能力値リセット 〜ステータスALL1の無能から徐々に成り上がるつもりが、1ヶ月で俺TUEEに変貌しちゃいました!〜

雪月 桜

男の甲斐性

「そ、そういえば、リリィ。さっきは良く助けに来てくれたな。もし、あのタイミングでリリィが来てなかったら、俺は崖から飛び降りて助からなかったと思う。だから、お礼がしたいんだ。俺に出来る事なら何でもするから、遠慮なく言ってくれ!」

軽々しく女の子の身体に触れるという、紳士にあるまじき過ちを犯した俺は、とにかく誠意を示そうと、そんな提案を口にする。 

これで少しは機嫌が良くなるか? と思いきや、顔を上げたリリィは何故かキョトンとしていた。

俺の意気込みが不思議でならないという様子だ。

「え、えと……。あっ、なるほど、そういう事ですか。あははっ、別に気にしなくても良いんですよ、ハヤト様。固有スキルの効果を聞くなんて、私がマナー違反だったんです。私が露骨に落ち込んじゃったから、埋め合わせしようと思ってくれたんですよね? 助けて貰った、お礼というのも、私が遠慮しなくて済むようにと、考えて下さった口実でしょう?」

「え? いや、そういう訳じゃないんだけど」

俺は、ただリリィを怒らせてしまったから、お詫びがしたかっただけだ。

「またまた〜。そんな風に隠したって、ハヤト様の気遣いは、ちゃんと分かってるんですからねっ」

しかし、さっきまで怒っていた筈のリリィは、とても上機嫌に見える。

少なくとも、俺には、この笑顔が演技だなんて、とても思えない。

となると、俺の誠意が別の形で伝わって、その結果として機嫌が治った……という亊なのか?

なんだか良く分からないけど、ここで話を蒸し返しても、お互いに良い事は無さそうだ。

ここは話を合わせておくとしよう。

「……そっか、バレちゃあ仕方がない。どうやら、リリィの目は誤魔化せないみたいだな」

「えっへん。私って昔から人を見る目はあるって褒められてましたから!」

……それって、褒められてるのか?

ま、まぁ本人が喜んでるんだから、わざわざ水を差す必要はないよな。

「……コホン。それはそうと、リリィに感謝してるのは本当なんだ。だから、俺に出来る事があれば遠慮なく言って欲しい」

「うーん、そうですねぇ。……分かりました。あんまり断るのもハヤト様に失礼ですよね。ここはありがたく御言葉に甘えさせて頂きます」

「おう、甘えとけ甘えとけ。ただ、値段の張るプレゼントとかは、ちょっと待って貰わないといけないんだけどな。なんせ俺、無一文だし」

男の甲斐性が無さ過ぎて自分でもどうかと思うし、情けなくて涙が出そうだけど、無い袖は振れない。

ここは見栄を張らずに、正直に言うべきだ。

それに、リリィは、そんな事で幻滅するタイプでもないしな。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品