能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

不吉な予感

「……なぁ、どうしたんだリリィ。さっきから妙に動きが鈍くないか?」

「へっ!? そ、そんな事ありませんよ? どうか、ご心配なくっ」

フェアリーの捜索を始めてから既に数十分。

俺は、ずっと気になっていたリリィの違和感について指摘したものの、あっさり否定されてしまった。

けど、どう見てもリリィの動きが、ぎこちないんだよなぁ。

具体的に、どこがどうっていうのは分からないから余計もどかしい。

「それに、ずっとソワソワしてるみたいだけど、何か気になる事でもあるのか?」

「な、なんでも無いですっ! いっぱい遊んで少し疲れちゃっただけですから! あとは、お腹も空いたなぁって、あはは……」

気まずそうに視線を逸らすリリィ。

それで誤魔化しているつもりなら、何とも微笑ましいけど、残念ながら、このまま黙って引き下がる訳にはいかない。

もう日も暮れてしまったし、出来るだけ早くフェアリーを見つけて拠点に戻りたいんだ。

他でもない、リリィの安全を確保するためにもな。

だから、今は他の事を気にせず、捜索に集中して貰わないと。

「リリィ、何か不安や悩み事があるなら、隠さずに教えてほしい。今はフェアリーを探すのが優先だけど、必ず力になるから」

足を止め、リリィの目を真っ直ぐに見つめて、真摯な気持ちで訴える。

その結果、誤魔化し切れないと観念したのか、リリィは躊躇ためらいがちに口を開いた。

「えっと……実は着替えてる時に気付いた事なんですけど。私の大切な物が無くなっていて……」

「大切なもの?」

「はい……。それが無いと、私……」

瞳にうっすらと涙まで浮かべているリリィの様子からして、相当な愛着を持っていたのが伺える。

リリィのことだから、家族との思い出の品とかだろうか?

それを無くして、ここまで取り乱してるって事は、やっぱり家族に未練はあるんだな。

いつか、何とか手助けしてあげたいけど、今は置いておこう。

「着替えてる時に気付いたって言ったよな? それは、湖で遊んでる時も身に着けてたのか?」

だとしたら、湖の底に沈んでいる可能性もあるな。

それほど大きな湖でもなかったし、川のように流されたりする心配もないから、探せば見つかるだろう。

「いえ……。その、他の着替えと一緒に木陰に隠していて、さっき水着から着替えた時には消えてました」

「ん? ……いや、そうなのか」

それほど大事な物なのに、不用心すぎやしないか?

そんな疑問が頭に浮かんだけど、今さら言っても仕方ない。

それに、自業自得だと責めているように聞こえてしまうかもしれないしな。

「あの……先程ハヤト様は言ってましたよね? フェアリーさんは私の寝言に怒って、どこかに行っちゃったって」

ちなみに、フェアリーを探すに当たり、一連の流れは既に説明済みだ。

「あぁ、それがどうかしたか?」

「もしかしたら、それでフェアリーさんが持って行っちゃったのかもしれません。だとしたら、ちゃんと謝って返して貰おうと思います!」

「……確かに、その可能性はあるな。よし、そうと決まれば、さっさとフェアリーを見つけて連れ戻すぞ!」

「はいっ!」

そんな風に話が纏まった、まさに、その瞬間。

森全体を揺るがす程の凶暴な雄叫びが響き渡った。

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