な内容を理解するのに手一杯だったからだ。
「…………ない」
「えっ?」
「……あり得ない」
何故、どうして、どんな切っ掛けで、こんな事が起きた?
慌てて記憶を掘り返してみても、緋熊を倒した事以外に思い当たる節はない。
だけど、緋熊を倒しただけで、こんな結果を招くなんて考えられない。
「な、何が起きたんですかっ。ハヤト様! 私にも説明して下さい!」
先程までの浮かれっぷりから一転して、恐怖に煽られたようなリリィの声音。
そんな彼女を落ち着かせるように、その華奢な肩に手を伸ばし、そっと支えた。
あるいは、それは自分自身を冷静にさせるための行為だったのかもしれない。
そして、俺は深く息を吸って、緩やかに吐き出す。
それから、もう一度、息を吸い、不安に揺れるリリィの瞳を見据えて、ゆっくりと口を開いた。
「落ち着いて、聞いてくれ。何故か、俺のレベルが滅茶苦茶…………高くなってた」
「……へっ?」
その宝石のような眼をパッチリと見開き、口もポカ〜ンと開けて、間抜けな声を漏らすリリィ。
そんな彼女に言い含めるように、俺は再び言葉を紡ぐ。
「具体的には、俺のレベルが10になってるんだ……」
「は、はぁ……。えっと、それって、何か問題があるんでしょうか? むしろ歓迎すべき状況な気が……」
「いやいや、大問題だろ!?」
「ひうっ!?」
やべっ、珍しく察しの悪いリリィが焦れったくて、つい声を荒げてしまった。
別に脅かすつもりなんて無かったのに。
俺は、これ以上、彼女を怖がらせないようにと、掴んでいた肩から手を離して、一歩だけ後ろに下がる。
「わ、悪い……。急に怒鳴ったりして。でも、これは大変な事なんだ」
それから俺は、自分の考えをリリィに説明した。
つまり、緋熊を倒しただけで、こんな急激なレベルアップを果たせる訳が無いという事を。
なんせ緋熊は、フェアリーと違って、現代でも存在を確認されているモンスターだ。
だからこそ、勉強会で話題に上がり、戦いに慣れないうちは手を出すなと釘を刺されたんだから。
しかし、それは裏を返せば、戦いに慣れた者がチームを組めば問題なく倒せるという意味に取れる。
であるならば、緋熊が破格の経験値を誇っているという情報が出回らない筈が無い。
だから、これは原因不明の異常事態と考えるべきで、決して楽観視して良い状況じゃないと思う。
これを“単に降って湧いた幸運だ”と、手放しで喜べない程度には、この世界に対して警戒してるからな。
上手い話には裏がある。
フェアリーが見つからないと嘆いた時にも痛感したことだ。
「……なるほど。少し疑心暗鬼になり過ぎではないかとも思いますが、確かに油断は禁物ですね。でも、いったい何が原因なんでしょうか?」
「全く見当も付かないな。この森で襲われてたリリィをモンスターの集団から助けた時は、殆ど経験値が貯まらなかったのに。とはいえ、あれから戦ったのは緋熊だけだし。他には特に変わった事なんて……ん?」
「おやっ?」
突然、肩を叩かれた俺と、何かに気付いた様子のリリィが、同じ方向を見つめる。
そこには、いつの間にか目を覚ましていたらしいフェアリーが浮かんでいて、なにやら胸を張って得意げな顔を見せていた。
もうすっかり気分が切り替わった様子のリリィが、妙なハイテンションを引きずったまま、そう尋ねてくる。
その代償として、俺が地獄を見る羽目になったけどな。
まぁ、あの気まずい空気が続くよりはマシだったと割り切って、黒歴史の事は忘れよう。
「そういえば、そうだな。戦ってる時は勝つ事に必死だったし、帰ってからは半ば放心状態だったから、経験値の事なんて、すっかり忘れてたわ。どれどれ……」
心の中で、“ステータス”と念じると、目の前に複数の文字と数字が浮かび上がった。
その中から目的の欄――レベルについて記された部分に視線を向ける。
「…………」
「え、えっと……。ハヤト様?」
困惑したようなリリィの声が洞窟に響く。
しかし、その言葉は、俺が意味を認識する前に耳の中を通り過ぎた。
何故なら、俺の意識は表示されたステータスに釘付けなっていたから。
そして、なにより、その意味不明な内容を理解するのに手一杯だったからだ。
「…………ない」
「えっ?」
「……あり得ない」
何故、どうして、どんな切っ掛けで、こんな事が起きた?
