能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜
何でもするって言ったのに
「な、何を言い出すんだリリィ? そもそも、お前は王女様だろ? そんなこと、国王たちが認める訳……」
「はい! なので私、人生初の家出を決行したいと思います!」
「……何で、そこまでして俺に付いて来たがるんだ?」
俺が王都を出るのは、今更クラスメイト達と肩を並べて戦う気になれないから。
そして、俺の力を王族側に知られたくないからだ。
あの連中は、俺が無能でないと知れば、すぐさま手の平を返して戦力にカウントし、干渉してくるだろう。
そうなれば、あれこれと理由を付けて行動を制限されるに違いない。
そんな状況に陥るくらいなら、無能の烙印を押されたまま、姿を消した方がマシだ。
自由と引き換えにして、一切の援助を受けられなくなるけど、固有スキルの有用性も判明したし、関係を断ち切っても何とかなると思う。
だけど、リリィは違う。
ただでさえ召喚の儀を邪魔して不興を買っているのだ。
その上で家出なんてしたら、確実に愛想を尽かされるハズ。
世間体を気にして公表はしないかもしれないけど、そうなってしまったら、事実上の勘当だろう。
そんな危険を冒す理由がどこにある?
今までの生活や交友関係、そして王族という身分。
全てを捨てるだけの価値が俺にあるなんて到底、考えられない。
……というか、俺の旅に付いてくる事を前提にして考えてたけど、これで実は『ちょっと隣街の知り合いを訪ねるだけです』とかだったら、どうしよう。
早とちりな上に自意識過剰で、メッチャ恥ずかしいんだけど。
「さっきも言ったじゃないですか。私は異世界から来た皆さんのサポートがしたいって。……でも、他のクラスメイトの方々は、私の助けなんて求めていませんでした。もっと頼りになって気心も知れている仲間がいるんですから、当然と言えば当然ですよね」
そう言って自嘲気味に笑うリリィ。
どうやら想像以上に、悲痛な想いを抱えていたらしいな。
しょうもない懸念に頭を悩ませていた、少し前の自分を殴りたい気分だ。
それから俺は『リリィだって頼りになる』と口に出そうとしたけど、本人が無力さを痛感している以上、下手な気休めにしかならないと気付いて、開きかけた口を閉じる。
そして、そんな俺を慈しむような瞳で見つめたリリィは、それまでよりも柔らかい表情で、再び話し出す。
「だけど、ハヤト様は違いました。私が助けに来た事を、感謝してくれました。それに友達になってくれて、お礼もしたいって言ってくれました。そんな貴方だからこそ、これからも傍で支えたいと思うんです。いつか、ハヤト様が自分の居場所に還る、その日まで」
まるで絵画に描かれる聖女のように、愛と慈しみに溢れたリリィの微笑み。
そんな彼女の雰囲気に当てられて、俺は思わず顔が熱くなるのを感じた。
「り、リリィみたいな可愛い子に、そんな風に言って貰えるなんて光栄だな。……でも、やっぱりリリィは欲がないよ。せっかく“何でもする”って言ったのに、出てくるのが、そんなお願いなんて」
「むっ、そういうこと言っちゃうなら、このお願いはノーカウントにしちゃいますよ? これとは別に、もう一つお願いを聞いて貰いますよ?」
「あっはっは。ノープロブレムだ。リリィの事だから、どうせ無茶なお願いなんて出てこないしな」
「言いましたね〜。約束ですよっ。いつか、とんでもないお願いを聞いて貰うんですから!」
「はいはい、その時を楽しみにしてるよ」
俺とリリィが、そんな風に笑い合う中、静かに夜は更けていった。
「はい! なので私、人生初の家出を決行したいと思います!」
「……何で、そこまでして俺に付いて来たがるんだ?」
俺が王都を出るのは、今更クラスメイト達と肩を並べて戦う気になれないから。
そして、俺の力を王族側に知られたくないからだ。
あの連中は、俺が無能でないと知れば、すぐさま手の平を返して戦力にカウントし、干渉してくるだろう。
そうなれば、あれこれと理由を付けて行動を制限されるに違いない。
そんな状況に陥るくらいなら、無能の烙印を押されたまま、姿を消した方がマシだ。
自由と引き換えにして、一切の援助を受けられなくなるけど、固有スキルの有用性も判明したし、関係を断ち切っても何とかなると思う。
だけど、リリィは違う。
ただでさえ召喚の儀を邪魔して不興を買っているのだ。
その上で家出なんてしたら、確実に愛想を尽かされるハズ。
世間体を気にして公表はしないかもしれないけど、そうなってしまったら、事実上の勘当だろう。
そんな危険を冒す理由がどこにある?
今までの生活や交友関係、そして王族という身分。
全てを捨てるだけの価値が俺にあるなんて到底、考えられない。
……というか、俺の旅に付いてくる事を前提にして考えてたけど、これで実は『ちょっと隣街の知り合いを訪ねるだけです』とかだったら、どうしよう。
早とちりな上に自意識過剰で、メッチャ恥ずかしいんだけど。
「さっきも言ったじゃないですか。私は異世界から来た皆さんのサポートがしたいって。……でも、他のクラスメイトの方々は、私の助けなんて求めていませんでした。もっと頼りになって気心も知れている仲間がいるんですから、当然と言えば当然ですよね」
そう言って自嘲気味に笑うリリィ。
どうやら想像以上に、悲痛な想いを抱えていたらしいな。
しょうもない懸念に頭を悩ませていた、少し前の自分を殴りたい気分だ。
それから俺は『リリィだって頼りになる』と口に出そうとしたけど、本人が無力さを痛感している以上、下手な気休めにしかならないと気付いて、開きかけた口を閉じる。
そして、そんな俺を慈しむような瞳で見つめたリリィは、それまでよりも柔らかい表情で、再び話し出す。
「だけど、ハヤト様は違いました。私が助けに来た事を、感謝してくれました。それに友達になってくれて、お礼もしたいって言ってくれました。そんな貴方だからこそ、これからも傍で支えたいと思うんです。いつか、ハヤト様が自分の居場所に還る、その日まで」
まるで絵画に描かれる聖女のように、愛と慈しみに溢れたリリィの微笑み。
そんな彼女の雰囲気に当てられて、俺は思わず顔が熱くなるのを感じた。
「り、リリィみたいな可愛い子に、そんな風に言って貰えるなんて光栄だな。……でも、やっぱりリリィは欲がないよ。せっかく“何でもする”って言ったのに、出てくるのが、そんなお願いなんて」
「むっ、そういうこと言っちゃうなら、このお願いはノーカウントにしちゃいますよ? これとは別に、もう一つお願いを聞いて貰いますよ?」
「あっはっは。ノープロブレムだ。リリィの事だから、どうせ無茶なお願いなんて出てこないしな」
「言いましたね〜。約束ですよっ。いつか、とんでもないお願いを聞いて貰うんですから!」
「はいはい、その時を楽しみにしてるよ」
俺とリリィが、そんな風に笑い合う中、静かに夜は更けていった。
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