能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

リベンジ失敗

「……って、あぁっ! そう言えば、まだ【アレ】を返して貰ってません! フェアリーさん! 起きて下さい、フェアリーさん!」

俺がリリィの将来について案じている横で、彼女は必死にフェアリーの肩をすっていた。

ちなみに、この拠点に帰ってくる道中で、既にフェアリーは眠そうに目をこすっていたけど、気付けば完全に寝落ちしている。

今も適当に草を盛って作った簡易ベッドでスヤスヤと眠っていて、リリィの猛攻に対してビクともしていない。

確かに、今夜は色々とありすぎたし、フェアリーに至っては死にかけてるしな。

不安や緊張で疲れ果てるのも無理はない。

まぁ、コイツに関しては、そんなこと関係なしに、しょっちゅう昼寝してるけどさ。

とはいえ、俺もリリィの大切な物とやらが何なのか気になるし、フェアリーがった訳じゃないなら、改めて森を探す必要もある。

それに、二人の仲直りに関しても有耶無耶うやむやになってたし、気持ち良さそうに寝てるところ申し訳ないけど、フェアリーには起きてもらうとするか。

気がかりは今夜の内に片付けて、心置きなく眠りたいしな。

「……という訳で、悪いけど起きてくれ、フェアリー。少し話したい事があるんだ」

俺の動きを察して手を止めた、リリィの隣に腰を下ろし、フェアリーの頬を軽くつつく。

しっとり、プニプニとした感触が指先に伝わり、このまま、ずっと続けたい衝動に駆られたけど、幸か不幸か、フェアリーは、あっさりと目を覚ました。

そして、トロンとした瞳で俺の指先を不思議そうに見つめ、パチパチとまばたきし、ふぁわ〜っと、欠伸あくびしながら背伸びする。

それが終わると、もうすっかり目がえたのか、上機嫌で俺の頬にり寄ってきた。

「……私が、あれだけ激しくしても起きなかったのに、ハヤト様が一声ひとこえかけて軽く触れたら、あっさり起きるんですね」

ジト〜っと、したリリィの眼差まなざしがチクチクと突き刺さる。

な、なんだ、このたまれない空気は。

「え、えーっと、リリィさん? もしかして怒ってる?」

「別に怒ってませんっ。フェアリーさんに愛されてて良んじゃないですかっ」

……なるほど、分かったぞ。

これは、ヤキモチだな!

ふっふっふ、ようやく俺も乙女心の何たるかが理解できて来たらしい。

「気にするな、リリィ。お前の気持ちは良く分かるぞ」

「えっ? そ、それはホントですか?」 

少しの驚きと、どこか期待するような視線。

どうやら、リリィも俺の成長を心待ちにしてくれていたようだな。

なら、ここはおとことして、その想いに応えなくてはなるまいっ。

「ああ。俺とフェアリーが仲良くしてるからヤキモチいたんだよな?」

「そ、それは……そうですけど。そんな直球で言わなくても」

心の内を正面から言い当てられて、照れてしまったのか、頬をしゅに染めて髪を弄るリリィ。

ものすごく愛らしい仕草だけど、この反応は、もう少し遠回しに言った方が良かったか?

やれやれ、一歩前進したと思ったけど、まだまだ精進しょうじんが足りないな。

――そう反省した俺だけど、

「心配するなって。フェアリーは俺と同じくらい、リリィの事も好きなはずだからさ! 嫉妬なんてする必要ないぞ?」

「………………ハァ。そんな事だと思いましたよ、ええ。少しでも期待した私が、おバカさんでした」

「あ、あれっ?」

何故か、落胆したように肩を落とすリリィ。

そして、お腹を抱えて爆笑しながら、俺の肩をポンポン叩くフェアリー。

……これは、もしかして、一歩も前進できてなかった感じ?

それから微妙な空気は続き、改めて話を再開するまでに、しばしの時間を要したのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品