慌てて記憶を掘り返してみても、緋熊を倒した事以外に思い当たる節はない。
だけど、緋熊を倒しただけで、こんな結果を招くなんて考えられない。
「な、何が起きたんですかっ。ハヤト様! 私にも説明して下さい!」
先程までの浮かれっぷりから一転して、恐怖に煽られたようなリリィの声音。
そんな彼女を落ち着かせるように、その華奢な肩に手を伸ばし、そっと支えた。
あるいは、それは自分自身を冷静にさせるための行為だったのかもしれない。
そして、俺は深く息を吸って、緩やかに吐き出す。
それから、もう一度、息を吸い、不安に揺れるリリィの瞳を見据えて、ゆっくりと口を開いた。
「落ち着いて、聞いてくれ。何故か、俺のレベルが滅茶苦茶…………高くなってた」
「……へっ?」
その宝石のような眼をパッチリと見開き、口もポカ〜ンと開けて、間抜けな声を漏らすリリィ。
そんな彼女に言い含めるように、俺は再び言葉を紡ぐ。
「具体的には、俺のレベルが10になってるんだ……」
「は、はぁ……。えっと、それって、何か問題があるんでしょうか? むしろ歓迎すべき状況な気が……」
「いやいや、大問題だろ!?」
「ひうっ!?」
やべっ、珍しく察しの悪いリリィが焦れったくて、つい声を荒げてしまった。
別に脅かすつもりなんて無かったのに。
俺は、これ以上、彼女を怖がらせないようにと、掴んでいた肩から手を離して、一歩だけ後ろに下がる。
「わ、悪い……。急に怒鳴ったりして。でも、これは大変な事なんだ」
それから俺は、自分の考えをリリィに説明した。
つまり、緋熊を倒しただけで、こんな急激なレベルアップを果たせる訳が無いという事を。
なんせ緋熊は、フェアリーと違って、現代でも存在を確認されているモンスターだ。
だからこそ、勉強会で話題に上がり、戦いに慣れないうちは手を出すなと釘を刺されたんだから。
しかし、それは裏を返せば、戦いに慣れた者がチームを組めば問題なく倒せるという意味に取れる。
であるならば、緋熊が破格の経験値を誇っているという情報が出回らない筈が無い。
だから、これは原因不明の異常事態と考えるべきで、決して楽観視して良い状況じゃないと思う。
これを“単に降って湧いた幸運だ”と、手放しで喜べない程度には、この世界に対して警戒してるからな。
上手い話には裏がある。
フェアリーが見つからないと嘆いた時にも痛感したことだ。
「……なるほど。少し疑心暗鬼になり過ぎではないかとも思いますが、確かに油断は禁物ですね。でも、いったい何が原因なんでしょうか?」
「全く見当も付かないな。この森で襲われてたリリィをモンスターの集団から助けた時は、殆ど経験値が貯まらなかったのに。とはいえ、あれから戦ったのは緋熊だけだし。他には特に変わった事なんて……ん?」
「おやっ?」
突然、肩を叩かれた俺と、何かに気付いた様子のリリィが、同じ方向を見つめる。
そこには、いつの間にか目を覚ましていたらしいフェアリーが浮かんでいて、なにやら胸を張って得意げな顔を見せていた。
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