能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

踏み出したリリィ

「さてと、それじゃあ今後の方針について改めて話し合い……と言いたい所だけど、その前に、まずは腹ごなしだな。朝は何も食べないまま眠っちまったから、腹の虫がうるさくて仕方ない」

徹夜で森を駆け回って、力尽きるように寝入ったのが明け方の話。

そして、今は太陽の位置から察するに昼過ぎだ。

もう、かれこれ半日以上も食料を口にしていない訳だから空腹になるのも当然だろう。

水に関しては基礎魔法で作り出して補給してたけど、食べ物を生み出す魔法なんて無いからな。

フェアリーを探すのに必死で、果物や木の実を採取するのも忘れてたし。

「そうですね。フェアリーを利用したレベル上げは白紙になりましたし、別の道を模索する必要がありますけど、お腹が空いてたら頭も働きませんから」

「だな。んじゃ、さっさと探索するか!」

そんな訳で、拠点の洞窟を後にした俺達は、空腹を満たすべく再び森の中に足を踏み入れた。

昨日の夜から散々、歩き回って、ある程度の地理は頭に入っているため、特に迷うこともない。

お陰で収集自体はスムーズに進んでいるんだけど……。

「えっと、その……リリィ?」

「はいっ、何ですか、ハヤト様?」

「どうして、森に入ってから、ずっと手を繋いでるんだ?」

そう、森の探索を始めた途端に、何の前触れもなく、ごく自然な動きで、俺はリリィに手を取られた。

そのまま上機嫌で俺を引っ張っていたので、ツッコむタイミングを見失っていたけど、さすがに我慢の限界だった。

と言っても、別に嫌って訳じゃないんだけどな。

ただ、リリィの意図が掴めないまま黙っている事に耐えられなかっただけだ。

「今更ですか!? もう結構な時間が経ってますよ? 手を握った時も、その後も何も仰らないので、てっきり受け入れてくれてるものとばかり……」

驚きで見開かれたリリィの瞳が、不安そうに揺れていく。

やばい! そんなつもりは無かったのに!

「いや、別に良いんだけどさっ! ほら、急な事だったから、驚いて聞きそびれちゃってな。何か心配事でもあるのかなって気になったんだ」

「……あっ、なるほど。そうだったんですね。ご心配をお掛けしてすみません。実は私、お友達が出来たら、一緒に手を繋いで歩くのが夢だったんです。でも、ハヤト様は、ベタベタするのが好きじゃないかもと思っていて。けど、フェアリーとのスキンシップは嫌がってなかったから、だったら私もって……」

「あー、そういう事だったのか」

女の子に手を握られるなんて初めてだったから、何事かと思ったけど、なんてことは無い。

凄く微笑ましい理由だったな。

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