能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

決戦の舞台は

「……もう少し……あと少しで……」

強者としてふんぞり返っている緋熊ひぐまの鼻を明かすべく、全速力で森を駆ける俺。

奴を罠にハメられる場所は、もう目と鼻の先だ。

何はともあれ、とにかく緋熊の炎を何とかしない事には反撃もままならないしな。

俺の主な戦闘手段は、拳や蹴りなんかの近接攻撃だけなんだから。(基礎魔法には殺傷力が備わっていないため)

にも拘わらず、接近戦を仕掛けようとすると、どうしたって緋色の炎に焼かれてしまう。

このジレンマを解決するためには、どうにかして緋熊の炎を封じるしかない。

「――――っとぉ!?」

って、ああっ! 

“その忌々いまいましい水を生み出す腕を喰い千切ってくれる!”と言わんばかりに大口を開けて迫って来た緋熊を迎撃しなければと、つい火属性の基礎魔法を使ってしまった。

普通の獣モンスター相手ならともかく、この緋熊に炎なんて……。

「グォフッ!?」

「…………は? 効いた?」

あまりの驚きに思わず足を止め、悶える緋熊をマジマジと見つめてしまう。

いや、確かに俺が火を放り込んだのは、口の中という脆弱ぜいじゃくな部位だ。

だけど、あれだけ強力な炎をまとっておいて体内には耐熱性が無いのかよ。

……まぁ、そんな弱点が分かった所で、特に活用法は見当たらないんだけどさ。

俺が放てる火は基礎魔法だけだし、それだって大したダメージは与えられていないようだ。

緋熊がもだえているのは、あくまでも驚きにるものが大きいだろう。

仮に耐熱性があったとしても、いきなり口の中に火を放たれたら、そりゃあ普通はビビるよな。

「……いや、もしかして、これは、ひょっとしたら、ひょっとするか?」

今の所、確実に上手く行くという保証は無い。

だけど今は、一つでも多くの手立てが欲しい。

それに、この狙いが達成できれば、ほぼ間違いなく緋熊を無力化できる!

「そんじゃあ、まぁ、もう一頑張りしますかね!」

疲れた身体に気合を入れつつ、木々の間を一直線に駆け抜ける。

そして、ようやく緋熊を目的地まで誘導する事に成功した。

「さぁ、第2ラウンドは水遊びと行こうぜ?」

昨日、リリィとフェアリーの3人で遊び回った森の湖。

真っ白な太陽やオレンジの夕日に照らされ、輝いていた、あの時とは違い、今は血のように赤い月明かりを反射している。

加えて、水面みなもに揺らめく悪魔の嘲笑アカノミカヅキ

かつての楽しげな喧騒けんそうは消え失せ、周囲を満たすのは冷たい静寂と殺気のみ。

そんな正反対な雰囲気をかもす湖を背に、俺は高らかに宣戦布告した。

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