能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

セコい真似を

「……ふぅ。どうにか帰ってこられたか」

「はいっ。お疲れ様でした、ハヤト様」

何とか緋熊ひぐまから逃げ延びた俺とリリィ、そしてフェアリーは、無事に拠点の洞窟まで辿り着いた。

昨日の昼間に外へ出て、まだ1日も経っていないのに、随分と懐かしく感じるな。

きっと、過ごした時間の密度が濃すぎたからだろう。

ちなみに、フェアリーは帰り道で回復が完了し、今は適当な草を盛って作ったベッドで気持ち良さそうに眠っている。

色々あったけど、こうして戻ってこられて本当に良かった。

「……それにしても、無敵に思えたフェアリーが、あんなに追い詰められるなんてな。それだけ、あの緋熊が厄介な相手だってことか」

緋熊の情報については、少しだけ勉強会で聞いた事がある。

といっても、名前と外見と、後は炎をまとった状態での肉弾戦を得意とするって事くらいだ。

戦いに慣れるまでは、チートがあっても、一先ひとまず逃げろとも言われたな。

だけど、まさか、この森で遭遇するなんて……。

「……あのっ。実は私、魔法を使って、ここから戦闘の様子を見てたんです」

「マジか!? どんな感じだった!?」

物理攻撃は無効で、魔法攻撃にも強い耐性を持ち、ピンチになれば透明化する。

そんなフェアリーが、如何いかにして追い込まれたのか。

それを知ることが出来れば、緋熊に対抗する手段が分かるかもしれない。

「えっと……どうやら、あの炎は魔法の力を宿してるみたいで、それを纏った状態だと、フェアリーさんにも物理攻撃が有効になるみたいです」

「……なるほど。フェアリーの物理耐性に、そんな弱点が……。でも、フェアリーは魔法耐性も高いはずだ。それなのに、あれだけボロボロになってたって事は、緋熊は魔力も相当に高いって事になるな。広範囲の魔法でも使われたら手に負えないぞ」

「あっ、その心配は無いと思います。少なくとも、あの戦闘では、一度も魔法を使ってませんでしたから」

緋熊が得意とする戦闘スタイルは、炎を纏った肉弾戦。

勉強会で聞いた特徴とも一致するし、もしかしたら魔法は使えないのかもな。

まぁ、追い込まれた時に覚醒して、急に使えるようになるかもしれないし、あるいは既に使用可能で、切り札として温存してるだけかもしれない。

常に最悪の可能性を考えて、警戒だけはおこたらないようにしないと。

「その結論は、取り敢えず保留にするとして、フェアリーの透明化は? 使わなかったのか?」

「それが……。使ってはいたんですけど、緋熊がフェアリーさんを見失って、何処どこかに行こうとする度に解除してたみたいで。それが何度も続くと、相手も学習したのか、ワザとフェアリーさんを無視したりして、姿を見せるように誘導してました」

それは、俺の元に緋熊を行かせまいとするフェアリーの意志の現れだろう。

つまり、俺を守るために囮になったフェアリーが、その弱みを利用された訳だ。

あのクソ野郎、ウチの子を散々、痛めつけた上に、随分とセコい真似をしてくれやがったな。

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